KEMURI、新木場を揺らした全国ツアー終盤戦
2015.03.02 07:10
今年、結成20周年を迎えるKEMURIの全国ツアー「KEMURI TOUR 2014-2015『RAMPANT』」の新木場STUDIO COAST公演が、2015年2月28日に行われた。
RO69では、ゲストにDALLAX、REI MASTROGIOVANNIを迎えて繰り広げられた、ツアー終盤戦のライブレポートを掲載する。
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アルバム『RAMPANT』を携え、昨年10月から繰り広げられて来た「KEMURI TOUR 2014-2015『RAMPANT』」が、いよいよ佳境を迎えている。追加公演含めて全41本というスケジュールの、この日は39本目(伊藤ふみお(Vo)は「38本目」と告げ、即座に「39!」と訂正されていた)。新作曲はもはや往年の名曲たちと同様のクラシックとばかりにこなれ、圧倒的なポジティヴ・ヴァイブでフロアと時間を席巻する、そんなステージであった。今後もツアーは日程を残しているのでセット・リストの記載は控えるけれども、以下少々の演奏曲表記を含む本文には、充分にご注意を。
スタジオコーストに足を踏み入れると、まずはこの3/4にセルフ・タイトルの新作アルバム・リリースを控えたREI MASTROGIOVANNIが、古今東西のスカ/パンク・チューンを軽やかにミックスするDJでフロアを温めているというところ。LÄ-PPISCH“リックサック”にREIがプロデュースしたというHELLO SPRINGFIELD!!の“たしかなもの”と、楽しむための知識を織り交ぜながら盛り上げる手腕が素晴らしい。そしてオペレーション・アイヴィーを投下したところで、この日のゲスト・アクトとなるDALLAXをコール。トム・ウェイツのSEに乗って登場すると、6人のメンバー中前線の5人が横一直線に並ぶフォーメーションで、野郎度満点の爆発チューンに来場者を巻き込んでゆく。NUMB(Vo)は、昨年、KEMURIの監修によりリリースされたスカ・コンピ『STRANGER THAN SKA』にDALLAXの“RUN OUT FROM THE RAT RACE”が収録されたことに触れつつ、その作品に寄せられたコメントを受けて「ポップなことやってるつもりなのになあ」とぼやきながらも、灼熱の新曲をぶっ放す。フロア一面の低空ダンスを誘う“ZENIGATA MARCH”に至るまで、短い持ち時間ながらがっつりと熱くさせるパフォーマンスであった。
さて、再びREI MASTROGIOVANNIのDJが、SNAIL RAMP“MIND YOUR STEP!”にザ・スペシャルズ“Little Bitch”というえげつないミックスでオーディエンスを沸かせ続けると、いよいよKEMURIが登場だ。田中‘T’幸彦(G)を先頭に、平谷庄至(Dr)、コバヤシケン(Sax)、津田紀昭(B)、そしてサポート・メンバーの河村光博(Trumpet)と
須賀裕之(Trombone)が位置に着き、華やかに音出しをかましたところで2トーン・チェッカー柄のハーフ・パンツを履いた伊藤ふみおが姿を見せる。そしてステージ本編は新作同様に“SUNNY SIDE UP!”で幕を開けるのだが、生活感と反骨精神を溢れ出させながら、温かいヴァイブで一気に場内を染め上げるさまが素晴らしい。フロアには色とりどりの大きなバルーンが舞い、オーディエンスをまとめて笑顔にさせてしまうオープニングであった。過酷な現実から目を背けるための陽性ヴァイブではない、現実をしなやかに生きるための、KEMURIが音楽を鳴らし続けるPMA(Positive Mental Attitude)が、今も確かに息づいていることが分かる。その後バンド・サウンドはパンキッシュに加熱し、コバヤシ・河村・須賀のホーン・サウンドが一丸となって駆け抜け、平谷のシャッフルする高速ビートが刻まれ、或いは田中の電光石火ギター・ソロも吹き荒れつつ、新作曲を続けざまに放っていった。
