【コラム】X JAPAN、ただひとつのロックバンドとして放つ20年ぶりのアルバムに寄せて
2015.07.15 07:00
先日、X JAPANが約20年振りのニューアルバムをリリースすることを発表した。思えばずっと、彼らの予定は「実現したら奇跡」という印象があるが(やること全ての規模が大きいから、そうなってしまうのだろうけれど)、今回は間違いないだろう。「2016年3月11日に世界同時発売する」と具体的に発表されている、というだけではなく、彼らがアルバムをリリースする機が熟した、と心から思えるからだ。
彼らは世の中に現れた時から、常に人々を驚かせ続けてきた。ハードコアバンドと共に活動したかと思えば、テレビのバラエティ番組に出演。奇抜なヴィジュアルで大人が眉をひそめたかと思えば、首相がファンだと公言。これほど両極を行き来したバンド(というより、人たち)は、後にも先にもいないだろう。さらに、メンバーの死や、衝撃的な出来事など、彼らが意図していなかったであろうことも次々と起こり、物語はどんどん膨らんでいった。そして彼らは、世代も趣向も飛び越えて、幅広い人々に名を知られることとなった。もちろん、功を奏したところもあるだろう。しかし、様々な色眼鏡が重なって、彼らがクリアに見られなくなってしまった状況も、悲しいかな否めない。だから、はっきり言っておこう。全てを取っ払った裸の彼らは、「ロックバンド」なのだ。ようやく、その凄味が、20年振りに赤裸々になろうとしているのだ。
とにかくハチャメチャで、だけど曲はすこぶるかっこよくって、刺激のカタマリである自分たち自身を、彼らも、周りも、楽しんでいた初期のX JAPAN。そんな青春の日々が、メジャーデビューし、東京ドーム公演を連発し、世界進出を発表し、モンスターバンドと化していってから、どんどん変化した。「ロックバンド」というよりは「個々の集合体」となり、ケミストリーを味わう楽しみは薄れていった。決定的だったのは、言わずもがな、Toshlの脱退であり、hideの死である。
しかし、様々な困難を潜り抜け、再結成し、Toshlが戻り、SUGIZOが加入し、ライヴを重ね、新曲を制作していった彼ら。そう、彼らは規模こそ大きいものの、スタンダードなやり方で「ロックバンド」として、再び固まっていったのだ。思えば彼らの音楽性は、ヘヴィメタル、ハードロック、ハードコア、パンク、サイケ、クラシックなどなど、ミクスチャーと言っても過言ではないほどディープなジャンルが取り混ぜられている。そこに、音楽オタク(褒め言葉です)のSUGIZOが加入したのだから、発明のような楽曲が出来上がるのではないだろうか。さらに今は、メンバー同士も、余計な事情に阻まれることもなく、ガッチリと繋がっているように見える。そこで生まれるケミストリーも、想像しただけでワクワクする。しかもニューアルバムは、全曲新曲とのこと! やはり彼らは、わかっている。
ロックバンド、X JAPAN、ここに在り――20年、もしくはそれ以上にわたって増えてきてしまった色眼鏡を、吹っ飛ばす最高傑作を彼らが届けてくれると、私は信じている。
(高橋美穂)