■1st Section : SOIL&”PIMP”BIG BAND(JAZZIN’ SUITE)
“Some Skunk Funk”を皮切りに、演奏されるのはスピーディーに展開するSOILナンバーの数々なのだが、これをゴージャス極まりないビッグ・バンド・サウンドでやってしまうのである。徐々に熱を帯びてフリーキーな音が次々に繰り出されても、破綻するわけがないというどっしりした安定感。通常のSOILのギリギリのスリルとは異なる、迫力の音響に焚き付けられるのであった。ホーン・セクションがひとり、またひとりと前線に飛び出して熱いソロを披露→SOIL曲のキャッチーなテーマでビッグ・バンドならではの一体感に到達、という流れが最高だ。こんな興奮の最中で元晴が大人しくしているわけもなく、時折ステージ上を練り歩いている。雛壇席の意味がない。
「もうお気づきかと思いますが、雨です! 今日、特別に降らせてもらいました! もう、雨なのか汗の飛沫なのかわからないでしょ?」というMCから、“マクロケ”では更にゲストとしてサイトウ“JxJx”ジュン(YOUR SONG IS GOOD)も登場。狂ったようなオルガン・ソロを挟み込んでくれる。彼も白スーツなのだが、ボトムは短パンだ。川崎太一朗のトランペットと廣瀬貴雄のトロンボーンが前線でデッド・ヒートを繰り広げる一幕もスペシャルな光景。ここで社長はメンバーを一人ずつ「フロム〇〇〜」と紹介してゆくのだが、先のツアー参加などを受けてか「フロム・ハナレグミ、みどりん!」と告げてオーディエンスの笑いを誘うのだった(あとでちゃんと訂正していた)。
社長が「このステージにいるのは13人。これに2000人の声が加わったらどうなる?」とSOILコールを煽り立てる“THE SLAUGHTER SUITE”では、ショルダー・キーボードでロックなこと極まりないギター・ソロ風のプレイを響かせる丈青。彼のますます独創的な鍵盤プレイの世界も随所で光るステージであった。そして第1部ラストの“POP KORN”では、再びジュンジュンも登場し、オーディエンスのシンガロングとクラップを巻いて賑々しくフィニッシュする。14人で肩を組み、大歓声の中に頭を下げて去ってゆくSOIL&”PIMP”BIG BANDであった。
■2nd Section : SOIL&"PIMP"SESSIONS (ROCKIN' MOTION)
実際にメンバーそれぞれの衣装も、梅雨を突き抜けて夏を先取りしてしまったかのような軽やかで涼しげなものにチェンジしている。“No Taboo”でいきなり見せつける6人のスリリングな機動力、その先で必死に食らいついてゆくオーディエンスのカウントも決まり、“Suffocation”の強い求心力を誇るテーマがぶっ飛んでいった。「『日比谷宣言』! 帰ってきたぞ野音! これからまだまだ盛り上がるぞ!!」とお馴染みの昂ったシャウトを轟かせるみどりんである。“閃く刃”で迸る社長の拡声器アジテーション、そして“Harbor”からメドレー気味に放たれる楽曲群では、パーカッションを交えた熱狂のビートを繰り出し続けるみどりんに歓声が上がる。
そんな中、“Fantastic Planet”ではシンガロングと客席一面のスウェイを誘いつつ、社長、タブゾンビ、元晴の3人はステージ下に降りてゼロ距離でオーディエンスを煽り立てる。それにも飽き足らず、客席の通路を駆けずり回ってしまう社長であった。「今日の主役はおまえらだー!! ステキな声だったよ、まじで!」と彼の名台詞もここで飛び出していた。
次のナンバーのイントロが鳴り響く中、ステージ下手の袖から優雅な足取りで歩み出る女性が一人。場内にどよめきが走る。この曲は……“カリソメ乙女”! この夜のスペシャル・ゲスト=椎名林檎の登場だ。張りと艶に満ちた彼女の歌声が届けられる。花柄のハットを被っただけのカジュアルな装いなのに、この存在感とオーラはどうだろう。最高のサプライズだ。改めて社長の紹介と歓声を受け、「お邪魔しております」と挨拶する。「以前には椎名さんにも(野音に)お招き頂きまして。そのときは晴れてました」「そうですねえ。同じような時期だったんですけどね……」という社長×林檎のトークには思わず苦笑の輪が広がる。「こんな特別な日なので、皆さんとぜひセッションさせて頂きたいです」と彼女の呼び掛けから披露されるもう一曲は、オーディエンスによるコーラスが絡められた“MY FOOLISH HEART ~crazy on earth~”。ステージ上部にはレーザーによって歌詞の対訳も映し出される。《it’s gonna rain(雨よ降れ)》という歌詞のフレーズがシチュエーションに嵌り過ぎて、このときばかりは降りしきる雨に感謝したいぐらいであった。
「もっともっと熱くなって欲しい! こんなもんじゃないだろう!」と最後まで執拗に煽り立てながら辿り着いた本編ラストは“Summer Goddess”だ。個性の塊である音塊が正面衝突を続け、その先で巨大な一体感を獲得してしまう。雨に濡れたステージ上で、タブゾンビ&元晴が助走をつけてはスライディングし交差する。「We call it, DEATH JAZZ!! 『日比谷宣言』、ありがとうー!!」と、最高潮のうちにフィナーレを迎えるのだった。更にアンコールでは、秋田ゴールドマンがアップライト・ベースを最前線に担ぎ出し、弦をスティックで打ち鳴らしまくる必殺の“SATSURIKUニューウェイブ”で完璧なダンス納めである。
数多くのミュージシャンが、剥き出しのエモーションそのものといえる音で対話を繰り広げ、その先には必ず興奮と熱狂が約束されているという、音楽のマジックが描き出された素晴らしいショウであった。第1部のライヴ音源がその日のうちにCD化され500枚限定で販売されるという企画も盛り込まれていたほか、この日の模様は9月に、WOWOWにて放送されることも決定している。(小池宏和)
SET LIST
■1st Section : SOIL&"PIMP" BIG BAND (JAZZIN'SUITE)
1: Some Skunk Funk
2: マクロケ (w/サイトウ"JxJx"ジュン)
3: マシロケ
4: Fuller Love
5: THE SLAUGHTER SUITE
6: POP KORN (w/サイトウ"JxJx"ジュン)
■2nd Section : SOIL&"PIMP"SESSIONS (ROCKIN' MOTION)
1: No Taboo
2: Suffocation
3: 閃く刃
4: Harbor~SAHARA~Fantastic Planet
5: カリソメ乙女(DEATH JAZZ ver.) (w/椎名林檎)
6: MY FOOLISH HEART ~crazy on earth~ ×椎名林檎(w/椎名林檎)
7: Summer Goddess
EN: 殺戮のテーマ~SATSURIKUニューウェイブ