スタジオ・アルバムとしては5年ぶりとなる新作『There’s a Riot Going On』を3月16日にリリースするヨ・ラ・テンゴが「Stereogum」のインタビューに答え、新作で試みた新たな制作手法やスライ & ザ・ファミリー・ストーンの1971年のヒット・アルバム『暴動(原題:There's a Riot Going On)』との関連性について語っている。
本作において、ヨ・ラ・テンゴはバンドとしては初めて過去の音源の断片などをコラージュとして制作する手法を取ったことを明かしている。
その理由についてベースのジェイムズ・マクニューは次のように説明した。
たまたまそうなったっていうのかな? Pro Tools(音源編集ソフト)なんかは常にソフトをアップデートしていて、ついに僕たちが2003年から使ってたオーディオ・インターフェイスが同期して使えなくなっちゃったんだよ。だから機材を新しくしなくちゃならなくなった。でも最初はよく使い方がわからなかったんだ。
それで、リハーサル・ルームにマイクを仕込んでおいて、アイラ(・カプラン)とジョージア(・ハブレイ)に演奏をさせたりしてたんだ。そういう音源をしっかり録ってあった。で、そういう音源がその後(新曲の)“She May, She Might”になったことは間違いないよ。そのうち僕がきちんと機材を使えるところまでいったんだけど、それから2016年の年末に大きなサントラの話が来てそこで一旦終わったのかな?
これに続いて、ボーカル/ギタリストのアイラ・カプランは次のように説明している。
そのサントラについてはちょっと言っておきたいんだけど、これは『Far from the Tree』という映画のためのもので、2018年に公開されるんだよ。この作品はこれまでヨ・ラ・テンゴが関わってきたどの映画プロジェクトともまるで違っていて、本当に僕たちの楽曲が取り上げられることになったんだ(笑)。
(中略)今回ジェイムズがレコーディングしてた音源は、(集まって初めから制作するのではなく)ある程度形になっているものをいじってみるっていう、僕たちが今回やり始めた新しい習癖を追っ駆けたものなんだ。
実際、今回の作業をどう始めたのかって問いにまともに答えるのに15分もかかってるのもそういう事情のせいで、つまり、僕たち自身もまだよくわかってないからなんだ。
また、トランプ政権下において政治的な作品が多く生まれている現状を受け、自身の新作とまったく同じアルバム・タイトルを冠するスライ & ザ・ファミリー・ストーンの『暴動』との関連性を尋ねられたアイラは以下のように答えている。
君の質問からできるだけすぐに遠ざかるために答えると、僕たちのやってることのほとんどはしっくりくるからやってることであって、理路整然とあつらえたものじゃないんだよ。
今回のタイトルにはものすごく色々な意味が込められている。僕たちの他の作品のタイトルとも同じことなんだけど、示唆に富んでいて、なんでこういうタイトルにしたのかなってみんなが考えてくれれば嬉しいなっていうものなんだ。
そして僕たちはいつも、タイトルについて具体的に話すことは避けたいと思っている。というのは、話してしまうと結局、想像を何にも掻き立てなくなっちゃうからなんだよ。
少なくとも僕たちの中では、このタイトルがこのアルバムの内容をダイレクトに反映するものだっていうことはよくわかってるつもりだよ。ここには皮肉とかユーモアはまるで込められていないんだ。他のタイトルではそういうのもあったんだけどね。
また、2006年に出演したピッチフォーク・フェスティバルでリリース前の新作『アイ・アム・ノット・アフレイド・オブ・ユー・アンド・アイ・ウィル・ビート・ユア・アス』の収録曲をそのまま披露し物議を醸したことについても、アイラが当時の事情を以下のように説明した。
(披露したセットは)当時ちょうど取り組んでた曲だったし、もともとは一部だけ披露するつもりだったんだよ。それがある時点から「新曲を9曲やって、昔のを2曲でどうかな」って考え始めて。
でもよくよく考えてみたらそんなこと一度もやったことがないし、結局、それ以降もやってないんだよね。だから、単純に試してみたかったってだけ。それ以外になんか思惑があったわけじゃなくて……。
半分なんかやって半分また別なことをやるっていうのもライブのやり方としてあるんだけどさ。でも、ああやった方が面白いかなって思ったんだ。
このことについてはファンから抗議のメールも送られてきたようで、以下のようなエピソードも明かしている。
なんかものすごく、マジギレしたメールとか送られてきたよ。怒ってるだけじゃなくて、こっちのことをクソミソに言ってきてるような内容でね。だから、署名せずに返信したりしてた。「本気でそこまで言う?」って感じの内容でね。
そうしたら「かなり本気だから!」って返ってきたりして。それからまた返信があって、今度はもっと落ち着いた調子で、なんでそこまで呆気に取られてしまったのか説明されてあったんだよ。
だから、こっちも自分たちが考えてたことを説明して、それには快く対応してくれたよ。あのやりとりを彼が友達なんかと共有してくれたならいいんだけど。
なお、3月16日にリリースとなる『There's a Riot Going On』からはすでに“You Are Here”、“Shades of Blue”、“She May, She Might”、そして“Out of the Pool”の4曲のストリーミング配信、そしてアルバムのプレオーダーの受付が開始されている。
トラックリストは以下。
1. You Are Here
2. Shades of Blue
3. She May, She Might
4. For You Too
5. Ashes
6. Polynesia #1
7. Dream Dream Away
8. Shortwave
9. Above the Sound
10. Let’s Do It Wrong
11. What Chance Have I Got
12. Esportes Casual
13. Forever
14. Out of the Pool
15. Here You Are