作品に触れただけでは正直ここまでとは思っていなかったのだけれど、ベーシストのスカリ、ドラマーのビヤーンらがすこぶる強力なリズム・セクションである上、マルチな活躍を見せるマリウスが前線でフロアタムを打ち鳴らしたりするものだから、祭典的でダイナミックなグルーヴが形作られてしまう。彼は「ノルウェーから来ると、東京は暑いねえ」と言っていたが、それってバンドのせいでもあるだろう。かと思えば、EP収録曲"Kennedy Street"ではシガー・ロスを彷彿とさせるようなボウイング奏法のギターを披露して繊細な美しさを演出してみせたり、或いはエクスペリメンタルなノイズの中に飛び込んでゆく場面も見られる。紅一点のブロンド・ビューティであるエリダは最近バンドに加入したようだが、そもそもチーム・ミーとは北欧のインディー・バンドによくある、コミュニティ型のバンドなのではないだろうか。これまでにも多くのメンバーが入れ替わるようにしてバンドに関わってきたようだ。
甘い絶望の陶酔感を呼び込む上モノのフレーズがありつつ、強烈にせりだしたボトムはポスト・ベース・ミュージック時代のバランス感覚と言うべきだろうか。そしてマイクを握りしめ、声量は控え目でありながらも大きな溜め息のようにブレスが漏れ聴こえるニックの美しいヴォーカルは、いつもどこか居心地が悪そうで、しばしば歌いながらスコットのドラム・セットの方を向いてしまっていたりする。バンドのサウンドは中央のニックの歌を必死で支えるようであり、行き過ぎて歌声を掻き消してしまったりもするような、そんな緊張感に満ちている。この日の来場者にフリー・ダウンロードのパスコードがプレゼントされていた新作収録曲"Friend of A Friend"も披露される。
新作お披露目ライヴではあるのだが、ところどころに配置された往年のナンバーで歓声が沸くのはここ数年で頻繁に来日公演を行ってきたカイトならではの光景だろう。歌の場面では何か後ろめたさを引き摺っているような素振りのニックも、一曲をプレイするごとに丁寧に感謝の言葉を投げ掛けてくる。若く、潔癖な感性を持つアーティストと、その実力を遠慮なく引き出そうとするオーディエンスの相乗効果が、フロアにとても良い空気を作り上げてゆくように感じられていた。ニックとトムがツイン・ギターで透明感に満ちたサウンドを描き出す"Aerials"から、大胆なシンセ・リフと共にニュー・ウェイヴ・マナーで繰り出される"Half Alone"への流れは、カイトのいかにもUKバンドらしいウェットな情緒とサウンド指向を示していた。
さあ、『Hostess Club』と言えば、ポップ/ロック・ファン垂涎のイヴェント『Hostess Club Weekender』の第2回開催も、6/23と24に控えている。今回も優れた新作を生み出しているベテラン/中堅勢から話題沸騰のフレッシュなバンドまで、熱いラインナップが予定されているというところ。また、いくつかの出演者は単独公演も決定しているので、ぜひオフィシャルHPのチェックを。(小池宏和)
TEAM ME
01: Patrick Wolf & Daniel Johns
02: Weathervanes and Chemicals
03: Riding My Bicycle (from Ragnvalsbekken to S?rkedalen)
04: Kennedy Street
05: Favorite Ghost
06: Come Down
07: Daggers
08: Show Me
09: Dear Sister
en: With My Hands Covering Both of My Eyes I Am Too Scared to Have A Look at You Now
KYTE
01: Every Nightmare
02: Love To Be Lost
03: Breaking Bones
04: Friend of A Friend
05: Sunlight
06: Alone Tonight
07: Aerials
08: Half Alone
09: Scratches
10: IHNFSA
en-1: Boundaries
en-2: The Smoke Saves Lives