今週のRO69ニュースROUND UP:ついに始動したApple Music、24時間ラジオ「Beats 1」を聴いてみた

日本時間7月1日、いよいよローンチされたApple Music。新たに導入されたソーシャル機能「Connect」やSiriとの連携強化に加えて、ユーザーの好みに合わせたプレイリストを生成してくれるレコメンド機能「For You」や、各地のエディター、さらにNME誌、ローリング・ストーン誌といった各国メディアの選曲によるプレイリスト機能など、独自のキュレーション機能も話題となっている。

そして現時点で、そのキュレーション・パワーが最も的確に炸裂しているのは実はラジオ、「Beats 1」じゃないか──というのがこの数日間使ってみての実感だ。NY、LA、ロンドンの3都市を拠点に24時間オンエアされているBeats 1。何と言ってもその選曲が絶妙なのだ。数百万曲から絞り込むかたちで新たな楽しみ方を示すのがプレイリスト機能だとしたら、数百万曲の奥行きと可能性を、自由に放り投げたままでも遊べることを証明するのがBeats1の選曲だと言ってもいいかもしれない。

たとえばある日の夕刻、Beats 1を1時間くらい流し聴きしていると、ディー・ライトの“Groove Is In The Heart”とディスクロージャーの“Holding On”とジャミロクワイの“Virtual Insanity”とイヤーズ&イヤーズの“Desire”が、むちゃくちゃ渋いレア・グルーヴ・チューンと混ざって次々にオンエアされて、ひとつの流れとして整理されていく感じには「なるほどなあ!」と膝を打ちたくなってしまった。

そんなBeats 1の絶妙な選曲に大きな役割を果たしているのがBeats 1のLA局のメインDJを担当しているゼイン・ロウ(Zane Lowe)という男だ。少しでも意識的にUKの音楽を聴いている人ならば、一度は彼の名前を見かけたことがあるはずだ。もともと彼はBBCレディオ1の看板DJとして10年以上にわたって絶大な人気を誇っていた人で、彼のプッシュによってブレイクした新人バンド、彼の番組で初オンエアされたビッグネームの新曲は数計り知れない。

ゼイン・ロウはスター総出演で大きな話題になったBBC Music制作の“God Only Knows”のビデオにも、BBCの音楽部門の顔として出演している。ワン・ダイレクションの直後、ゴールドのヴァイナルをくるっと回しているのが彼。

“God Only Knows” - BBC Music

ラジオDJという職業において、近年ここまで個人的な影響力を持ち得た人は世界的に見渡してもゼイン・ロウ以外いないだろうが、ロウはこれまでにないタイプのスターDJだった。60年代から急逝した2004年まで活躍を続け「John Peel Session」シリーズなどでも知られるジョン・ピール、ブリットポップ期に一斉を風靡したスティーヴ・ラマックなど、これまでにもBBCレディオ1には名物DJと呼ばれる人はいた。そんな中でもロウの選曲を特徴づけているのは、その良い意味で一切節操がないマルチ・リスナー体質。誰よりも早い青田買いを可能にする嗅覚を持ちつつもインディ・スノッブではない、時代を活写したビッグヒットをプレイしながらも単なるチャートご用聞きの有線的セレクトにはならない、そんな彼のバランス感覚、現場感覚は、喩えるならNMEとケラングとピッチフォークとMojoとローリング・ストーンとビルボードの価値観を矛盾なくミックスしたものだ。また、ロウはインタヴュアーとしても優れていて、彼がやったカニエ・ウェストのインタヴューはかのノエル・ギャラガーが「ありえないくらい面白い」と評していたくらいだ。

ゼイン・ロウのBBCからApple Musicへの移籍は大きなニュースとして伝えられ、ロウをアメリカに送り出すかたちになったUKメディアは彼を失うことを惜しみつつ、これまでの功績を讃えた特集を次々に組んだ。そして全世界が注目する中でロウはBeats 1に登場、彼が初めてBeats 1でかけたマンチェスターの新人スプリング・キングの“City”は、一夜にしてホッテスト・チューンになった。

Spring King “City”

ちなみにゼイン・ロウのBeats 1への参加について、Apple Musicの開発に携わったトレント・レズナーは、下記のインタヴューで次のように語っている。

◆ナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナー、アップルミュージックについて語る (2015/07/02)
http://ro69.jp/news/detail/126724

「1年半くらい前にツアーに出てたんだけど、BBCでゼインの番組を聴いてたら、いろんなことを思いついたんだよね。まず、こんなすごいラジオ局はアメリカにはないってことだよ。ポップ・ミュージックのヒット曲のあとに、まるで誰も知らないような曲がかかったりして、それを繋ぎ合わせてるのが大の音楽ファンのゼインなんだよ。聴いてる俺も迎え入れられてる感じがするんだよね。世の中に背を向けてる感じもなければ、メインストリーム一点張りでもないし、エリート意識みたいなのもないし、隙間を狙ってる感じもないんだよ。こんなのがアメリカにもあったらどうだろうって俺は思ったんだ。世界規模でこういうのをやったらどうだろうってね。しっかり丁寧にやって、誠実にやって、『市場リサーチと統計によれば……』なんてことは誰もいわないことをやったらどうだろうって。っていうのも、市場リサーチと統計についてなんて誰もどうだっていいからなんだよ」(トレント・レズナー)

プロパーな番組に加えて企画、特集も目白押しのBeats 1、番組表チェックはこちらからどうぞ。↓
http://applemusic.tumblr.com/beats1

(粉川しの)
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