【コラム】Q-MHzが創りだす、制作陣と表現者の「最高の関係性」に迫る
2016.01.30 15:00
『ラブライブ!』シリーズ全曲の作詞を手がける畑亜貴。“ハレ晴レユカイ”(『涼宮ハルヒの憂鬱』)などの作曲で知られる田代智一。乃木坂46、KAT-TUN、藍井エイルらの楽曲を手がける黒須克彦。LiSA、戸松遥らに楽曲提供を行う田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)。J-POP、ロック、アニソン、アイドル、ゲーム音楽など幅広い分野で活躍する4人がプロデュースチーム・Q-MHzを結成した。プライベートでも親交の深い彼らだが、『夜桜四重奏』のキャラクターソング“かしましかしまっ!”(2013年)で共に制作を行っている。
1stフルアルバム『Q-MHz』では女性ヴォーカリスト5人をゲストに迎えた。LiSAが息つく間もなくアクロバティックなメロディを歌い上げる“LiVE DiVE MHz!!”は、自らの最高値を何度も更新していくような歌が最高に痛快。女性視点で「愛」を描く“ふれてよ”は、声優としては少年役のイメージが強い小松未可子が歌うことにより、爽やかな仕上がりとなっている。作曲:田代、作詞:畑によるデビュー曲をはじめ、ハードなメタル/ロックを歌う機会の多い鈴木このみは、一転、まっすぐなバラード“「ごめんね」のシンデレラ”に4年間の歩みを託した。本人名義でのリリースは今回が初となる東山奈央は、“I, my, me, our Mulberry”で一人二役に挑戦。自身の武器である演技力を存分に発揮している。そして南條愛乃が歌うのは、異国情緒溢れるサウンドが特徴的な“La fiesta? fiesta!”。これまで歌ってきた曲とは異なる世界観に挑みつつ、しっかりと彼女の色を落とし込む表現力はさすがである。
彼女たちがそれぞれ2曲ずつヴォーカルを務めている、という点が本作のポイントである。それにより、①シンガーのファンが求めている曲、②シンガーの新たな一面を引き出すための提案としての曲という双方の提示を実現しているからだ。その根底には、シンガーの魅力を最大限引き出したいという制作陣(Q-MHz)の想い、そしてその期待に応えるどころか上回っていきたいという表現者(シンガー)の想いがある。相手の意図を汲み取りながら、自分の全力を尽くすということ。プロフェッショナルたちによる「仕事」の循環としての健全な創作活動(≒コミュニケーション)に、共作だからこその化学反応も加わり、自由度の高いポップソング集が完成した。カラフルな全10曲は聴き手にとって発見や驚きに満ちているが、それは作り手にとっても同様だろう。それぞれが受けた刺激が今後のQ-MHzでの作品や個々の活動にどう還元されていくのか。気が早いことは重々承知の上だが、今から楽しみである。(蜂須賀ちなみ)