オーディエンスの盛大な歌声と語らうようにしながら歌っていたふみお兄さんは、結成20周年を迎えるKEMURIに触れて「変わらないものもあります。KEMURIの名前が付く前から練習していた曲を、一曲贈りたいと思います」と語り、何度でもフレッシュさを呼び覚ますような“New Generation”を届ける。この後は、新旧の楽曲がまるで温度差を感じさせずに放たれ、驚かされるという時間が続いた。津田のうなりを上げるベース・ラインは「戦う陽性ヴァイブ」を後押しするように響き、ヘヴィ&ファンキーなダブ・グルーヴを練り上げるインスト“Silent Stone”や、「みんな、歳取るでしょう(笑)。こんな小さい子供、赤ちゃんを抱いて、ふみおさん来ましたよって言ってくれる人もいて。20年前、こんなにたくさんの人の前でやるとは思ってなかった。夢はあった。でも無理かなあ、っていう気持ちもあって。もう29とかだったし。でも、スカ・パンクやってみようって。そして今があります。みんなそれぞれ精一杯生きてて、そういう人達に恥ずかしくないように、これからも音楽を作って、奏でていきたいと思います。本当にいろんな人がいるけど、行き着く先は誰も見たことのない未来。そういう曲を今からやります」と披露されたロック・ナンバー“brand new world”は、キャリアの重みと強い決意を滲ませる、今のKEMURIの姿を鮮やかに映し出していた。
超高速のギター・カッティングが踊りまくり、須賀やコバヤシは全速力の駆け足みたいなスカ・ダンスのステップを見せているが、それでもオーディエンスを誰一人として置き去りにしないライヴ。本編後半も底なしの求心力と陽性ヴァイブを放ちながら、歌声を誘い、踊らせ続ける。そして伊藤は「最近ニュース見てると、世界はキナくさい。今日ライヴやってると、平和としか思えない(笑い)。でも本当はどうかなあって。LOVEとHATEは真っ正面で受け止めるけど、レイシズムは受け入れない。NOと言い続ける」と、世界の中の日本のバンドとしてメッセージを伝える、というスタンスを明らかにしていた。そこからの“Heart Beat”や、「自分に向かって歌い続けて来た曲なの。でも、みんなにも歌います」と届けられた“Prayer”といった名曲群は、懐かしい楽曲でありながら演奏される度に新しい意味が吹き込まれる、そんな普遍的な生命力に満ち満ちていた。DALLAXやREI MASTROGIOVANNI、そしてスタッフやセキュリティに向けて丁寧に感謝の言葉を伝えると、これからも伝えるべき思いを胸に活動するKEMURIの姿勢を明らかにし、サポートを求める伊藤。そして本編は、豪快なリフで切り出される1stシングル曲“Along The Longest Way...”によって、締め括られるのだった。
アンコールに応えると、新たなアルバム製作や4月に米国ツアーを行うこと、そして9月に行われる東名阪の20周年ツアー「SKA BRAVO」では、米国からリール・ビッグ・フィッシュ、レス・ザン・ジェイク、再結成スカンキン・ピックル(REIのDJでも紹介されていた)というレジェンダリーなスカ・パンク・バンドたちを迎えることが告知された。「いろいろあったけど、KEMURIを結成して良かったと思うし、これからもアルバムを作ります」と、バンド活動の歓びや新たな決意を溢れ出させながら、ライヴは揉みくちゃの狂騒のまま大団円を迎えていった。現在のツアー「RAMPANT」は、今後仙台Rensa(3/13)、そしてツアーの出発地点でもあった郡山HIPSHOT JAPANでの追加公演(3/14)と、引き続き行われる。(小池宏和)
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なお、レポート中にもあるとおり、KEMURIは、2015年9月25日~27日の3日間、結成20周年を記念した東名阪ツアー「KEMURI 20th Anniversary Japan Tour “SKA BRAVO”」を開催する(詳細はこちら)。