THE BACK HORN @ 日本武道館

「KYO-MEIツアー」~リヴスコール

photo by ほりたよしか
9thアルバム『リヴスコール』を引っ提げて、昨年9月から『「KYO-MEIツアー」~リヴスコール』で全国各地を廻ってきたTHE BACK HORN。そのハイライトは、彼らにとって二度目となる日本武道館公演! この後、宮古、大船渡、石巻にて追加公演も行われるが、武道館という場所と、新年一発目のライヴということもあり、大きな節目であることは間違いない。たくさんのオーディエンスが、そのはじまりを見守っている。

客電が落ちると、スクリーンに白い線が描かれていく。その上に木が生え、動物が立ち……生命を象徴するような絵となったところで、メンバーがステージへ。山田将司(Vo)が暗闇の中で、『リヴスコール』でも1曲目を飾っていた“トロイメライ”を静かに歌い出す。そこにアンサンブルが重なり合っていくと同時に、照明も眩しくなってくという、意思を持ったオープニングだった。その後は“シリウス”、“声”と、躍動へ。山田は全身を振り絞るように歌い、菅波栄純(G)と岡峰光舟(B)は前に出て、遠くの客席にも届けたいという思いを感じさせるような、ダイナミックな動きを見せていく。それに応えるように、メンバーの名を叫ぶオーディエンス(男の声も多い)。

ここで松田晋二(Dr)がMC。「あけましておめでとうございます」という時節の挨拶と共に、『リヴスコール』に「生きている実感を味わいたい」という意味が籠っていたことなども語る。この日は、武道館ならではのスペシャル感を演出するというよりは、『リヴスコール』を武道館で表現するというところに、彼らは集中していたように思う。『リヴスコール』の収録曲以外では、数々の過去曲の中から“墓石フィーバー”を選曲したあたりも、何かを象徴しているような気がした。

彼らの妖しさが抽出されたようなゾーンを経過すると、蒼い光に照らされてはじまったのは“いつものドアを”。山田は切々と歌い、岡峰は座り込み弾き、穏やかな楽曲も並々ならぬ感情で響かせていく。さらに、その後の“美しい名前”――2007年にリリースされた楽曲だが、これこそ、『リヴスコール』にダイレクトに繋がっていると思う。今聴くと、生と死を捉えた言葉たちが、恐ろしいほどするりと入ってくる。

その空気に松田も「……濃密な感じがしますね」と口を開く。メンバーに振ると、岡峰も「今回は緊張感がある」と吐露していた(さらに、武道館ならではな、東京オリンピックの柔道の逸話も!)。そして菅波は「何だろ……ありがとおー!!」と絶叫。メンバーもオーディエンスも『リヴスコール』という一つのテーマを共有していることを、互いに感じ合えていたのだと思う。

最後に松田が、音楽でパワーを溜めて、復興のエネルギーにしていこうという『リヴスコール』の根源にある思いを話して、ライヴはアッパーな終盤戦に突入。甘さや優しさを孕んだ“星降る夜のビート”、武道館いっぱいに拳が突き上げられた“戦う君よ”など、印象的な場面を刻んでいく。“シンフォニア”のアウトロでは、一体となった客席を見詰めて、菅波は笑顔で何度もジャンプしていた。

やはり最も圧巻だったのはラストナンバー“世界中に花束を”。《確かに僕はここにいるから》と歌いながら、鋭い眼差しでステージを指す山田。生と死を包み込む強さを、彼らが湛えたことを証明しているようだった。さらに、広がっていったシンガロングは、その場の誰もが、今、生きていることを確認し、それを喜びとして噛み締めているようだった。

万感の思いを込めた拍手に迎えられて、4人はアンコールで再び登場。松田が「やっぱなんだかんだ、音楽最高ですね!」と言ってはじまったのは“ミュージック”。《回り続ける世界の真ん中で/奏でる命 終わらないマーチ》――山田の歌は、歌詞がはっきりと聴こえてくる。メッセージを際立たせる、素晴らしいヴォーカリストだと改めて思う。続けて“ラピスラズリ”、“刃”と畳み掛けていき、ラストは客席も眩しく照らされた中で“サイレン”! 4人は全てを出し尽くすように熱演し、手を振ってステージを降りた。

最後、スクリーンには、ツアーの全個所の写真が映し出された。このツアーは、各地のベストテイクを厳選したライヴCD『KYO-MEIツアー~リヴスコール~』が2月6日に、そして日本武道館公演を収めたDVD『KYO-MEIツアー~リヴスコール~at 日本武道館 2013.1.6』が3月27日にリリースされる。形として残したい、そして残して欲しいツアーだったのだ。しかし彼らは、結成15周年となる今年、さらなる表現へと邁進してくれることだろう。胸がいっぱいのままでは終わらない、未来に向けて胸を高鳴らせてくれるライヴだった。(高橋美穂)