客電が落ちると、まずは丸山康太(G)、山中治雄(B)、菅大智(Dr)の3人が現れ爆音を鳴らし出し、混沌を野蛮に斬り裂いていく。そして、いよいよ志磨遼平(Vo)が登場。1曲目の“誰も知らない”へ……この時点で、うわぁ、と息を飲んだ。何て、純粋なロックバンドとしての、わかりやすいカッコよさを湛えているバンドなんだ!と。音も背もデカい4人は、圧倒的なインパクトで、オーディエンスに迫ってくる。そして、甘くざらついた“Lolita”、生まれたばかりのようなキラメキを持つ“リリー・アン”と畳み掛けていく。結成されて一年余りであり、一人一人が立っているバンドだけに、ゴツゴツとぶつかり合っているようなグルーヴ感だけれど、何だか、そこに堪らなく物語と可能性を感じてしまう。
しかし、続く“SUPER ENFANT TERRIBLE”で、志磨がオーディエンスに近付くように前に進み出て、座って歌いだしたあたりから、急速に会場は一つになっていった。さらに志磨は「僕らはドレスコーズ。誰にも似ていない、孤高のロックンロールバンド。ひとりぼっちのドレスコーズ!」と誇らしげに叫んだ後、こう言ったのだ。「そして、僕たちに、とてもよく似た君!」……その後に客席に起こった歓声が、本当に忘れられない。「ひとりぼっちは寂しいかい? 誰の支持も得られないのは悲しいかい? 僕がここにずっといてやるから! 悲しくなんかない!」。そこからはじまった”(This Is Not A) Sad Song“ではぐっと空気が解き放たれ、”ベルエポックマン“では志磨がオーディエンスを一人一人指さす。それはたくさんの生を肯定するような流れに映った。誰もが闇を抱えながら、ロックにすがって生きている。それが許されるのがロックであり、そんな僕らを繋いでくれるのがロックである。本編ラストの”Trash“が放つ眩しさを浴びながら、ロックに出会えた幸せと、改めてそれに気付かせてくれたドレスコーズへの感謝を噛み締めていた。
プロローグから一章へ向かう過程が、一時間半という短い中に凝縮されたような、素晴らしくドラマティックなライヴだった。これからも、ロックバンドの美しさと生きる力を体現しながら、行け、ドレスコーズ!(高橋美穂)