開演時刻の19時ジャスト。SEに続いてアナウンスされたのは、なんと奥田民生と星野 源によるオープニング・トーク。「J-WAVE LIVE 81.3 + acへようこそおいでくださいました!」という星野の挨拶に、場内から大きな拍手が沸き起こる。そして、通常のステージ上にひな壇式に設けられた客席を「合唱コンクールみたい」とひとしきりイジった後、トップバッターの齋藤ジョニーを呼び込み。会場脇の入り口からセンターステージへと通じる赤じゅうたんを歩いて登壇した齋藤ジョニーは、まずは清冽なアコースティック・ギターの音色と透き通った歌声を伸びやかに広げていく。さらにダフトパンクの“One More Time”で客席のシンガロングを呼び起こして終了。あどけなさと瑞々しさを湛えてまっすぐ放たれる歌声が、場内に清々しい風を吹かせた爽やかなステージだった。
登場するなりキレのあるヴォイス・パーカッションと伸びやかな歌声で客席のクラップを誘ったのは、奄美大島在住のユニット・カサリンチュ。ヒューマン・ビートボックス担当のコウスケと、ギター&メインボーカル担当のタツヒロによる2人編成で、どこか牧歌的な印象が漂うアーシーなサウンドスケープを広げていく。仙台在住のシンガーソングライター・Rakeを呼び込んで、地元への愛を綴った“この街にうまれて”を3人で披露した後は、カサリンチュの2人が掃けてライブはRakeにバトンタッチ。地元・仙台の震災復興への願いを込めた“素晴らしき世界”、「♪ラーララーラ」のシンガロングを誘った“100万個の「I love you」”など、胸がすくような昂揚感に満ちた楽曲をソウルフルに歌い上げてステージを去った。
「早速ですけどスペシャル・ゲストをお招きします!」とライブをスタートさせたのは、高橋優。J-WAVEの看板番組『TOKIO HOT 100』のナビゲーターも務めるゲストのクリス・ペプラーが会場脇の入り口から現れると、客席から大きなどよめきが沸き起こる。そしてクリスがベースを奏でる中、“福笑い”をアコースティック・ヴァージョンで披露。「福笑いが苦笑いにならないようにしたいと思います」と演奏前にクリスは言っていたけれど、分厚いベースラインと温かなハンドクラップに後押しされて高らかに歌い上げられた至福の歌は、場内にたくさんの笑顔の花を咲かせてくれていた。クリス・ペプラーが掃けた後は、8月8日にリリースされたばかりの最新シングル“陽はまた昇る”を披露。さらに「背中を向けて歌うのがどうしても申し訳ないので……」と、それまで背を向けていたバックステージ側を向いて“旅路の途中”をエネルギッシュに届けた後は、再び前方に向き直ってラスト“卒業”へ。アコースティックというシンプルな仕様であるからこそ、鬱屈とした日常をまばゆく照らす高橋優の歌そのもののパワーを、心の底から感じることができた時間だった。
いよいよイベントも後半戦に突入。先ほどゲスト出演したクリス・ペプラーの呼び込みアナウンスによって登場したのは、SUZUMOKU。“コワイクライ”を伸びやかに奏でて客席の心地よい横揺れを誘ったかと思いきや、“蛹 -サナギ-”で燃え盛るアコギ・サウンド! 心の闇を剥き出しにしたような切迫感に満ちた歌が、場内の空気をビリビリと震わせるような凄まじい声量でもって届けられる。わずか2曲という短いステージだったけど、陰と陽の両端を鮮烈に描ききるような渾身の歌声とギターの音色に、とにかく圧倒された時間だった。
約2分間のインターバルを経て、「♪燃え上がーれ ガンダム」という“翔べ! ガンダム”のSEに乗って登場したのは、星野 源。「なぜ今の登場曲なのかは言わないでおきます。後でわかります」と挨拶して“ひらめき”に突入すると、予想外の登場シーンで爆笑に包まれた場内は、瞬く間にしっとりとした空気になる。さらに“ばらばら”を奏で、日々の幸福と悲哀がマーブル模様で溶け合う濃密な音世界をふんわりと広げていく星野。「ものすごくデカいストップウォッチが僕の横にあって。『24』みたいに時を刻んでいるんですよ。生放送だから押さないようにしないといけないんです」というMCも含め、あくまでも肩の力の抜けた自然体のスタンスで、心の深淵や世の中の真理を残酷なまでに浮かび上がらせるようなステージングは、この日も凄まじい説得力を持っていた。ユニコーンの“働く男”に触発されて書いたという“営業”、7月4日リリースの最新シングル“夢の外へ”を経て、ラストを飾ったのは“くだらないの中に”。ミラーボールが回る中、何気ない生活に溢れるきらめきを切り取ったような歌をやわらかく響かせて、終始リラックスムードに包まれたステージは幕を閉じた。
そして21時05分。大歓声に迎えられて登場したのは、今夜の大トリを務める奥田民生! 「はい、よろしくお願いします」という短い挨拶を経て、まず鳴らされたのは“ワインのバカ”。滋味深くもロックンロールとしての凄まじい熱量を感じさせる歌とギターが、固唾を呑んで見守る観客の心にダイレクトに突き刺さっていく。「今回J-WAVEが初の試みで生放送のイベントを開催したおかげで、ただいま裏は大変なことになっております」と観客の笑いを取った後、バックステージ側を向いて“ひとりカンタビレのテーマ”を披露。さらに、エモーショナルなサウンドスケープがゆっくりと描かれた“The Standard”、カラダの向きをくるくると変えながら360度に設けられた客席の隅々まで歌声を届けた“マシマロ”を経て、「もう時間がないので次で終わりです!」とOT。「えー!」という声が飛び交う客席に、「次は泉谷(しげる)さんを呼んで、もっと押そうよ」と言って場内をドッと沸かせる。そしてラストは“イージュー☆ライダー”で会場一丸のハンドクラップを誘って大団円……と思いきや、すでに予定から20分ほど押していて生放送の時間に収まり切らないということで、OTがステージに残ったままアンコールに突入。星野 源がステージに呼び込まれ、「俺たちが作った渾身のオリジナルをやります」(民生)として、なんと先ほど星野の登場SEに使用されていた“翔べ! ガンダム”を披露!最後はサザンオールスターズの“Sha la la”を奥田&星野のヴォーカル・リレーでカヴァーして、2時間40分に及ぶステージはクライマックスを迎えた。
民生と星野がMCで告げていたように、生放送ゆえのバタつきや演出変更などもあり、出演者や運営スタッフにとってはさぞ大変だっただろう当イベント。しかし来場者にとっては、短い時間でこんな豪華なアーティストたちのアコースティック・ライブを堪能できるという、たまらなく贅沢なイベントであったことには間違いない。9月1日・2日には、J-WAVEが毎年この時期行っている大イベント「J-WAVE LIVE 2000+12」@国立代々木競技場第一体育館も控えている。その景気づけという意味でも、大きな祝祭ムードに満ちた一夜だった。(齋藤美穂)