908 FESTIVAL 2013 @ さいたまスーパーアリーナ

「今までは908(クレバ)の日って言うと、ははは、語呂合わせですか、とか言われてたけど、今年から正式に俺たちの日になりました!」とKREVAが誇らしげに語っていたとおり、日本記念日協会から正式認定を受けての『908 FESTIVAL』第2回開催。次から次へと流れを汲んでパフォーマンスが進められるこのフェスのスタイルは、それ自体が一本のドラマティックなライヴのようだ。セカンド・ステージのサイプレス上野が音頭をとる“HIPHOP体操第一”で満場のオーディエンスがウォームアップを果たすと、さっそくバンド・メンバー(MPC&DJ/熊井吾郎、ベース/岡雄三、キーボード/菱山正太、ドラムス/白根佳尚)と共にメイン・ステージに立つKREVA。威勢の良いシャウトを轟かせ、サングラス外しながらの流し目ポーズは今回もばっちりである。文頭で紹介した挨拶を挟むと、《みんなといれるなら上出来》の“イッサイガッサイ”から「さあ始まりました908 FESTIVAL! 今日は“王者の休日”のその当日! 最後まで楽しんでいってくださいぃぃいい!!」と煽り立ててシームレスに楽曲を繋ぎ、風格漂わせるオープニングを演出してみせる。

セカンド・ステージからフレッシュなトーンのラップを放ち、オープニングの高揚感に追い込みを掛けてくれるのはKLOOZである。二枚目なルックスと三枚目キャラな話術のギャップが楽しいSKY-HIは、イトーヨーカドーCMの高速ラップを鮮やかに決めつつ、「諸事情により去年は出られなかったから、お前9月8日なにやってたんだSKY-HIオイ! ってクレさんに言われて……」とKREVAの声マネで笑いを誘い、「あれ、物真似するの言ってなかったカナ!?」ととぼけながら“言ってなカッタカナ? Remix”を浴びせかける。ソロ・デビュー・シングルの2曲もしっかりと披露していた。続いて、ファットなビートをぐいぐいと乗りこなすラップでフリースタイルを届けてくるのはKEN THE 390だ。KREVAを招き入れた“2階建ての家を買おう feat. KREVA”のコラボも実現し、更にこの後には「プチ超ライブ祭り in SAITAMA」と題されたKEN THE 390、SKY-HI、KLOOZらの華々しいセッションへと傾れ込んでゆく。

セカンド・ステージでのL-VOKALは、「すみません、別人が上がってました」と意表を突くギミックでmikE maTidaを軽くフックアップしつつ、KREVAプロデュースによるニュー・アルバム『別人Lボーカル』から“SKILLZ”のしなやかなフロウを繰り広げてくれる。ヒップ・ホップの現場感覚を活かした、限られた持ち時間の中での見せ方が秀逸だ。関西弁ラップの耳にへばりつくような節回しを捩じ込んでくるSHINGO☆西成は、期待通りに“ハヒヘホ featuring KREVA”の痛烈なコラボ・ワークを織り交ぜながら、一面のオーディエンスを巻き込む大阪締め→「K」サインを掲げながらの“大阪UP”と豪腕ぶりを見せつけてくれる。続くAKLOは、メロディアスなトラックに哀愁と強熱を忍ばせつつ、手首を捻って「猫みたいに」ポーズを繰り出す振りをレクチャーし、“NEW DAYS MOVE”のインタラクティヴな楽しみをもたらしていた。「何事も練習あるのみですよ。スポーツも、サッカーも」と告げ、“サッカー”や“YOUR LANE”ではKREVAとの共演してみせる。

サイプレス上野とロベルト吉野によるステージでは、ロ吉が鮮やかなターンテーブル・ワークでオーディエンスを湧かせるのだが、機材トラブルでラップトップ上の音が出ない。苦し紛れの絶叫で間を繋ぎながら復旧を試みるロ吉の姿があった。サ上は「みんなごめんね! お見苦しいところを見せちゃって。みんな頑張ってくれ! 俺が頑張るのか! 俺たちをアイドルにしてくれ!」と“ぶっかます”の《吉野ぉー↑↑》《上野ぉー↑↑》コールで巻き返しを図る。“HIPHOP体操第二”では、このタイトルなのにロマンチックなサウンドがゆったりとクラップを誘う視界が美しかった。そしてスクリーンにはジングルと共に「NEXT ARTIST」が示されるのだが、その名前は「???」。セカンド・ステージに照明が当たり、「俺—!!」と姿を見せたのは、他でもないKREVAである。ここでの彼は、ヴォコーダー弾き語り“Tonight”を更に発展させた、「押し語り&ヴォコーダー、たぶん世界で俺だけしかやらないっていう」パフォーマンスを披露する。Ableton社のPushというコントローラー機材を用い、トラック出しとパッド上に割り当てられたヴォコーダーの鍵盤操作を同時に行いながら歌う。名曲を更に進化させ、生まれ変わらせるという見事な一幕であった。

