【コラム】BRAHMAN、映像作品『尽未来際』を観て――祝福されたのは誰だったのか?

【コラム】BRAHMAN、映像作品『尽未来際』を観て――祝福されたのは誰だったのか?

昨年11月、幕張メッセで2日間にわたって繰り広げられた、BRAHMAN結成20周年イヤーのクライマックスイベント「尽未来際~尽未来祭~」。そのBRAHMANのステージでは、ベスト盤『尽未来際』のディスク1とディスク2を、2日間に分けて再現した。AIR JAM世代のサヴァイヴァーたちが結集することで20年の道のりに思いを馳せた1日目、現在の盟友バンドたちが全力でアニヴァーサリーを祝福した2日目のドラマティックな感動は、BRAHMANのステージだけを観て反芻できるものではないだろう。

ただ、初日のステージで、RONZIとKOHKI、MAKOTOが奏でるサウンドは20年の自信と味わいを漲らせながら幕張メッセの広大なスペースに響き渡り、1曲目“TONGFARR”を歌いきったTOSHI-LOWは、まるで菩薩のように穏やかな微笑を浮かべる。それを確認することができるというだけでも、今回のBD/DVD化には大きな意味があると言えるだろう。“ARTMAN”の混沌とした爆発力と、激しく渦を巻くフロアの光景が交互に映し出されるさまもすごい。

そして2日目。爆走しながら4人が掛け合いコーラスを叫ぶ“初期衝動”のあと、TOSHI-LOWは「お祝いされんのは俺たち、BRAHMANはじめます!!」という宣言で祭典ムードに拍車をかける。両日とも本当に感動的なMCがあったのでぜひ映像で確認してほしいのだが、そもそも2日間のライヴのセットリストとして練られていたのがベスト盤『尽未来際』の曲順だったのだ、ということがわかるほど、ライヴ自体がとてつもなくドラマティックで感動的だ。“其限”と“鼎の問”の連打が命に駆り立てられた20年を映し出し、“PLACEBO”ではその道筋を祝福するように、細美武士がTOSHI-LOWとともにフロアに飛び込んでハーモニーを歌う。

一瞬一瞬に命を燃やし尽くす、その連続として20年というアニヴァーサリーがあったのだということ。軽薄なムードは一片たりとも存在しないが、ライヴという語の意味そのままに、祝福されるべき生がそこにはあった。お祝いされるのはBRAHMAN。確かにそうだ。ただしそこでは、同時代を生きる/生きた人々の命も祝福されている。ドキュメンタリーディスクでは、「尽未来際~開闢~」「~畏友~」「~尽未来祭~」の舞台裏がとらえられている。仲間たちとの会話と同じトーンでインタヴューも行われているが、「次は10年後、30周年でまたやりましょう」と涼しい顔で言ってのけるenvyのTetsuya Fukagawaがすごい。SUPER STUPID・16年越しのけじめ、SiM・MAHの頼もしい言葉、そして10-FEET・TAKUMAの爆笑モノマネといったハイライトも凝縮されている。(小池宏和)
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