プーマ・ブルーをZepp Shinjukuで目撃!

プーマ・ブルーをZepp Shinjukuで目撃! - @olivhk@olivhk
南ロンドン出身でアトランタを拠点に活動するマルチアーティスト、プーマ・ブルー。昨年リリースされた最新作『Croak Dream』は、自らの死生観を問い直し、より哲学的な深みへと到達したソングライターとしての基軸を深化させた一枚に仕上げられた。30歳を迎えリリースされた本作は、自身のラベリングとも言えるオルタナティブR&Bにポストパンク、インダストリアル、アンビエントの要素をレイヤーとして重ね、より多層的な音楽実験の賜物とも言える。そんなアーティストとして変化の節目を迎えた、プーマ・ブルーの最新モードを東京で初披露する場となったのが4月1日のZepp Shinjuku公演。ミニマムで無機質、それでいて強い生命力を感じさせたライブの様子を完全レポートします!開演時刻になると、黒一色のステージに群青色のライトが照らし出された。本公演の導入の数分間は事務的なドラムのテスト音とゴアゴアとした環境音が鳴り続ける。人工的な要素が集中しているにもかかわらず、寒色に彩られたステージングも相まって、深海を彷彿とさせる不穏なネイチャー感が場を包み込んだ。そんな予兆もつかの間、一曲目の“Croak Dream”が披露される。ホラー特有の不吉な電子音の中、淡々とウィスパーボイスで歌い始めた。幽玄ながらどこか呪術的なボーカルが繰り返されつつ、フェードのように徐々に力を増すギターサウンドは突発的にも打算的にも感じられる。静と動がせめぎ合うその流れに、P.I.LやThe Pop Groupを想起させるポストパンク的な動物性が光っていた。続く2曲目は、こちらも最新作収録の“Hold It”。ノイズを織り交ぜたインダストリアルな要素が際立ちつつも、楽曲自体はシンプルでスローな構造美を持つ一曲だ。ソフトで心地よい歌声は内省的でありつつも、それをかき乱すように弦楽器の不協和音にも似た雑音が差し込まれ、葛藤を赤裸々に綴った詩世界にさらなる奥行きを与えていた。多層化した最新作のモードが鮮烈にアピールされつつも、過去作へのリスペクトももちろん忘れていない。キャリア初期に発表された“Soft Porn”では、ローファイ的な10年代ベッドルームポップの潮流を感じさせつつ、ドラムマシーンの質感を残しながら“生のサウンド”として再構築し、楽曲に新たな表情をもたらしていた。『Holy Waters』から披露された“Too Much, Too Much”でも過去楽曲の刷新が顕著で、音源以上にベースの重低音を複雑化させた拡張的なアプローチが、グルーヴィで新しい印象をオーディエンスに与える。
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ここまでMCは最低限の謝意に留めていたプーマ・ブルーだが、不意に流暢な日本語で「ありがとうございます」と語りかけ、会場の空気をわずかに緩めたのち、後半戦へと突入した。クライマックスへと駆け上がる9曲の中でもハイライトとなったのは“Pretty”だった。スロウでムーディなストリングス、甘くもどこか物悲しいコーラス、そしてメロウなアルペジオギターが重なった瞬間、場の空気は一気に結晶化する。爆発的な熱量で押し切るタイプの楽曲ではない。しかし、美しいアウトロの中で《Feel so pretty / You make me feel so pretty / And I'm not pretty at all》と囁かれたその瞬間、観客それぞれが抱えていた感情が静かに解き放たれていくのを感じた。その後も“Want Me”、“Moon Undah Water”、“(She's) Just a Phase”といったキャリアを彩ってきた楽曲群が立て続けに披露され、アンコールの“Only Trying”と“Bruise Cruise”の2曲で幕を閉じた。より複雑化された音像の中で、剥き出しになっていく感情と身体性。プーマ・ブルーが提示したのは、ジャンルの更新や音楽的実験の先にある、聴覚だけでなく身体感覚に訴えかける“生の実感”そのものだったのかもしれない。内省と衝動がせめぎ合うその表現は、確かにこの夜、東京の観客の深層へと到達していた。静けさの中で確かな余韻を残した昨日のライブは、彼の新たなフェーズの始まりを告げる、決定的な一夜として記憶されるだろう。(北川裕也)---セットリスト---
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