【名曲探検】星野源は“ドラえもん”に日常を通して伝えたいメッセージのすべてを託した

【名曲探検】星野源は“ドラえもん”に日常を通して伝えたいメッセージのすべてを託した
星野源の11枚目のシングル(2月28日リリース)は、『映画ドラえもん のび太の宝島』の主題歌で、楽曲タイトルはなんと、そのものズバリ“ドラえもん”である。いわゆるタイアップ曲を制作する時に、原作や主人公の名前をそのままタイトルに付ける例は、これまであまり見たことがない。このストレートなタイトル付けは、『ドラえもん』とその作者である藤子・F・不二雄を愛してやまない星野源だからこその発想だ。先日、初めて自身がパーソナリティを務める『星野源のオールナイトニッポン』で楽曲をフル解禁し、その思い入れをたっぷりと語ったが、そこでもこのタイトル付けに関しては熱く語っていたのが印象的だ。曰く、「ドラえもんって、国民的キャラクターで、その国民的レベルがマジで100%。生まれて間もない子どもからおじいちゃん・おばあちゃんまで、100%が知ってるキャラクターは他にいない」だから「“ドラえもん”っていう言葉が一番伝わると思った」と語った。

そして、ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』の主題歌として“恋”を制作した時と同じく、「タイトル先行」で曲作りがスタートしたということも明かした。作品に寄り添う主題歌を作ろうと、その作品世界のどの部分が自分の表現したいことと合致するかを考えた時に、おそらく“恋”の制作では、様々な形の夫婦やカップルの形がある中で、普遍的に存在するもの、それなくしては成立しないもの、つまり人間の営みの本質を一言で言い表して、それさえあれば後はどんな形でもいい、というメッセージを込めていったように思う。他の言葉では言い換えができないもの。だからこそ、“恋”というストレートでシンプルな言葉をタイトルに選んだ。

“ドラえもん”もそうだ。ラジオで星野が語ったように、ドラえもんは究極の国民的キャラクターであり、その物語は、不思議な道具やキャラクターによってファンタジックな世界が描かれながらも、誰もが自分の生活や感情にすんなりと投影できる、とても日常的なものである。作品としての、あるいはキャラクターとしての『ドラえもん』には、愛や希望、友情、勇気、優しさ、強さと弱さ、それこそみんなの日常にある普遍的であたたかな感情がすべて込められている。だから、それを一言で表す言葉はもう“ドラえもん”しかないのだと、星野源は直感したのではないかと思う。つまり「ドラえもん」という言葉は、「希望」と同義であり、「勇気」と同義であり、「友情」と同義である──。そんな言葉は“ドラえもん”以外にない。

歌詞には『ドラえもん』の登場人物の名前がさりげなく入れられていたり、間奏では、オマージュを込めてかつてのアニメ版の主題歌であった“ぼく ドラえもん”のフレーズを入れ込んだりと、ドラえもん愛にあふれている。ちなみに、歌い出しの《少しだけ不思議な》という歌詞は、原作の藤子・F・不二雄がSFという言葉を「サイエンス・フィクション」でなく、「少し 不思議」という意味で用いたことへのオマージュでもある。その日常的な目線は、星野のこれまでの作品にも通ずるところがある。そして楽曲制作はとにかく楽しかったようで、いつものメンバーと「すごくいいレコーディングができた」と言っていた。おそらく、どのメンバーとも「ドラえもん」という言葉だけで共通のイメージを持つことができただろうし、そこで表現したいことも共有しやすかったはずで、レコーディング現場の和やかさがありありと想像できてしまう。曲が生まれた背景も含め、今回の楽曲によって、「ドラえもん」という存在の強さや幸福感を、改めて感じている。

サウンドは、ニュー・オーリンズサウンドと、日本の歌謡曲的なコミカルな(星野曰く、『笑点』を意識した)フレーズとがマッチングして、それこそ「少し不思議な」イメージが、生活のすぐ側に寄り添っている様子を見事に体現していると思う。星野源の遊び心が、これほどぴったりと作品に沿う形で表現された“ドラえもん”。一度聴けば誰もがすぐに口ずさめて、なんだかホンワカした気持ちになる。作品への理解と自己表現とが、何ひとつ矛盾することなく共存する、究極に幸せなタイアップ曲なんじゃないかと思う。(杉浦美恵)
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