ケレラ、SZA、ケラーニ、シドetc…… 最近よく聞く「オルタナティブR&B」とは何か?

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10月にリリースされ、ビョークデーモン・アルバーンなどから絶賛を呼んだケレラの1stアルバム『テイク・ミー・アパート』。アメリカ出身ながらも、クウェズなどイギリスのプロデューサーのほか、アルカなども起用し、メインストリームR&Bとは違った刺激的でエッジの立ったサウンドとパフォーマンスを打ち出している。

言ってみれば、オルタナティブR&Bの最新型ということになるが、では、そもそもオルタナティブR&Bとはどういうジャンルとして理解すればいいのか。

大雑把にいってしまえば、現在のオルタナティブR&Bはかつて90年代末にネオ・ソウルなどと呼ばれたR&Bの勢力の現在に至る流れといってもいい。

では、そもそもネオ・ソウルとはなにかというと、これは明らかにヒップホップを自分たちの感性としてすでに持っていて、それを何かしらの形で感じさせる世代のアーティストという括りを指すものだった。

Kelela - LMK

具体的にいうと、エリカ・バドゥディアンジェロマックスウェルらに代表されるが、では、これ以前のR&Bがヒップホップを感じさせない音だったのかというと、まったくそういうことではない。

むしろ、90年代に入ってからのR&Bはひたすらヒップホップとの一体化を推し進めてきたものだった。なぜかというと、90年代以降、ヒップホップは若いリスナーに最も影響力を誇るアーバン・ミュージックとなり、ポップ・ミュージック全体におけるメインストリームのひとつともなったからだ。

つまり、ヒップホップ的な要素がないと聴かれなくなるという現象も強くなり、90年代以降、R&Bではヒップホップ・プロデューサーをサウンドの作り手として起用し、ヒット曲にはラッパーとの共演を試みるということがメジャーな作品の作り方の定石とさえなった。

逆に、ヒップホップがメインストリーム化したことで、ヒップホップでもボーカルのフックやコーラスを多用することになり、R&Bアーティストの客演も増えたことで同じようにヒップホップがR&B化していくという現象も大きくみられるようになった。

基本的にメインストリームではそれが現在まで続いており、R&Bとヒップホップはジャンルとして非常に近いものになっているのだ。

Erykah Badu - Other Side Of The Game

それに対してネオ・ソウルとは80年代に勃興したヒップホップを当たり前のように吸収し、それを自分の感性として持っているR&Bアーティストのことを指しているが、必ずしもその時々のトレンドとなっているようなヒップホップ・サウンドやラップ・パフォーマンスが打ち出されるわけではない。

むしろ、実験的であったり、その時々のメインストリームR&Bと比較したら、よりクラシックなソウル・サウンドやファンク、あるいはジャズを指向する場合も多い。

もともとヒップホップは特に90年代まではアメリカのブラック・ミュージックの過去の数々の名音源や隠れた名演をDJがサンプリングとして抽出してくることが多かったので、それがブラック・ミュージックの歴史そのものを先鋭的に再構築した音になっていることもまた多かった。

たとえば、エリカ・バドゥやディアンジェロがヒップホップからインスピレーションを受けているのは、そうした歴史性や実験的であったり先鋭的だったりするところだ。そしてそこが流行の先端を行くR&BやメインストリームのR&Bとは一線を画していたため、ネオ・ソウルと呼ばれることになったのだ。

Kehlani - CRZY

その流れを現在汲んでいるのがオルタナティブR&Bで、かつてネオ・ソウルと呼ばれたアーティストも現在はオルタナティブR&Bと呼ばれることも多い。

そして、ケレラの『テイク・ミー・アパート』はアメリカのアーティストでありながら、果敢にイギリス系のエレクトロニック・サウンドや、グライム的なビートとサウンドを導入しているところがどこまでも刺激的なのだが、それでいてケレラのソングライティングとメロディやボーカルの構成があくまでもソウルを深く感じさせる内容になっているところが、最新型のオルタナティブR&Bだといえるところなのだ。

その一方で、サウンドとしては王道を行っているのがケラーニが今年に入ってリリースした1st『スウィートセクシーサヴェージ』で、Pop & Oakをメイン・プロデューサーに迎えた手堅い音に仕上げてきているが、90年代R&Bへのオマージュも感じさせつつアグレッシブでエキセントリックなケラーニの楽曲の強さは損なわない出来になっている。

また、ケラーニの場合、その活動そのものがオルタナティブといってもよく、かつては90年代に一世を風靡したR&Bユニットのトニ・トニ・トニのドウェイン・ウィギンスがプロデューサーを務めるユニット、ポップライフの一員としてテレビ出演もこなしていたのだが、このユニットを脱退し、その後もラップ・グループへの参加なども蹴って、ミックステープ制作を続け、大きな注目を集めるようになり現在に至っているのだ。

Syd - All About Me

ある意味でここのところのリリースで最もオルタナティブ的だといってもいいのは、タイラー・ザ・クリエイターが率いるオッド・フューチャーの一員だったことでも知られるシド。

もともとR&Bソングライターを目指していたシドはオッド・フューチャーのマット・マーシャンズとジ・インターネットを結成して自分たちの楽曲の発表の場としていたが、どこか80年代的な楽曲の数々を独特なエレクトロニックなサウンドとともに打ち出していく作風がアルバムを経るごとにその完成度を上げていた。

グラミー賞候補にもなった2015年の『エゴデス』では、そのサウンドと楽曲と、不毛な関係性を淡々とひもとくシドのボーカルでその世界観も極まったとも思えたものだが、今年に入ってシドがリリースした初のソロ『フィン』ではさらにビートをベースにしたサウンドを強く打ち出し、強烈なシドのメロディやフックと心象を綴る作品となっている。

SZA - Drew Barrymore

同様にアプローチとしてはかなり多岐にわたる果敢なサウンドを試み、ソングライターとしてはもちろん、歌い手として確かな力量も聴かせるのはSZA(シザ)のファースト『Ctrl』。

ケンドリック・ラマーも在籍するトップ・ドウグ・エンターテイメント(TDE)とレコード契約しているため、それぞれの楽曲で狙ったサウンドをどれも形にしているのだろうと思わせる充実した内容になっているし、南部的な雰囲気とカリブ風の歌唱を合わせたような独特な表現がどこまでも魅力的だ。

関係性についての自問自答を繰り返しながらそれでもドラマティックに歌い上げる“Drew Barrymore”など、文句なしに引き込まれるSZAの力業の最たるものになっている。

そして、ほとんどロック的なサウンドとともに高校時代の卒業ダンスパーティに感じた感情の機微を振り返る“Prom”の美しさは格別で、いずれ世代をまたがって共感されるであろう情感を含んだ作品を生み出すような予感さえ感じさせるのだ。 (高見展)

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