来日迫る! 名女優ら熱演のマッシヴ・アタック最新MV5本を徹底解説

来日迫る! 名女優ら熱演のマッシヴ・アタック最新MV5本を徹底解説

今月11月27日、28日の2日間、マッシヴ・アタックが約7年ぶりとなる来日公演を開催する。同公演にはヤング・ファーザーズがサポート・アクトを務めるほか、エスパー伊東が出演することも決定している。

公演初日がソールドアウトしていることからも、この来日を心待ちにしていた人が数多くいることが実感できる。そしてこの7年で彼らの音楽に触れ、ついに生で体感できる、と歓喜している「はじめまして」のリスナーもいるはずだ。

そんなマッシヴ・アタックの来日に向けて、前回フジロックで来日した2010年にリリースされた最新アルバム『ヘリゴランド』以降に発表された作品より5本のミュージック・ビデオをピックアップ。その5本には「映画のオマージュ」や「有名女優」といった共通項が見受けられる。

誰がどのように、どんな世界観でマッシヴ・アタックの音楽を体現しているのか。ライブへの興奮を抑えきれない人も、チケットを買おうか迷っている人も、ぜひ各作品を再生してみてほしい。

“Voodoo In My Blood”

Massive Attack - Voodoo In My Blood

今観ても背筋が凍るような、それでいて目を離すことさえ許されない気持ちにもなる。『Ritual Spirit EP』から来日公演でサポートを務めるヤング・ファーザーズをフィーチャーした楽曲のミュージック・ビデオ。そのセンセーショナルな内容に、世界中に衝撃を与えた2014年公開の映画『ゴーン・ガール』にて主演を務めた女優ロザムンド・パイクが映像に華を添える。

地下通路を歩く彼女の前に現れる銀の浮遊物、明らかに地球外のものだと思われるその物体に操られ、奇怪な動きを繰り返すロザムンドはもはや洗脳されたロボットのようだ。それらは硬質なエレクトロ・サウンドにトライバルなボーカルが乗った楽曲の世界をより色濃く映し出している。

このミュージック・ビデオは第34回カンヌ国際映画祭にてパルム・ドールにノミネートされながらも、様々な物議を醸した1981年のホラー映画『ポゼッション』をオマージュしているとのこと。マッシヴ・アタックは一見カルト的と思われるかもしれないその作品世界を、ロザムンド・パイクという存在を通して音楽とともに発信したかったのかもしれない。

“Take It There”

Massive Attack, Tricky & 3D - Take It There

セイント・ヴィンセントアール・スウェットシャツなどのミュージック・ビデオを手掛けるHiro Muraiがディレクションを務めた映像。マッシヴ・アタックからトリッキーと3Dがボーカルをとった楽曲はダウナーなピアノとドメスティックなアレンジが印象的なトラックだ。

映画『マーサ、あるいはマーシー・メイ』などで主演を務めたジョン・ホークスが登場し、マイケル・ジャクソン”Thriller”を彷彿とさせるダンスシーンが随所に差し込まれるなど、どこかメランコリックな狂気を感じる。ゾンビかどうかはさておき、フラフラと歩くジョンが「最後に向ける視線の先」がとても気になる。

“Ritual Spirit”

Massive Attack - Ritual Spirit

マッシヴ・アタックより3Dが監督を務めた最新EP表題曲の映像。ヴェルヴェット・アンダーグラウンド"Sunday Morning"などを連想させるイントロと合わせて始まるオープニングには、暗闇の中、裸電球を振り回し妖艶に踊る女性が一人。その正体は3Dと長年友人だったというケイト・モスなのだが、約4分の映像で彼女の美貌の全容を拝むことができるのはトータルで2〜3秒、といったところか。

だが、自身の全身がほぼ映らずとも「(出演の依頼があった際に出るかどうか)考える必要なんてなかった」とコメントしていたほど、ケイト自身もマッシヴ・アタックの映像に惹かれていたそうだ。もし来日公演で披露されるとして一体どんな空気で会場を覆いつくすのか今から楽しみだ。

“Come Near Me”

Massive Attack, Ghostpoet - Come Near Me

ロンドンのシンガー、Ghostpoetをフィーチャーした“Come Near Me”のミュージック・ビデオもここまで紹介した作品と等しく、異質なコンセプトが見受けられる映像だ。メインの登場人物となる男女はTVシリーズ『シャーロック』や映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』に出演する英国俳優ジョナサン・アリスとコソボ出身の女優アルタ・ドブロシが熱演している。

生活感漂う普通の部屋に佇む1組の男女は、ただ向かい合っている。夫婦なのかカップルなのか、もしくはこれから付き合うことになる友人同士なのか、関係性がはっきりとしない。ジョナサン演じる男が一歩アルタに近くとにアルタも一歩後ろに下がる。男が止まれば女も止まる、その一連の動きは楽曲タイトルと相反した構造で、より聴き手の想像力を掻き立てていく。

トリップホップという枠組みの定まらない音楽がこの先どこに向かうのか? このミュージック・ビデオのラストシーンには、そんな問いに対する一つの解を見出したマッシヴ・アタックの音楽観も凝縮されている。

“The Spoils”

Massive Attack - The Spoils

“Come Near Me”が収録された最新シングルの表題曲にはマジー・スターのホープ・サンドヴァルが参加。ミュージック・ビデオには『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズや映画『アビエイター』、『ブルージャスミン』などで数々の賞も獲得している女優ケイト・ブランシェットが出演。ホープのキュートなボーカルはベースにあるミニマムなトラックを引き立て、後半へ向け徐々に広がる荘厳なオーケストレーションなど楽曲自体もケイト同様に美しい。

ケイトの顔はライトの点滅や回転する映像に従って少しずつ変化していく。髪、肌、筋肉、そして骨格までが剥ぎ取られると顔はデジタル化し、再びその造形を取り戻す。興味深いのはそんな顔=時間の経年変化が進むごとに、マッシヴ・アタックの音楽もクライマックスにたどり着くということだ。映像と音楽が反比例しながら一つの終着点に向かう。「マッシヴ・アタックのミュージック・ビデオ」たる要素がシンプルに投影された作品だ。



カルト的な映画の引用にしても、意味深なラストシーンにしても、隅々にわたりその要素全てに何かしら意味がある。ミュージック・ビデオに出演するロザムンド・パイクやケイト・ブランシェットも、マッシヴ・アタックの音楽世界を伝える「サウンド」の一つである。そんな細胞レベルでリスナーを刺激するであろう彼らの音楽が、冬めく日本でどのように鳴らされるか、今から楽しみで仕方がない。
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