plenty @ Zepp DiverCity Tokyo

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plenty @ Zepp DiverCity Tokyo
 狂おしいほどに美しく鋭く空間を貫く江沼郁弥(Vo・G)の熱唱に、そして格段に力強くなったバンド・サウンドに、感情が激しく掻き乱していくーーその一方で、精緻で真摯な言葉がどこまでも感覚を覚醒させ、ひとつひとつの音の、そして「今」を生きていることの意味へと全神経がフォーカスされていく。plentyというバンドが脇目も振らずに磨き上げてきた高純度な表現の極致と言うべき音楽世界が、この場所には確かにあった。

 全国9公演を回ってきた『plenty 2012年 秋 ワンマンツアー』のファイナル=Zepp DiverCity公演。“蒼き日々”“おりこうさん”“普通の生活”など今年2月にリリースされた1stフルアルバム『plenty』収録曲と8月リリースのEP『傾いた空/能天気日和/ひとつ、さよなら』の3曲のみならず、11月7日に発売を控えたEP『ACTOR / DRIP / ETERNAL』まで含め、まさにplentyの最新形態を楽曲とサウンドで提示していくようなアクト。この日を待ち詫びたオーディエンスの内なる高揚感が、熱狂ではなく緊迫感となって広がり、曲間に江沼がエフェクターを踏み替える音までが伝わるほどに、誰もが息を呑んでステージに見入っている中ーー高らかに響き渡った江沼の、新田紀彰(B)の、そしてサポート・ドラマー:中畑大樹(VOLA & THE ORIENTAL MACHINE)のサウンドが、実に素晴らしかった。

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 ファンキーなビートと冷徹なメロディがせめぎ合いながら《いつわりの姿で羽ばたいてるだけ 未だ 未だ 未だ》と魂のレッドゾーンへ突入していく新曲“ACTOR”の強烈な推進力。自分の不甲斐なさへの煩悶に揺れる心のままにBPMとリズムを変える“理由”に、震えるような美しさを与えてみせる3人の強靭なアンサンブル。《君とはずっと はからなくていい距離をみつけたいんだよな》という切実な想いを至上の旋律とともに歌い上げる“人との距離のはかりかた”のサウンドの包容力……VOLAでの爆裂ドラムとは対象的に、plentyでは質実剛健なプレイに徹している中畑大樹のビートを土台として、江沼の歌とギター&新田のベースがより鮮烈な表現力を発揮していることはもちろんだが、何よりもそこから強く浮かび上がってきたのは、より鋭利に、より露に、人間の孤独と真実をーー自分自身の心の安息を度外視してでもーー描くために邁進しようとする、静かで揺るぎないバイタリティと、そのために必要なバンドとしての音楽的加速力を手にしつつある躍動感だ。昨年のドラム・吉岡紘希脱退後、昨年10~11月、今年4~5月、そして今回、と精力的にツアーを回って鍛え上がったバンド・サウンドによって、せつなく音の虚空に伸び上がるような江沼のハイトーン・ヴォーカルに新たな血が通い、視界をクリアに塗り替えるような感覚が、この日の3人の音からはリアルに伝わってきた。アンサンブルが盤石になることで、メロディと歌がより伸びやかに広がって、その柔らかな声とともに胸を射る言葉の数々が、アンサンブル全体への集中力を高めていくーーという無限ループのような空気感が、Zepp DiverCityのフロアを支配していた。

 このツアーのために制作された、サンドアート・パフォーマンス・グループ=SILTによるサンドアート映像とともに披露された“空が笑ってる”。江沼のアコースティック・ギターがオーディエンスひとりひとりの孤独の在り処を指し示すように響いた“スローモーションピクチャー”。蒼き苦悩を結晶させた流麗なメロディが会場の隅々まで照射した“あいという”……ほぼMCもなく、その音楽の力だけでステージを展開してきたところで、「次の曲で最後です!」と唐突に響く江沼の声。「ああ、すごい人が……すごいっすね!」と言いつつ、新田を自分のマイクのところへ招く江沼。「いっぱいっすね。嬉しいです。ありがとうございます!」と新田。続けて「それでは、さよなら。お元気で!」と江沼……MCはどこかぎこちないが、それでも十分だ。plentyのコミュニケーションはその楽曲と演奏で立派に成立しているからだ。秋の夜空を射抜く光のように、真っ白にフロアを照らし出した“傾いた空”の響きを残して、本編終了。

plenty @ Zepp DiverCity Tokyo
 アンコールを求める手拍子に応えて、再びステージに現れた3人。「ツアーをやってきました! いろんなことが、ありまし……た? あったか(笑)。でも、楽しかったっすよ?」とか「誕生日があって、24になりました! 本当は24なんですけど、勘違いして25になると思ってて……」とかぽつぽつと語った江沼が「何曲かやります! 本日は日曜日ということで……」と言って《キライでしょ? 月曜日は…》と謳い始めた“明日から王様”、そしてそのまま“東京”へ。「最後の曲です。新曲です。本当にどうもありがとうございました。さよなら!」という江沼のMCとともに演奏されたこの日のラスト・ナンバーは、新作EP『ACTOR / DRIP / ETERNAL』から“ETERNAL”。まどろみのようなAメロから一転、《死、生 見てみたいあらゆる全て》というパワフルな歌とともにすべてを埋め尽くす熾烈な轟音が、痺れるような余韻となって、いつまでも胸に残った。ツアーの終着点であると同時に、誰もがplentyの「その先」の進化を確信したに違いない、最高の一夜だった。(高橋智樹)

[SET LIST]

01.蒼き日々
02.ACTOR
03.最近どうなの?
04.おりこうさん
05.DRIP
06.能天気日和
07.普通の生活
08.理由
09.人との距離のはかりかた
10.拝啓。皆さま
11.少年
12.枠
13.空が笑ってる
14.ひとつ、さよなら
15.スローモーションピクチャー
16.待ち合わせの途中
17.砂のよう
18.人間そっくり
19.あいという
20.傾いた空

Encore
21.明日から王様
22.東京
23.ETERNAL
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