【コラム】夜の本気ダンス『DANCEABLE』で踊る前に、の提案

【コラム】夜の本気ダンス『DANCEABLE』で踊る前に、の提案

「スペースシャワー列伝」15周年記念の全国ツアーを巡ったところで、いよいよ夜の本気ダンスがメジャーデビューアルバムをリリースした。2014年のミニアルバム『DANCE STEP』、初のフルアルバム『DANCE TIME』ときて、今回のタイトルは『DANCEABLE』。もともとバンド名からしてそうなのだが、なんとも潔いダンスロックのアティテュードが立ち上っている。

ダンサブルという形容詞は、僕もライターとして頻繁に使う。踊れる、とか踊りやすい、といったニュアンスで使っているわけだ。もともとロックンロールはダンスミュージックとしての一面を持っていた、というかかなり重要だったのだが、歴史の中でいろいろ表現が多様化して、ダンサブルなロックあるいはダンスロックという形でフォーカスされるようになったのは今世紀に入ってからだろう。

ロックアーティストたちが、ハウスやテクノ、ヒップホップ、ブレイクビーツといったダンスミュージックの方法論を積極的に取り入れたことが始まりだが、今では「ロックでしかないダンス」を追求するアーティストもいる。例えば夜ダン・米田貴紀(Vo・G)の、細身のシャツとパンツで軽快にステップを踏みながらギターを手に歌う、というスタイルは、「ロックでしかないダンス」がキャッチーに可視化されていると言っていい。ご機嫌にライヴして歌い踊っているようでも、「ロックでしかないダンス」は批評的で、難易度の高いアートフォームなのだ。

ダンスミュージックで踊り特別な高揚感を得るには、一定の時間が必要だ。生演奏のロックバンドがテクノロジーのリズムキープに対抗するのは大変だけれど、夜ダンの『DANCABLE』にふれれば、ギターの歪んだトーンや、ベースのドライヴ感、コーラスのフック、一発一発のビートの音の長さまで、バンド演奏の多くの要素がダンスロックの高揚感を支えていることに気づくだろう。バンド演奏の不利を武器に転換すること。一見スマートなわりに、実はすこぶる批評的で、驚くほどの努力に裏づけられたアルバムなのである。

僕はアルバム終盤に収められた“Dance in the rain”が好きだ。アップテンポではないし、メロディもサウンドも湿って憂いたものになっている。でも、だからこそ《踊れるなら合図してさ》の1行が、夜の本気ダンスというバンド名そのものの爆発的な高揚感を予感させる。もちろん踊って楽しむべきだし、ライヴハウスやクラブに繰り出したっていい。でもまずは、腰を据えて『DANCEABLE』というダンスロックの名盤をじっくりと聴き込んでみよう。なぜって、そのためにアルバムという形でリリースされたのだから。(小池宏和)

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