昨年は客席でフェス参加したという阿部真央が、今年は晴れてメイン・ステージに登場。アコギ一本のソロ弾き語りだというのに、圧巻の表現力/空間掌握力を発揮して“最後の私”やライヴの定番ナンバー“母の唄”を歌い上げてゆく。「流れ、止まってないかなあ。大丈夫ですか?」と本人は気に掛けていたが、むしろあべまの流れに吞み込まれた時間と言うべきだろう。そしてセカンド・ステージにはお馴染みのシンガー、SONOMIが立つ。のだが、ここでも機材トラブルが発生してしまい、演奏曲のトラックが出てこない。「出会って10年、クレさんがどんどん大きくなって、いろんなことを勉強させてもらいました!」と語って復旧を待つのだが、ようやく鳴り出したトラックも途中で停止する事態になってしまった。そこで、オーディエンスは「アカペラで歌ってー!!」とエールを送りながら手拍子でSONOMIを全力サポート。“愛が足りないよ”を「愛がありすぎだよー!!」と歌い切ると、メイン・ステージに姿を見せたKREVAとの“遠くまで”もアカペラで披露し、「アカペラついでに、やっときますかー!」というKREVAの合図で、この日誕生日を迎えたSONOMIに“ハッピー・バースデー”の大合唱が贈られる。「最高の誕生日です!」とSONOMIはその目を潤ませていた。

フェスのクライマックスへと向かう時間帯を一気に加熱したのは、MIYAVIだ。盟友・BOBO(Dr.)とのコンビで、冴え渡るタッピング・ギターを繰り出しながら“What's My Name?”を皮切りにオーディエンスをがっつりとロックさせてゆく。「昨年も、終わった後、朝8時まで吞み倒して語り倒しました! 俺たちは、ジャンルとか関係なく音で繋がってるし、リスペクトしてるんで」とKREVAとの間の信頼関係を語り、“STRONG MIYAVI vs KREVA”では猛烈なヴォルテージの共演を繰り広げてみせる。最後にはMIYAVI自身のシャウティング・ヴォーカルも最高潮を迎える“Day 1”で、場内に熱い余韻を残すステージを駆け抜けるのだった。そしてスクリーンには、8/20に行われた『908 FESTIVAL 2013 in OSAKA』における、KREVAと三浦大知のパフォーマンスの模様がダイジェストで映し出される。

KREVAを支えるファンや共闘するアーティストたちのピープル・トゥリーが一大絵巻と化すこのフェス。そのクライマックスはやはり凄かった。深紅のスーツを身に纏ったKREVA(姿を見せる度にお色直しを行っていた)が首からワイヤレスの小型サンプラーをぶら下げ、“パーティーはIZUKO?”を威勢良く切り出す。“PROPS”では「全員呼んでやるぜー!!」とKEN THE 390、SKY-HI、KLOOZ、サイプレス上野はもとよりLBとHI-SOも加わった7MCによる怒濤のマイク・リレーが繰り広げられ、“ファンキーグラマラス”はKENとSKY-HIがマイクを担いMIYAVIがギターをぶっ放すというスペシャル・ヴァージョンである。“成功”は《胴上げ》《超やべー!》の押韻をオーディエンスがしっかりと決めてくれるさまが頼もしい。“微炭酸シンドローム feat. 阿部真央”でのあべまは柔らかいコーラスで歌声の引き出しの豊富さを発揮し、「ゲストっていいなあ、また一人になってしまった……って、そんなわけねえよ!」といった前フリから投下されるのはもちろん“ひとりじゃないのよ feat. SONOMI”、更には“音色”といった楽曲群である。

