【第60回グラミー賞】「黒人アーティストへの不誠実さ」や「女性軽視」が顕在化したと米メディアが指摘

【第60回グラミー賞】「黒人アーティストへの不誠実さ」や「女性軽視」が顕在化したと米メディアが指摘

ブルーノ・マーズが『24K・マジック』やその収録曲で最多6部門を受賞した今年のグラミー賞だが、「The New York Times」や「Pitchfork」は今年の結果全体に関して、それぞれ「ポップは変わり続けている。グラミーは再び聴く耳を持たず」「2018年のグラミー賞、こちらでも“shithole”現象」といった手厳しいタイトルのコラムを掲載した。

これらのコラムでは6部門のノミネートを受けていたケンドリック・ラマーが主要部門を授賞しなかったことや、最多8部門にノミネートされていたジェイ・Zが無冠に終わったことを挙げながら、黒人アーティストへの「不誠実さ」を指摘。

また、女性アーティストとして唯一最優秀アルバム賞にノミネートされていたロードが授賞式でのパフォーマンスをオファーされなかったことを挙げ、これまでのグラミー賞で賞を受賞した女性アーティストは「たった17パーセント」であると記述。

オファーをしなかった理由については「オファーの数に限度がある」と説明されたものの、パフォーマンスを行ったスティングとシャギーの2人には何度もオファーをしていたことを指摘している。

なお、今年はエンターテインメント業界でのセクシャル・ハラスメントなどが大きな問題として顕在化したことから、ケシャが多数の女性アーティストと共に“Praying”のパフォーマンスを行うこととなった。


しかしこの曲がケシャ自身が経験したパワー・ハラスメントについてほのめかすものであることには言及されず、さらにカミラ・カベロなど多数の女性アーティストを共演させることで、この曲のテーマも、女性によるセクハラ告発という大きな事象もぼかされ、どこまでも無難なものとして演出されていたことを「Pitchfork」は批判している。

これに加え、シザが女性アーティストとして最多5部門のノミネートを受けながら無冠に終わったという結果も例に挙げながら、女性アーティストに対する軽視が透けて見えるとも述べている。

また、グラミー賞がいかに時代から取り残され始めているのかについて次のようにも触れる。

黒人のアーティストはこの不誠実さについてはとっくに気づいていて、フランク・オーシャンに至っては直近の作品群をグラミー賞の審査対象にされること自体を辞退している。

カニエ・ウェストはジャンル別でなら授賞されるが、総合的な部門ではそうならないことをかねてから訴えてきている(これはケンドリック・ラマーの授賞歴についても同じことが言える。今年もラップ部門賞は総なめにしたがそれ以外については無冠に終わった)。

ドレイクは昨年最優秀ラップ楽曲賞を授賞されたが、その楽曲“Hotline Bling”が実際にはラップ曲ではないという理由から、受賞を辞退することにもなった。



続けて、特に若い世代のアーティストやヒップホップ・アーティストが軽視され過ぎているとして以下のようにも記されている。

こうした反感を抱えるアーティストに加え、今年は相当に影響力のあるアーティストが、たとえば、ジャスティン・ビーバーテイラー・スウィフトザ・ウィークエンドエド・シーランらが授賞式に出席しなかった。

もはやグラミー賞はその保守性のせいで、若い世代のアーティスト全体をも排除してしまっているのは明らかだ。もちろん、グラミー賞とは常にそういうものでもあったのだが、こうした反感が表面化するメカニズムが今の時代はより分かりやすくなってきているのも確かだ。また、見過ごされたアーティストたちも、そのことについて周りと意見交換をすることが最近では容易になってきている。



そして最後に、グラミー賞における「ジャンルの妥当性」が変化してきたことを指摘しつつ、これまで主要部門の賞を授与してこなかった黒人アーティストらが「古株」になった時、そうしたアーティストたちをどう扱っていくのかという疑問を提示している。

さらに、グラミー賞はジャンルの妥当性の変化という問題にも直面している。グラミー賞にとって、その土台を築いてきた音楽ジャンルはロック・ミュージックだったということに対し、ヒップホップが今後10年のうちにその土台を担っていくか、もしくはその土台のひとつとなっていくことは明らかだ。それなのに、グラミー賞はそうした潮流の変化に対応できていなさすぎるのだ。

最終候補としては最多部門に名前が挙がったにも関わらず、ジェイ・Zがひとつも授賞されずに締め出された光景は、いかがなものかと思わせるものだった。グラミー賞がこの変節の時期を乗り越えていくのに最も頼りにするべき人物であるはずなのに、妻ビヨンセと娘ブルー・アイヴィーとともに会場の前列に座っていたジェイ・Zは、テレビ向けにはいい絵を提供することになったが、なにひとつ賞を手にすることはなかった。

しかも、いずれジェイ・Zは古株のアーティストとなっていくことになるが、そうなってしまった時に(総合的な賞を授与しなかったことについて)どうするのだろう? カニエ・ウェストがこのまま古株になってしまった時、どうするのだろうか。さらにそれから間もなくしたら、フランク・オーシャンも古株のアーティストになっていくが、グラミー賞はどう対応していくのだろうか?


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