そして、今年で4回目の開催を数える『NANO-MUGEN CIRCUIT』。元Clap Your Hands Say Yeahのキーボード=ロビー・ガーティンがドラマーとしてフロントを張るRadical Dads(京都以外の5会場)&元The Rentals・Sara Radle(14日)という海外アクト、SPECIAL OTHERS/スカート(14日)、PHONO TONES/Turntable Films/the chef cooks me(15日)、ストレイテナー/Dr.DOWNER(17日)、岩崎愛/NOWEARMAN(19日)、cero(24日)、うみのて(26日)……といった日本の精鋭・新鋭が各会場で熱演を繰り広げてきた『NANO-MUGEN CIRCUIT 2013』もいよいよこの日がファイナル。アジカン&Radical Dadsに加えて、15日・京都に続いて登場のthe chef cooks me、さらにシャムキャッツの4組がTOKYO DOME CITY HALLに集結! 「東京ドームへようこそ!」とぶち上げた伊地知潔が「ドームじゃないよ」「TOKYO DOME CITY HALLだから」とゴッチ/喜多建介/山田貴洋に口々にツッコまれても「略して、東京ドームへようこそ!」と繰り返しコールしたり、「ここだけの話、僕、別のバンド(PHONO TONES)もやってまして。コンピ(『NANO-MUGEN COMPILATION 2013』)にも入ってるんですけどね」(キヨシ) 「その話はやめよう」(ゴッチ) 「今日もこっそりフライヤー折り込んだんですけど」(キヨシ) 「帰りに回収します!(笑)」(ゴッチ)といった掛け合いが開演前から会場の温度を上げていく。
01.なんだかやれそう
02.シンパシー
03.手紙の続き
04.SUNNY
05.金太郎飴
06.渚
07.不安でも移動
トップバッターはシャムキャッツ。USインディー的な多幸感を到ってポップな楽曲とともに鳴らしているのだが、“なんだかやれそう”のミドル・テンポのビートが異様なトリップ感に満ちていたり、カントリー調の“手紙の続き”とコンピ盤収録のロックンロール・ナンバー“SUNNY”の間に轟々たるフィードバック・ノイズが吹き荒れていたり、そのにこやかな曲とアレンジを構成するパーツのひとつひとつが不穏なエネルギーに満ちている。ピースマークをダイナマイトを並べて描いた感じ、とでも言えば、この4人の空気感に少しは近いだろうか? 「こんな大きいところでやれるの初めてなんで、楽しみたいと思います! みなさんも一緒に楽しんでください!」とオーディエンスに呼びかけていた夏目知幸(Vo・G)、「最新AL『たからじま』レコーディング中に車でゴッチのラジオを聴いて『お便り募集のテーマ:就活』にメンバーみんなでツッコんでいたら、ゴッチがいきなりシャムキャッツの“渚”をかけたので思わずフルボリュームにしてしまった話」で会場を沸かせつつその“渚”を披露、シューパッパッというコーラスと2本のギターが絡み合いながらディスコ・ポップ的な多幸感を描き出していく。ラスト“不安でも移動”ではハンドマイクの夏目がフロアをのし歩いたり柵の上を歩き回ったり、30分の中で濃密な存在感を示していた。
01.まちに
02.四季に歌えば
03.ケセラセラ
04.パスカル&エレクトス
05.適当な闇
06.song of sick
「人数多いから、いつもザワッとなるんですよ(笑)」というシモリョー(Vo・Key・Prog)の言葉通り、シモリョー/ニーチェ(G)/ジマス(Dr)のメンバー3人に村田シゲ(B/CUBISMO GRAFICO FIVE、□□□)、ちゃんMARIこと福重まり(Key/ゲスの極み乙女。、Crimson)、さらにブラス・セクションにコーラスまで加わった10人編成! ゴッチのプロデュースによる3年半ぶりの新作アルバム『回転体』(9月発売)を完成させたばかりということで、なんと全曲『回転体』からの選曲、コンピ盤収録曲“適当な闇”以外は未発表曲という意欲的なセットリストで臨んだthe chef cooks me。だが、「何しても、ブレイクとか間違っても恥ずかしくないんで、好きに楽しんでください!」と言いつつ冒頭の“まちに”でコーラスを指揮しながらドリーミンなポップ・ワールドを描き出していくシモリョーの人柄が、その楽曲に初めて触れる人が多かったに違いないこの日の会場をぐいぐいと歓喜の渦に巻き込んでいく。