新曲“BESHI”のコーラスをオーディエンスに委ねる際には「ちがうんすよ。俺が欲しいのは、熱っっ唱なんです。それを可能にする、魔法の言葉を今から言います。皆さんの、心の中のオザキを叩き起こしてください。お母さん、紀世彦じゃない。お父さん、ジャンボじゃない」と告げ、お手本とばかりに尾崎豊“シェリー”を切々と熱唱して床に倒れ込むKREVAである。こうして万全過ぎる態勢で臨んだ“BESHI”は、オーディエンスの歌声にまみれて叫ぶようなラップを返す爆発的なパフォーマンスとなった。そのまま“くればいいのに(Short Version)”の草野マサムネ・パートも客席に委ねられるのだが、終盤に響き渡るこの美声は……なんと、さかいゆうの登場だ。「次の曲は、クレさんに宛てた手紙のような曲で、この人と同じ時代に生まれて本当に良かったと思って。みなさんもそうだと思うんですけど」「クレさんに宛てた曲なんで、今日は、クレさんのことを想って歌っていいですか?」と披露されるのは“生まれてきてありがとう feat. さかいゆう”である。そして、「俺が一番嬉しいゲストは、皆さんなんですよ!」と告げられてからの“Na Na Na”、“KILA KILA”は、放出されたキラッキラのリボンが辺り一面に揺れる中で盛大なコーラスに彩られてゆく。本編を“Have a nice day!”で締め括ったKREVAは、セカンド・ステージに降り立つアンコールに“C'mon, Let's go”の華麗なアカペラ・ラップを投下し、あたかもウィニング・ランのように歌いながら通路を進む。出演者全員が改めて呼び込まれるステージで、万感のフィナーレを迎えるのだった。

より先鋭的なパフォーマンスで生まれ変わった“Tonight”、そしてSONOMIやさかいゆうのパフォーマンスなど、この日のうちには何度か「誕生」のイメージを掻き立てられる瞬間があった。KREVAがデザインし、人々を繋げる斬新なポップ・ミュージックには、いつでもこんな風に「誕生」の興奮と歓喜が宿されていた気がする。そして来る2014年、ソロ・デビュー10周年を迎えるKREVAは、新たなベスト盤やニュー・アルバムのリリース、全国ツアー、音楽劇『最高はひとつじゃない2014』など、いくつもの大きなアクションを起こしてゆくこともアナウンスされた(こちらの記事も→http://ro69.jp/news/detail/88534)。ワクワクしながら続報を待ちたい。(小池宏和)

●サイプレス上野 (SECOND STAGE)
00 HIPHOP体操第一

●KREVA (MAIN STAGE)
01 Feel It In The Air
02 OH YEAH
03 イッサイガッサイ
04 王者の休日

●KLOOZ (SECOND STAGE)
05 It’s My Turn

●SKY-HI (MAIN STAGE)
06 RULE
07 言ってなカッタカナ? Remix
08 愛ブルーム

●KEN THE 390 (MAIN STAGE)
09 What's Generation
10 フリースタイル
11 2階建ての家を買おう feat. KREVA

●プチ超ライブ祭り in SAITAMA (MAIN STAGE)
12 Critical Point / SKY-HI, KEN THE 390
13 LEGO / KEN THE 390, SKY-HI, KLOOZ

●L-VOKAL (SECOND STAGE)
14 SKILLZ

●SHINGO☆西成(MAIN STAGE)
15 左
16 心とフトコロが寒い時には胸をはれ
17 UYC
18 ハヒヘホ featuring KREVA
19 頑張ってれば…
20 大阪UP

●AKLO (MAIN STAGE)
21 RED PILL (Extended Version)
22 NEW DAYS MOVE
23 サッカー feat. KREVA
24 YOUR LANE feat. KREVA

●サイプレス上野とロベルト吉野 (MAIN STAGE)
25 レコード二枚使い
26 ぶっかます
27 よっしゃっしゃっす〆
28 LIVE GOES ON
29 サ上とロ吉
30 HIPHOP体操第二
31 バウンス祭(一発勝負短縮VER)

●KREVA (SECOND STAGE)
32 Tonight (Ableton Push)

●阿部真央 (MAIN STAGE)
33 貴方の恋人になりたいのです
34 最後の私
35 母の唄

●SONOMI (SECOND STAGE)
36 愛が足りないよ
37 遠くまで feat. KREVA

●MIYAVI (MAIN STAGE)
38 What's My Name?
39 Ahead Of The Light
40 STRONG MIYAVI vs KREVA
41 Horizon
42 Day 1

●KREVA (MAIN STAGE)
43 パーティーはIZUKO?
44 PROPS
45 ファンキーグラマラス
46 成功 (三浦大知version)
47 微炭酸シンドローム feat. 阿部真央
48 ひとりじゃないのよ feat. SONOMI
49 音色
50 BESHI
51 くればいいのに(Short Version)
52 生まれてきてありがとう feat. さかいゆう
53 Na Na Na
54 KILA KILA
55 Have a nice day!
(encore)
56 C'mon, Let's go