電大 @ 新代田FEVER

all pics by 柴田恵理
それはもう大変な勢いでチケットがソールドアウトした、電大初めての全国ライヴハウスツアー、全国10ヵ所・12本のファイナル、新代田FEVER2デイズの2日目。私はこのツアー、この1本しか観ていないのですが、事前に、公式サイトや、twitterや、既に地方で観た知人などから仕入れていた情報は、以下のような感じでした。箇条書きにします。

・メンバー3人とPAさんとマネージャーの5人だけで、クルマで全国を回っている。

・まだ作品はミニ・アルバム『△結線』1枚だけ、つまり持ち曲が7曲しかないのに、ライヴ、2時間以上やる。なぜなら、MCが大変に長いから。

・そのMC、もちろん、基本的に、グダグダしている。

・あと、ユニコーンの曲もやる。もちろん、このメンバー3人のいずれかが、歌詞なり曲なりを書いた曲です。

・MCとか、全体の進行とかは、基本的にテッシーが回している。で、その時の話の脈絡とまったく関係なく、思いついたことを思いついたタイミングでそのまんま、でっかい声でテッシーやEBIに振ってきて、それまでの流れをぶった斬るのが川西さん。EBIも、それはもう爛漫にしゃべる。つまり、全員が全員、しゃべる。そりゃ長くなるわ。

・MCの時、川西さんは、マイクスタンドを高く直して、立ってしゃべることが多い。メンバーと会話する際に、座ってるとしゃべりづらいから、という理由だと思われる。あと、お客さんからも見えにくい、というのもあるか。

・歌はCDと同じく、3人とも歌う。これもCDと同じく、「誰かが歌う」ことよりも「3人いっぺんにユニゾンで歌う」ことの方が、多い。

・衣裳は、電大『△結線』Tシャツ。アンコールでは「Electric University」Tシャツに着替えておられました。


で。観ました。まさに、そのとおりのライヴでした。続いては、観て初めてわかったことです。これも箇条書き。

・EBIのマイクスタンドにiPadがくくりつけられていました。歌詞もしくは曲構成のカンペなんだと思う。

・川西さん、確かにMCの度に立ってたんだけど、最後の頃には「次のツアーはドラム、高くしよう」(台にのっけようということ)とおっしゃってました。おそらくツアー途中から「これ、しゃべりづらい」と感じておられたんだと思います。

・歌は、もちろん、3人とも、うまくない。EBIなんて、ユニコーン解散後にソロで活動してた頃は、しっかり歌えてたのに。まあずいぶん昔だしなあ、それも。って、うまくないって、そんなわかりきったこと言うな、という話ではあるし、本人たちだって充分に自覚してると思うが。ただ、「なるべく3人いっぺんにユニゾンで歌う」というのは、つまり、それを補うために考えた方法なんだなあ、ということが、ライヴを観るとよくわかって、「なるほどー」と納得しました。ユニコーンのライヴで一部の曲を歌うのはいいけど、あるいはCDの一部ならいいけど、ライヴ全編、CD全部それ、というのは、ちょっとどうなのか。というふうに、考えたのでは、と思います。3人いっぺんだと声の物理的なボリュームが上がるし、軍歌とか米軍がマラソンする時のかけ声みたいな、ああいう勢いが出るし。なんでたとえが軍関係なのかわかりませんが、とにかく、「あり」な感じになっていました、見事に。

・で、演奏。これはすばらしい。この小さなハコで聴けるというのはかなりのぜいたく。パンクを一切通っていない、ブルースがかった70年代ハードロックをルーツ(だと思う、僕は)とするテッシーのギターと、オリジナル・パンク直系のEBIのベース、という本来合うはずのないものが一緒に鳴らされるとどういうわけだか心地よくグルーヴィーになる、そこに「かっこいいロック・ドラマー部門日本第1位」の川西さんの、日本刀ぐらいあるジャックナイフのようなドラムがぶちこまれるともう最高、という、ユニコーンのサウンドのベーシック(って言っていいと思う)を、存分に味わえました。


・そして。MC。私が観る前、最も懸念していたのが、これに関してでした。再始動後のユニコーンのライヴのMCにおいて、各メンバーがどういう役割を担っているかというと、まず阿部Bは意識的ボケ、川西さん・EBI・テッシーは3人とも無意識的ボケ、つまり天然ボケ、あるいはいじられ役、そしてOTがツッコミ、ですよね。つまり電大は天然×3、ということになるわけで、そういうのっていじってくれる人がいて初めて成立するわけで、大丈夫なのこれ? 名倉潤加入前のネプチューンみたいなことにならない? ホリケンと泰造の2人でフローレンスという名前でやってて、ふたりともボケでわけわかんない、ということで名倉が入ってネプチューンになったのです。という説明が必要な時点でこのたとえば大失敗ですが、まあ、そんなような心配をしていたわけです。しかも、長いっていうし。相当グダグダなんだろうなあ、と思っていたんだけど、おもしろかったのです、これが!
グダグダはグダグダなんだけど、そのグダグダがちゃんと芸になっている。このツアー中のエピソード、「手島が飛ぶ」がコンセプトの出発点だった前回のユニコーンのツアーの話、などなど、次々とネタを出すテッシー。そこに時にうまい具合に、時にそうでもない具合にのっかるEBI。という流れとは関係なく、突然思いついたことをでっかい声で発してはテッシーにリアクションをうながす川西さん。もう、何度も「あはははは!」と声を出して笑いました、私。
特にユニコーンのツアーでの「テッシーの飛び」の話、大笑いでした。あのツアー、前半はホールツアーで、夏フェスをはさんで後半はアリーナツアーでしたが、アリーナの方でEBIも飛んだのは、前半のテッシーを見て、自ら「俺も飛びたい」と言い出したからだそうです。で、1回飛んで「もういいわ」と弱音を吐いたそうです。あと、テッシー、あの「飛ばす」専門業者の方に、「リアルで弾いてる人を飛ばすのは初めてです」と言われたそうです。そうか、じゃあよそで飛びながら弾いてる人のほとんどは、弾いてるフリで、音は別なんだな、そりゃそうだよな、しかしそう考えると偉いなテッシーは、と、勉強になったりしました。
アンコールでは、次のツアーも発表。詳しくはニュースのコーナーをご覧ください。新しい作品を持って回る、というようなことも、テッシー、おっしゃってました。


ライヴ・レポートはここまでです。で、以下は、ファンはご存知だろうしファンじゃない方にとってはどうでもいいだろうし、つまりはてしなく書く意味がないのですが、私が書きたいので、書いておきます。メンバーは英語で「Electric University」にしようと思ったが、OTが「電大にせえ」と主張、それで決まった、この「電大」という名前に関する説明です。
電大とは、広島にある私立大学で、正しくは広島電機大学といいます。1999年に広島国際学院大学と改称しましたが、川西さん、テッシー、EBIの3人は、その大学の卒業生なのでした。いや、電大のサイトには「中退含む」と書いてあるので、最低ひとりは卒業してないってことか。電大、その名のとおり工業系の大学で、近くの安芸郡府中町には自動車メーカー、マツダの本社があって、なのでその界隈は下請けとか子会社とかマツダ関係の工場がいっぱいあって、つまり、「マツダ社員養成所」みたいな学校が、この電大だったわけです。いや、実際にマツダへの就職率がどのくらいなのかは知りませんが、でも、少なくとも、1970年代~1980年代の地元では、そういう認識でした。
で、今はどうなのか知らないが、電大、姉妹校といえばいいのか、「広島電機大学」と「広島自動車短期大学」のふたつがありました。このあたりから、私がものすごい大昔に川西さんにきいた話の記憶に頼って書くので、その記憶が間違っているかもしれないし、そしてもし間違っていてもご本人たちしか正しようがないと思うので、本当に間違ってたらぜひ正してほしいのですが、マネージャー経由で連絡いただければすぐ直しますが、とにかく、書きますね。
確か川西さんは、最初に自短(広島自動車短期大学の略称)に行って、2年で卒業する時に電大に編入して、最終的に電大卒業生になった、ということだった気がする。EBIは自短だった気がする。テッシーが電大中退か。EBIも中退だったような気も。川西さんがちゃんと卒業したことだけは、なんとなく覚えています。
なんでそんなにおまえは電大にこだわってるんだって話ですが、私、1歳から中学3年まで、電大のある広島市安芸区瀬野川町に住んでおり、ゆえに生まれて初めてロック・バンドというもののライヴを観たのが、中2の時、電大の学祭に来た子供ばんどだったりしたもんで、ちょっとこう、愛着があるのです。
というわけで、町内にはいっぱい電大生が住んでいました。私の同級生の家がアパートを経営していて、そこ、すべての部屋が電大の学生だったりして。大学なのでさすがにヤンキーはいませんでしたが、やはり車好きな学生が多く、国道2号線沿いの田んぼに落っこちてまっさかさまになっている車を見ては、「ああ、また電大生かな。夜中にぶっとばしてたんだろうな」と思ったり、畑賀峠を攻めに行ってカーブ曲がりきれなくてつっこんで大破した車を見ては「ああ、電大生だろうな、死んでなきゃいいけど」と心配したり、そんな中学時代をすごしたものでした。(兵庫慎司)

セットリスト
1 炎のモーニングコール
2 黒い炎
3 白くぬりつぶせ
4 ロック幸せ
5 豪快男児
6 デーゲーム
7 水の戯れ~ランチャのテーマ~
8 By The Way
9 野生の証明
10 メダカの格好
11 半世紀少年
12 哀しみのGarden
13 手島いさむ物語
14 風天

アンコール
1 payday
2 ビッグアーチ