現実を忘れて能天気に踊り回るための音楽ではなく、現実ごと目映いポップで抱き締めてしまおうとする意志が、ギタポとアイリッシュ・パンクが手を取り合って踊り回る“適当な闇”のマジカルな高揚感越しに伝わってくる。今回の『NANO-MUGEN CIRCUIT』ではアジカンのサポート・キーボードも務めているシモリョー、「俺もアジカンみたいに、っていうかアジカンを越えたい!って思いつつ、ものすごく愛情が湧きました。ただ、俺が今日はいっちばん音楽好きだ!って思ってめちゃくちゃ気合い入れて来たんで」とありったけの想いをこめて撃ち放った最後の“song of sick”では、フロア全員座らせてからジャンプ!で圧巻の熱気を生み出してみせた。
01.Mountain Town
02.Dust USA
03.Recklessness
04.Harvest Artist
05.Hurricane
06.Little Tomb
07.Alondra Rainbow Under Attack
08.Know-It-All
09.Shackleton
10.Walking Wires
11.Skateboard Bulldog
12.Rapid Reality
ゴッチ主宰のレーベル「only in dreams」から『Mega Rama』(2011年)&『Rapid Reality』(2013年)の日本盤を2枚組で今月5日にリリースしたばかりのRadical Dads。ツイン・ギターのベースレス3ピース編成越しに響かせるそのサウンドは、90年代オルタナとパワー・ポップの高純度エッセンスが2010年代USインディー・ロックの空気感の中で弾みまくっているような爽快さに満ちている。会場丸ごと震わせるようにドタバタとパワフルに鳴り渡るロビーのドラム。時に激しくスパークし、時に美しく絡み合いながら、ベースレスとは思えないほど豊潤な音のタペストリーを繰り広げていくクリス&リンジーのギター。ロビー&紅一点リンジーが放つ、ラフでエネルギッシュな歌。「私の親友、ロビーです! クリスです!」と日本語でメンバー紹介するリンジーを「リンジーです!」とこれまた日本語で紹介するロビー。シンプルな音世界の中に、迷いも衒いもないコミュニケーションが凝縮されている3人の自然体な佇まいは、あたかもそれ自体がロックとバンドの理想郷のような躍動感と朗らかなヴァイブに満ちているし、それがこの日の会場の熱気とがっちりギアを合わせていたことが、“Alondra Rainbow Under Attack”のタイトなアンサンブルに沸き上がった高らかなクラップからも窺える。最新作『Rapid Reality』の“Mountain Town”“Dust USA”、『Mega Rama』の“Recklessness”“Harvest Artist”など全12曲、最後はコンピ盤にも収められている“Rapid Reality”でフィニッシュ!
01.新世紀のラブソング
02.マジックディスク
03.暗号のワルツ
04.サイレン
05.1980
06.ナイトダイビング
07.月光
08.十二進法の夕景
09.転がる岩、君に朝が降る
10.ループ&ループ
11.リライト
12.君という花
(Encore)
13.今を生きて
14.アネモネの咲く春に
そしてアジカンの登場! 客電が落ちると同時に鳴り響いた“新世界のラブソング”のイントロに沸き上がった歓声を、そのまま“マジックディスク”のスリリングな疾走感で無上の狂騒感へと導き、さらに“暗号のワルツ”“サイレン”をひときわ雄大に轟かせてみせる。ゴッチ/喜多/山田/キヨシに加えて、オルガン・サウンドや電子音などを操るサポート:シモリョーを含めた5人編成でのアジカン・アンサンブルは、上田禎(G・Key)/三原重夫(Perc)/岩崎愛(Cho)を迎えた昨年の『ランドマーク』ツアー時の7人編成の伸びやかさとはガラッと異なる、ロック・バンドとしての機動性とタイトな突破力に満ちたものだ。「ヨーロッパに行ってまいりまして、ちょっとかぶれて……エイジアン・カンフー・ジェネレーションです!」と、『NANO-MUGEN CIRCUIT』に先駆けてロンドン/パリ/ケルンと回ってきた初のヨーロッパ・ツアーに触れるゴッチ。なんでもロンドンのステージでは3曲目ぐらいで声が嗄れてしまって、移動先のフランスでものすごく太い注射を打ったらしい。「競走馬用の注射をポニーに打っちゃったみたいな(笑)。そんなASIAN KUNG-FU GENERATION、トキオに帰ってきましたよ!」。熱い拍手喝采が巻き起こる。