元々が4ピースバンドだったからこそ今回の正式加入の意味は大きかったはずだし、しかも「ドラム」というバンドの屋台骨の1ピースが埋まらなかった期間も聴く者を踊らせる楽曲を生み出し続けていた彼らの中には、その楽し気なサウンドやリリックとは正反対の不安や葛藤があったのだろうなと思う。最新ミニアルバム『TOGENKYO』のリード曲“TOGENKYO”の中にある≪誰だって僕だって君だって後悔飲み干して/悲しくたってそんな顔みせずに笑って過ごしてんだ≫という歌詞はそんな当時の心境を思い返しているのかなとさえ思ったし、その積年を経てやっと自分たちが理想とするバンド形態で再始動できるという彼らの喜びは計り知れない。
そして何より、「これからもっと色んな事が出来る!」というワクワク感をめちゃくちゃ感じられるのが今の彼らだ。4人編成となって初となるミニアルバム『TOGENKYO』に込められた楽曲の多彩さからその向上心が強く感じられるし、「フレデリック=中毒性抜群のダンスロックバンド」というこれまでのイメージをまるっと受け入れ、その上でもっと遊んでやろう!もっと躍らせて、もっと驚かせてやろう!というポジティブな気持ちが詰まっている。さらに、その「もっと」までジャンプするための跳躍力は、個々のプレイスキルの高さがしっかりと担っている。ライブ会場で体感すると一発で分かるのだが、サウンドの力強さやビートの太さは、ジンジンするような強い波動でオーディエンスの脚を直接突き動かしてダンスステップへと誘っていく。「聴く人を躍らせたい=サウンドも軽快であればいい」ではなく、サウンドが骨太だからこそオーディエンスが安心して身を委ねられるのだということを彼らは知っているし、その「重×軽」のバランスがより洗練されているなと最近特に思う。
来年の春に行われる地元・神戸ワールド記念ホールでのアリーナ公演は、「もっと大きいところにみんなを連れて行きたい」という想いをただ口にしていたからではなく、その願いに向かって突っ走ってきた今、この4人だからこそ見えたひとつの桃源郷だ。今月から始まる全国ツアーで彼らが新たに見せてくれる景色が楽しみでならない。(峯岸利恵)
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