SiM、”最初で最後”の武道館! 炎吹き黒テープ舞う、八角形リングのデスマッチとは!?
2015.11.09 21:35
2015年11月4日、SiMの日本武道館公演「THE TOUR 2015 FiNAL -ONE MAN SHOW at BUDOKAN-」が行われた。RO69では、この模様をライヴ写真とレポートでお届けする。
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札幌、福岡、大阪、名古屋と4箇所のZeppを巡ってきた最新ツアーの終着地は、SiM史上初、結成11年目の日本武道館。ライヴハウスシーンでの活動にこだわりを持つ彼らは、武道館ライヴの意義について慎重なスタンスを取り、「最初で最後の武道館であること」「いつものSiMではないこと」をアナウンスしていた。ただし、彼らは武道館で、居心地悪そうにライヴを行ったわけではない。逆だ。徹頭徹尾アイディアと熱意で染め上げられた、前代未聞の、武道館ロックコンサートを繰り広げてみせたのである。
会場レイアウトに、あらためて驚かされる。八角形の客席の中央に八角形のステージが設けられ、アリーナではスタンディングエリアがそれを取り囲んでいる。北側のスクリーンには、不気味な古城の屋根から舞い降りる4人のシルエットが映し出され、巨大なモンスターの顎のようにデザインされた入場ゲートから、GODRi(Dr)、SIN(B)、SHOW-HATE(G)、そしてMAH(Vo)がひとりずつ、さながらリングに向かう格闘家のように登場する。MAHは青リンゴをかじりながら姿を見せたのだが、ということは一曲目は“KiLLiNG ME”だ。「武道館、かかってこーい!!」と叫ぶように浴びせかけられる言葉と共に、鋭い一体型リフが立ち上がる。
サラウンドで押し寄せる歌声に立ち向かうようにして、MAHは序盤からフルスロットルのシャウティングヴォーカルを飛ばしまくる。 “CROWS”の屈強でスケール感の大きなサウンドは、もしかすると武道館を視野に入れてデザインされたのだろうか。SINは楽しげにステップし、SHOW-HATEのホラー調のリフが導く“PSYCHO”へ。「ライヴハウスで生まれた曲、武道館でやる意味があると思ってます」とダブグルーヴを練り上げて沸騰する“ANTHEM”、「1階席2階席、飛び跳ねろっつっても角度が急で怖いと思うから、次は両腕だけ使う予定でいます。みんな手挙げて!」と、“GUNSHOTS”ではオーディエンスの安全に気を配りながら、腕を振るダンスが武道館いっぱいに広がっていった。
「今日来てくれて、本当にありがとうね。今年、『ANGELS and DEViLS』っていうシングルを出して、ツアーをやらなかったんですね。CDを出してツアーをやらないのは初めてで。「DEAD POP FESTiVAL」の準備とかもあったんだけど。夏フェスにもお呼ばれしてあちこち出たんですが、やらずに取っておいた曲があります。俺たちの存在証明。2万人、3万人よりも、武道館の1万人でみんなとやりたいなと」。そうMAHが告げて、炎が吹き上がる中にエモーショナルなメロディと歌詞が真っ直ぐに届けられる“EXiSTENCE”は、武道館に立つ意味さえも映し出していた。
“Set me free”で、タガが外れたように揉みくちゃになる光景も凄い。何か楽曲そのものが歓喜に打ち震えているような、そんな響き方をしている。と、ここで唐突に学園モノドラマのムービーが始まり、保健体育の授業を始めようとするMAH先生の背後では、生徒のSINとSHOW-HATEがケンカを始めてしまう。後方座席に座る優等生風のGODRiが「2人のせいで黒板が見えません!」と告げたところで、「MAHチャンス=席替え」のコーナーが発動。ポール・マッカートニーがステージ近辺の座席をプレゼントした、というエピソードにあやかり、ルーレット抽選で2階席のオーディエンスをアリーナ席に招待するという企画だ。幸運な2組には、温かい拍手が贈られていた。
この後には、「俺らモッシュするような曲ばっかりやってるんだけど、モッシュしていると見逃してしまうようなカッコイイ瞬間がある」という理由で、今ツアーに設けられたアコースティックセットへ。SHOW-HATEがアコギ、GODRiがボンゴやカホンを用い、優しげに“Same Sky”を披露する。「1966年にザ・ビートルズがここでロックコンサートをやってなかったら、近年のバンドが立つこともなかった」というリスペクトの思いを込め、“Come together”もこの編成でプレイ。滋味深い、SiMならではの独創的なアレンジによる名演であった。
ここでエレクトリックセットに戻るのかと思いきや、GODRiの強烈なドラムソロがスタート。最初のうちはきっちりと叩いていたのだが、途中からドラムセットを置き去りにしてGODRiだけがワイヤーで高く舞い上がり、いろんな意味でのエアドラムになってしまう。「まず、謝るんじゃないの? 茶番に付き合ってもらって」「すみませんでした!」「お婆ちゃん、観に来てるんだろ? 孫が空飛んだよーって(笑)」。そんな楽しげなヴァイブを、“Blah Blah Blah”や“JACK.B”が燃やし尽くし、本編は狂騒のうちに幕を閉じた。
楽屋で休憩する4人を、ライヴ中継のカメラが追っている。MAHは「いま、重大発表をツイートしてるから。みんな俺のアカウント見て! 早く!」と告げ、ここで来春のニューアルバムリリースと、2016年内の横浜アリーナワンマンが決定したことが明らかに。再登場すると、今回の11月4日という日付はたまたま武道館が空いていただけだが、4年前に初めてワンマンを行った日と同じ日付であることが伝えられる。スピリチュアルで美しい“Rum”を披露し、「最初で最後の武道館、みんなと過ごせて幸せでした! 俺たちはライヴハウスに帰りますが、これからもみんなの手で、俺たちを支えてください!」とラストスパートへ向かう。「武道館に爪痕残して帰るぜ!」と放たれた“f.a.i.t.h”ではウォールオブデスが行われて黒いリボンが降り注ぐ。鳴っている音楽も、広がる光景も、武道館ロックコンサートの歴史に新たな1ページが書き加えられる一夜であった。(小池宏和)
●セットリスト
01. KiLLiNG ME
02. WHO’S NEXT
03. CROWS
04. PSYCHO
05. レゲエ~ANTHEM
06. GUNSHOTS
07. Amy
08. EXiSTENCE
09. Murderer
10. Set me free
11. Same Sky (Acoustic ver.)
12. Come together (Acoustic ver.)
13. Blah Blah Blah
14. JACK.B
(encore)
15. Rum
16. Get Up, Get Up
17. f.a.i.t.h
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