【コラム】音楽、政治、エロまで!? Ken Yokoyamaが『居酒屋けんちゃん』で語った本音
2015.09.16 12:30
9月11日深夜、スペースシャワーTVで『帰ってきた(3回目)居酒屋けんちゃん』が放送された。居酒屋の大将に扮したKen Yokoyamaが、お店のアルバイトであるRioと、MAKKIN(GOOD4NOTHING)とともに様々なゲストを招き、本音のトークを繰り広げるという見どころ満載の番組。今回は約1年ぶりの放送とあって、楽しみにしていたファンも多かったはず(今回は居酒屋セットではなく小さな屋台のセットになっていた)。
新たなパートナー、Rioにデレデレするダメ店主の小芝居が、なぜだかとても板についていて(失礼)、思わずニヤニヤするオープニング。お品書きとして貼られている「トークのお題」に目がいく。今回は「男の潮吹き」「日本の未来」「サブスク」「安保法案」「ロックンロール」「先輩ミュージシャン」「日本の選挙制度」「ギター」などが並ぶ。硬・軟取り混ぜたラインナップは相変わらず(笑)。まずは、綾小路翔(氣志團)、山口隆(サンボマスター)が訪れトークが始まった。「男の潮吹き」が気になりつつも、選ばれたお題は「ロックンロール」。綾小路翔が「93年12月、高校生の頃にクラブチッタ川崎のロンドンナイトに1人で行って、そこで観たハイスタはものすごい衝撃でした」と語れば、山口隆は「こんな新しいことをやる人たち、すごいと思いました。この人たちはパンクだけに固執していない!って、ずっと思ってて」と、ともにハイスタと出会ったときの衝撃を語った。バンドを続けていく気持ちとして、綾小路翔が「“選ばれてない人間”でも、頑張ってやってれば、俺くらいにはなれるからって、(若い人には)そういうふうに思ってもらえたら」と語ると、それを受けて「俺だって、言ってみれば“イケてない子”だったから。でも、一生懸命やってたら、こういう場にも出られるし、ギターも歌もうまくなくても気合いひとつで頑張れるって、伝えたい」とKen Yokoyamaのトークも熱くなる。皆、酒も進む。
続いて、小野島大(音楽評論家)が訪れると、トークのテーマは「サブスク」に。サブスクリプション、すなわち日本でも急激に普及してきた定額制の音楽配信サービスについての話題。このトークは非常に興味深かった。RYO the SKYWALKERに山口隆も交え、リスナー視点、ミュージシャン視点、さらには(Ken Yokoyamaの場合は)レーベルオーナーとしての視点も含め、今後の音楽業界の話にまで話は進む。Ken Yokoyamaが「レーベルオーナーとしては、サブスクが主流になってミュージシャンにちゃんと還元できるのなら乗っかりたいが、いまは見極めたい時期。変に動きたくはない」と、噓偽りのない本音を語ると、山口は「キッズがいろいろな音楽をいっぱい聴ける状況は悪いことではない」とも。これは常にリスナーの視点を大切にする山口ならではの本音。RYO the SKYWALKERは「音楽の聴き方が変わってきたと言われて久しいけれど、まだまだ流動的で、ミュージシャン側も疲れてきた」と、早くこの混沌とした過渡期が過ぎ去ってほしいというリアルな思いを口にした。ただ、定額配信が主流となってしまえば、当然レーベルやミュージシャンへの利益還元は少なくなるわけで、そこで小野島氏は「だから音源制作で赤字を出した分は、ライヴや物販で補うとか、そういう方向にいかざるを得ない」と、冷静に現実を語る。そう、視点を変えればサブスクへの評価もまったく違ったものになるということを、このトークが見事に浮き彫りにしていた。
その後、田村淳(ロンドンブーツ1号2号)、谷中敦(東京スカパラダイスオーケストラ)が訪れ、視聴者待望(?)の「男の潮吹き」についてのトークなどをはさみつつ、今は避けて通ることはできない「安保法案」の話題へと。テレビ番組で、ミュージシャンがこの話題を取り上げるというだけでもエポックメイキングだが、非常にナチュラルに語られるのが『居酒屋けんちゃん』らしい。収録中に飲み過ぎたのか、すでに酔っぱらっているMAKKINが「詳しくないので知りたいんです」と熱く語り始める。法案の是非、現在の日本のスタンスについてはそれぞれの持論があるのだろうが、「賛成でも反対でも、戦争したくない、という気持ちは同じなのに」という田村淳の言葉を受けてのRioの言葉がとても印象深かった。「反対の声が大きくなって国立競技場の問題はリセットできた。でも安保法案は、もっと大きな反対の声が上がっているのに、そのまま進めている。それが怖いなって」。そして、Ken Yokoyamaは「子どものこととか、孫、曾孫の世代までのことを考えるべき、考えるセンスを持つべきだということを言っておきたい」とまとめた。番組エンディングで「音楽と、自分たちの未来、子ども達の未来に乾杯!」と締めたのも、Ken Yokoyamaとしての心からの言葉だろう。
彼は常に若い世代、後進のことを気にかけている。すでに自身も45歳。しかし、まだまだ言いたいことは山のようにあって、もっとロックンロールの楽しさや素晴らしさを伝えていきたいと思っている。それが、7月のミュージックステーションへの出演を決意した大きな理由でもあるだろうし、この久しぶりの『居酒屋けんちゃん』にしても、トークのテーマはそんな思いからセレクトされていると思えた。音楽のこと、エロトーク、政治の話題……全部同列でもっと気楽にみんなで語り合えたら。そんな思いが詰まった『居酒屋けんちゃん』、もうレギュラー番組にしてしまってもいいのでは。(杉浦美恵)