デヴィッド・バーン、ストリーミング業界の収益分配について不透明さを指摘

デヴィッド・バーン、ストリーミング業界の収益分配について不透明さを指摘

かねてからスポティファイなどのストリーミング・サービスからの印税の少なさを問題視しているデヴィッド・バーンは、ストリーミング・サービスとレコード会社が交わしている契約や取り決めがまったく透明でないことが大きな問題となっていると指摘している。

デヴィッドは2013年にレディオヘッドのトム・ヨークやプロデューサーのナイジェル・ゴドリッチらがアーティストの取り分が少なすぎるとしてスポティファイからソロ・プロジェクトの音源を引き上げた時と同様にストリーミングの印税配分を問題視していて、さまざまなメディアで持論を展開してきている。デヴィッドもまた、自分の取り分が問題なのではなくて、このままだと若いアーティストが生計を立てられなくなっていくことが問題だとしていて、特に今回はいろいろ調べようとしてもストリーミングとレーベルとの間の取り決めがまったく不透明でなにがどうなっているのかがさっぱりわからなくなっているとニューヨーク・タイムス紙に寄せたエッセーで指摘している。

「今日のアーティストが直面している最大の問題は透明性がなさすぎるということだ。ぼくはデジタル・サービスやレコード会社の両者に基本的な質問を投げかけてきてはいるのだけど、どちらも取り付く島もないという感じだ。たとえば、ぼくはユーチューブには音楽が使用されている動画についての広告収入はどのように分配されているのかということも訊いてみた(ものすごく基本的な質問だけど)。答えは、実際に決められたパーセンテージで分けているわけではないというもので、それでもユーチューブの取り分は『半分以下』だということだった。なお、別な業界関係者(非常にデリケートな問題だからという理由で匿名希望)の話によると、おおまかな取り分はユーチューブが50パーセント、マスター音源の持ち主が35パーセント、版権管理者に15パーセントということらしい。

ミュージシャンやミュージシャンらに賛同する人たちが収益のより公平な還元システムを策定しようとする前にぼくたちがまずやらなければならないのは、一体なにがどうなっているのか、正確に知らなければならないということだ。レーベルとストリーミング・サービスの両者は音楽から得た富をどのような形で分配しているのかについて情報を開示されることをぼくたちは必要としているのだ。アップルが新しいストリーミング・サービスの3か月のお試し期間の間、アーティストへの印税も支払わないとしていたのをテイラー・スウィフトが諦めさせて払わせることにした時、アップルはほんの少しだけ進歩したといえるのかもしれない。しかし、アップルが実際にいくら払っているのか、そしてどのように配分を決めているのかはまだぼくたちにはまるでわかっていないのだ」

なお、デヴィッドがここまで調べた限りでは、スポティファイの有料サービスの契約料については、ユーザーが支払った料金の70パーセントが大概はレーベルに相当する権利所有者に支払われ、レーベルがそこからアーティストにどれだけ払うのかを判断しているのだという。また、レーベルはストリーミングからの自分たちの取り分のうちの15パーセントをアーティストに割り当てることが多く、これは15パーセントがこれまでの慣例だからだという。しかし、これまでアーティストへの割り当てがその作品の収益の15パーセントにまで収まっていたのは、CDやアナログ盤の製造やジャケットやケースの製造、販売コストなどをレーベルが負担していたからで、レーベルは取り分の85パーセントのなかからそのコストをすべて捻出していたのだという。しかし、製造コストがまったくかからないストリーミングでアーティストの取り分が相変わらず15パーセントに押さえられているのはおかしな話だとデヴィッドは指摘している。

しかも、アップルやスポティファイもレコード会社との取り決めを開示しようとせず、レーベル・オーナーでもあるデヴィッドさえかけ合って調べようとしても、どういう条件で取り決めが行われているのかはほとんどわからずじまいになっているという。さらに関係者の話によれば、アーティストへの割り当てのパーセンテージにしてもレコード会社の裁量次第で自由に決められているのが現状だという。また、基本的にストリーミングはアーティストの音源をユーザーに聴かせるというサービスから成り立っているのに、アーティストの関知しないところでレーベルはストリーミング・サービス業者の持ち株などを譲られるという恩恵も受けているという。

こうした不透明な部分があまりにも多過ぎるとデヴィッドは訴えていて、アーティストをビジネス・パートナーとして扱ってすべてを開示して行かないとなにも前に進まないと指摘している。アーティストとレーベルの橋渡しや著作権マネジメントを行っているコバルト・グループのウィラード・アドリッツはアーティストとレーベルがしっかり透明性を保ってすべてを開示してストリーミングに取り組めば音楽業界そのものが現状から3倍まで業績を増やせると見込んでいるとデヴィッドは紹介している。そして「ブラックボックスを開けてしまうことで音楽業界全体が、そのすべてが潤うことができるのだ。不満の波が今は高くなってきているが、当事者全員で取り組むことで全員にとっていい結果をもたらす根本的な改善を実現させることもできるのだ」と締め括っている。
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