『MONGOL800 ga presents 「800だヨ全員集合!!」』(2日目) @ 渋谷公会堂

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2010年以来2回目の、そして今年は沖縄と東京の2箇所で開催が予定されていたMONGOL800の主催ライヴ・イヴェント「800だヨ全員集合!!」。しかし、9/29の沖縄・宜野湾海浜公園での公演スケジュールは、残念ながら台風17号の影響によりやむなく中止を余儀なくされてしまった。多くのファンはもとより、メンバーやスタッフの無念は計り知れないものがある。そして音楽の力は東京・渋谷公会堂での2デイズにすべて託されることになった。本稿では2日目の模様をお伝えするけれども、初日の10/16にはモンパチと共に赤犬、そしてレキシが出演を果たした。こちらも観たかった……。2日目はTHE冠、ヒダカトオル(BAND SET)、そしてモンパチへとバトンが渡されるステージだ。

それにしても、沖縄での無念や、その反動としての過剰な力みを一切感じさせない、モンパチ主催イヴェントならではと言えるほっこりとした温かなヴァイブと笑いに包まれた一夜であった。開演時間直前、場内の客電を点けたまま、「全員集合」ハッピ姿のモンパチの3人が「オイッスー!」と挨拶に現れ、ゆるゆるとスタート。ザ・ドリフターズによる往年の人気TV番組『8時だヨ全員集合!!』の公開収録にしばしば使用された渋谷公会堂を聖地として開催を企画した、という経緯などを語り、この日一組目の出演者となるTHE 冠を呼び込む。

『MONGOL800 ga presents 「800だヨ全員集合!!」』(2日目) @ 渋谷公会堂
●THE 冠

今年、3作目となるフル・アルバム『死にぞこないのヘビーメタル』をリリースしたTHE 冠。角だらけの兜と肩当ての甲冑に身を包んだ冠徹弥(Vo.)を筆頭に、場内にどよめきを巻き起こしつつ登場。そして圧巻&爆笑の日本語ヘビーメタル芸を炸裂させる。近年ではあの映画『デトロイト・メタル・シティ』での活躍もあったけれど、なにしろ20年に及ぶキャリアの持ち主である。ハイトーン・ヴォイスを自由自在に振り回すド迫力パフォーマンスとは裏腹に「ヘビメタですみませーん!」「よかったー! (お客さんが)あたたかいっ!」「渋谷公会堂なんて一生で最後だと思うから、思い出つくりたーい!」といった、滲み出るような腰の低さが泣ける。

でも、日本語メタル・ナンバーの大仰さすら利用してネタ化するような、寸劇混じりのメタル・ヘッズの悲哀は凄まじくポップな表現になっていた。「それぞれがとことん個性派でありながら、不特定多数のお客さんを確実に楽しませるアクトしかいない」。そんな『800だヨ全員集合!!』のブッキングの素晴らしさがここにある。「MONGOL800さんみたいなすごいバンドと一緒にやらせて貰えて。ちょっとしたことで繋がったんですが、続けてたら繋がるもんですね! なので、これからもヘビーメタルを続けたいと思います!」と冠は告げていた。お見事。

『MONGOL800 ga presents 「800だヨ全員集合!!」』(2日目) @ 渋谷公会堂
●ヒダカトオル (BAND SET)

続いては、ヒダカトオルとフェッドミュージックの解散→MONOBRIGHTとの円満離婚というニュースもまだ耳に新しい、ソロのヒダカによるネクスト・フェーズを占うようなステージ。バンド・メンバーは西くんこと越川和磨(G./ex.毛皮のマリーズ)、菊池篤(G./Fed MusicではBa.担当)、ゴスケこと後藤裕亮(G./LOCAL SOUND STYLE)、寺尾順平(Ba./無人島レコード)、コウチヒロアキ(ex. SHENKY GUNS/現the Bench)という顔ぶれだ。ダカさんはハンド・マイクでビークル時代からの名曲“DAY AFTER DAY”を快速かつエモーショナルに放つのだけれど、トリプル・ギターのギラギラと煌めきながら押し寄せるような音圧がとんでもない。

自身は「The 冠と同じく、渋谷公会堂でやるのはこれが最後だと思います」と冗談めかして話していたけれど、すこぶるパンキッシュなのにやたら分厚くダイナミックなこのサウンドは、ホール規模のサイズで響かせるにも充分なものではないだろうか。サーヴィス精神旺盛にビークル・ナンバーを連発して盛り上げつつ、シンフォニックと言えるような轟音ハードコア・チューンの“HIGH RISK”や、ここぞとばかりにダカさんの男臭い歌声が力強く牽引してゆく“TALKIN' 'BOUT LIFE TIME”といった新曲群も素晴らしかった。モンパチとは12/26にZepp Tokyoで行われるハイウェーブのイヴェントでも共演する予定(RO69のニュース記事はこちら→http://ro69.jp/news/detail/74026)ということなので、ぜひチェックを。

『MONGOL800 ga presents 「800だヨ全員集合!!」』(2日目) @ 渋谷公会堂
●MONGOL800

さて、いよいよモンパチである。『8時だヨ全員集合!!』オープニングの、いかりや長介以外のメンバーが客席からステージに向かうときのジングルが鳴り響き、同様のスタイルでメンバー3人が登場。上江洌清作(Ba./Vo.)はピンク、儀間崇(G./Vo.)はブルー、高里悟(Dr./Vo.)はイエローと、それぞれ色違いのタスキを締めていて芸が細かい。OIコールを巻き起こしながら“What a Wonderful World”、間を置かずにタカシの高速カッティングが場内の火に油を注いで傾れ込む“あなたに”と、鉄壁の流れでオーディエンスの大合唱を生み出すのだった。

「渋谷公会堂にお集りの、すべてのかわいこちゃんに捧げます!」と披露されたのは、“Oh Pretty Woman”のカヴァーだ。「どキャッチーな名曲を、まったく別のどキャッチーにする」というモンパチ流のアレンジメントが冴え渡ったパンキッシュな逸品。モンパチというバンドは、例えばよそのライヴ・イヴェントに出演するときは持ち前のサーヴィス精神と高い演奏技術を存分に発揮してガッチガチのロック・パーティを生み出すのだけれど、いざこうした自分たちの土俵となると、ウチナンチュ特有の気質が露になるというか、自然にリラックスしたのんびりムードを生み出してゆく傾向がある。なんでもないことのようにサラリと鳴り始める“小さな恋のうた”が、国内最高峰の大合唱ロック・ナンバーとして展開してゆくさまなど、やはりよそではなかなか得難い感覚を味わうことになるのだ。

それでも、いやだからこそ、楽曲そのものに背筋をピンッ、と正されるような名曲“神様”の荘厳な響きとシリアスな説得力は素晴らしいものだった。客席では無数のピース・サインが揺れる。本編ラストの“PARTY”まで、30分強の持ち時間ではやはり物足りない気持ちを抱いてしまうけれど、無限に伝播してゆくモンパチの楽曲の器の大きさはさすがであった。アンコールでは、これまたドリフの定番芸だったカミナリさまに扮して、2013年のモンパチ結成15周年を記念するベスト・アルバムのリリースを発表。彼らのオフィシャルHPでは収録曲のリクエスト投票を募っているので、みなさんの清き一票をぜひ、とのこと。カミナリさまの雲のベンチが傾いてズッコケるオチまで、きっちりと再現してしまう3人である。

ハッピ姿の冠徹弥とダカさんを招き入れ、「おれ、さだまさしみたいになってない?(ヒダカ)」「それか、アルフィーの坂崎さん(キヨサク)」「♪〜〜(伸びやかなハイトーンで歌のモノマネをする冠)」「それはタカミザワですね。呼び捨てじゃいけませんね!(キヨサク)」と絶妙過ぎるアドリブの掛け合いを見せてアコースティック・セットのスペシャル・セッション“Daydream Believer”も披露してくれた。ラストは出演者総出の“いい湯だな(カラオケ)”で踊りながらゆるゆるの大団円へと向かう。ユルさの中に驚きや笑いがてんこ盛りという、なんとも不思議で楽しいモンパチの夜であった。(小池宏和)


●THE 冠
1: 傷だらけのヘビーメタル
2: 何で言うたんや
3: エビバディ炎
4: 中3インマイドリームス
5: 最後のヘビーメタル
6: 担がれた冠

●ヒダカトオル (BAND SET)
1: DAY AFTER DAY
2: MAXIMUM ROCK'NROLL
3: ARE U SURE?
4: CUM ON FEEL THE NOIZE
5: HIGH RISK
6: BE MY WIFE
7: LOVE DISCHORD
8: TALKIN' 'BOUT LIFE TIME
9: FOOL GROOVE

●MONGOL800
1: What a Wonderful World
2: あなたに
3: 愛する花
4: Oh Pretty Woman
5: 小さな恋のうた
6: 神様
7: PARTY
encore
1: Daydream Believer
2: Don't Worry be Happy
3: いい湯だな(カラオケ)
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