【コラム】今なお限界に挑み続けるACIDMANの「音楽」とは? 結成20周年を機に改めて考える

  • 【コラム】今なお限界に挑み続けるACIDMANの「音楽」とは? 結成20周年を機に改めて考える - 『最後の星』

    『最後の星』

  • 【コラム】今なお限界に挑み続けるACIDMANの「音楽」とは? 結成20周年を機に改めて考える - 『ACIDMAN 20th Anniversary 
Fans’ Best Selection Album "Your Song"』

    『ACIDMAN 20th Anniversary Fans’ Best Selection Album "Your Song"』

  • 【コラム】今なお限界に挑み続けるACIDMANの「音楽」とは? 結成20周年を機に改めて考える - 『最後の星』
  • 【コラム】今なお限界に挑み続けるACIDMANの「音楽」とは? 結成20周年を機に改めて考える - 『ACIDMAN 20th Anniversary 
Fans’ Best Selection Album "Your Song"』

ロックを生み出すモチベーションは、それこそアーティストの数だけあると言ってもいいくらい多種多様だが、洋の東西も時代の差も問わずそこに通底しているのは、「限界を超える」ことを激しく夢想する衝動だろう。自分の能力の限界を超えたパワーやスケール感を求めること。貧富や世代や言葉の違いなどによるコミュニケーションの軋轢を無効化するくらいの訴求力を求めること。そして、メインストリームとカウンターカルチャーとの境界を爽快になぎ倒すような奇跡的なバイタリティを1曲に封じ込めること――。爆発的なダイナミズムや全身震撼レベルの重轟音、あるいは極彩色のカオスの如き狂騒ポップ感など、それぞれのサウンドのフォルムは取りも直さず、そのアーティストが自分自身のどんな限界を超えようとしているのか?の象徴でもある。ACIDMANの結成20周年アニバーサリーイヤーの幕開けとして、2016年10月26日にリリースされたシングル『最後の星』。その表題曲“最後の星”が実に素晴らしい。彼らが当初から追求してきたソリッドでシンプルな3ピースロックの強度と肉体性、“ALMA”で描いた宇宙の悠久の風景とが、ミドルテンポのリズムの中でどこまでも雄大な高揚感の渦を巻き起こしながら広がっていく、壮絶なアンサンブル。そして、「無限の宇宙」と「有限の存在=人間」の対比越しに、今この時代を生きる人間の弱さと儚さ、そして愛しさを鮮やかに描き抜く、大木伸夫の精緻な筆致。
『ROCKIN'ON JAPAN』11月号で大木にインタビューした際も、「今回の20周年の企画では3枚シングルを出して行こうと思っているんですけど、この曲はできた瞬間に『これは最後、3曲目にしよう』と思ったんですよ。でも、あまりにも自分で気に入ってるから、早く出したくて(笑)」とその手応えのほどを話していたが、ACIDMAN自身のバンドヒストリーにおいてだけでなく日本のロック史においても、彼らのアイデンティティを改めて「今」に深々と刻みつけるであろう名曲だと思う。ロックの力で、人間という存在/概念の限界を超えるには、つまり「死」すらも対象化するにはどうすればいいか?――ACIDMANが音楽を通して追い求めてきたのは、そんな途方もない哲学的な思索そのものだ。宇宙の話から死生観、死後の世界、パラレルワールドまで、大木が前述のインタビュー中で繰り広げてくれた話はすべて、ACIDMANのロックと地続きのものとしての熱量とエモーションをもって響いてきたし、今なおその思索と音楽世界を研ぎ澄ませようとしていることが伝わってきた。そして、そんな彼らの果てしない探求の道程の結晶と言うべき作品が、『最後の星』と同時発売された2枚組ベストアルバム『ACIDMAN 20th Anniversary Fans’ Best Selection Album "Your Song"』だ。特設サイトのファン投票で選ばれた上位20曲が、1位から20位まで順位そのままの曲順で収録されているベスト盤。その1位に選ばれているのは、ACIDMANの楽曲の中でも特に真摯な世界観とともに、清冽で壮大なロックユニバースを編み上げてみせたバラードナンバー“ALMA”だった――という点からも、彼らの表現のマインドがリスナーとの間で強く深く共有されていることがわかると思う。
今となってはロック黎明期の伝説と化した観のある「アルコールやドラッグによるトリップ感/サイケデリック感によって常識の限界を超える」という手法によってではなく、真っ向勝負の思考と探求によって人間そのものの限界に挑み続けているACIDMANというバンドの重要性を、ベスト盤は明快に教えてくれる。その20曲のトラックリストは、ぜひともCD実物をお手に取って確かめてみていただきたいと思う。そして、大木自身「こっそりしたテーマとしては、これは“ALMA”の2なんですよ。《最後の星》っていうのは、“ALMA”の最後に出てくる言葉なんで。その最後の星での出来事っていう、ちょっと続編みたいな発想で描いてて」と明かしていた“最後の星”の音風景を、一人でも多くの人に体感してほしいと思う。11月には対バンツアー、そして来年2017年には20周年の集大成となるフェス「SAITAMA ROCK FESTIVAL “SAI”」をさいたまスーパーアリーナで開催することを発表しているACIDMAN。その先にまだまだロックの新次元が拓けていきそうな予感に、今から胸が躍ってやまない。(高橋智樹)
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