【コラム】Nothing’s Carved In Stone、最新作『Existence』にモンスターバンドが続いていく奇跡を思う

【コラム】Nothing’s Carved In Stone、最新作『Existence』にモンスターバンドが続いていく奇跡を思う - 『Existence』 12月14日発売『Existence』 12月14日発売

Nothing’s Carved In Stoneが、2016年12月14日(水)に通算8作目となるスタジオアルバム『Existence』をリリースする。これ、すっげえアルバムだ。NCISは結成以来毎年というペースでアルバムを発表してきたし、そもそも結成が報じられた瞬間から、そのメンバーの顔ぶれゆえにモンスターバンドとしての役割を期待されているところがあった。そのライブの熱狂ぶりは、多くの人が知るところだろう。

逆に言えば、NCISには「凄くて当たり前」というパブリックイメージが先行してしまうところがあり、4人はそのイメージと格闘し、証明し続けることでバンドのキャリアを築いてきた。ある意味恵まれてはいるけれど、ちょっと想像も及ばないほどの過酷さを孕んだキャリアだ。古今東西のロックにおいて、それぞれに個性と実績を誇るメンバーの集まったスーパーグループの類が、こんなふうにコンスタントに活動し続ける例はあまり多くない。一時の企画モノといった評価をされるケースの方がはるかに多いだろう。

彼らのロックに触れて、ずっと不思議に思っていたことを書きたい。なぜ、その共作クレジットの歌の数々は、いつでも記憶を引き摺り、思い悩み、戸惑い苦しんでいるのか、ということだ。あのメンツの、あのとんでもないサウンドなら、もっと楽勝ムードの、余裕しゃくしゃくでご機嫌なロックになっていても、バンド外の誰ひとりとして文句は言わないはずだ。しかし彼らはそれをしない。言葉遊びにするつもりはないのだが、「分からないことが分かっている」からだ。未来のことは誰にも分からないし、人の心は分からないし、自分の気持ちさえ分からなかったりする。その現実を受け止めているからだ。

新作『Existence』においても、前提は同じだ。ただし、その「分からなさ」を踏み台にした跳躍が、これまでとはケタ違いなのである。まずは“Like a Shooting Star”が凄まじい。生形真一(G)のメタリックにして徹底的にエモーショナルなギターソロの迸りがあり、日向秀和(B)の怪物のようにのたうつベースラインがあり、アップリフティングでありながら言語のように雄弁な大喜多崇規(Dr)のビートが刻まれる。そして村松拓(Vo・G)の歌声は《俺は歩いてる/ブラックホールの中を/全てを知っているような振りをして》という現在地から、可能性を見出そうとするのである。「分からない」閉塞感に抗う思いが、最強のバンドアンサンブルを引き出しているかのようだ。

“Good-bye”という強い決意を告げる一方で、“Sing”という鋭くも優しい呼びかけも込められた『Existence』。触れる者を挑発するようにしながら、NCISはしかし誰ひとりとして置き去りにしない。分からないのは誰もが同じだからだ。あの優れた表現者4人が集まったところで、分からないことは分からない。だから、今でも死に物狂いで思いをぶつけ合っている。その感情の嵐の中に、我々も誘い込まれてしまうのである。

『In Future』に『Adventures』という先行シングルからも、「分からなさ」に立ち向かうNCISの姿勢は感じられていたが、『Existence』というアルバムにはまさにキャリアハイの現在地が刻まれている。歴史から学べるものは多いけれど、生々しい感情の記録がこぼれ落ちてしまうことは多い。「分からない」という激しい感情の嵐こそが、今を更新する。それを体験することはとてもスリリングだし、心躍るものなのだと、NCISは教えてくれる。(小池宏和)
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする