2008年1月22日に28歳で逝去したヒース・レジャーの死から、10年が経過した。
ミュージシャンとしても活躍する俳優のジョニー・デップやベン・ハーパーをはじめとし、音楽関係者との交友関係が深かったことでも知られているヒース・レジャーだが、生前にいくつかのミュージック・ビデオを監督していたことはご存知だろうか。
映像作品への造詣が深かったヒース・レジャーは、俳優業の傍らカリフォルニアのアーティスト団体The Massesのメンバーとしても活動しており、ミュージック・ビデオを始めとした数々の映像作品を遺している。
本記事では「Bustle」に掲載された記事などを参照しつつ、ヒースが監督を務めたベン・ハーパーとモデスト・マウス、ヒップホップ・アーティストのN'fa Jones、そしてニック・ドレイクのビデオを紹介していく。
ベン・ハーパー “Morning Yearning”
2006年リリースの7thアルバム『Both Sides of the Gun』の収録曲、“Morning Yearning”のミュージック・ビデオ。
ヒースと長年の間友人関係にあったハーパーは、昨年全米公開されたヒース・レジャーの伝記映画『I Am Heath Ledger』にも出演している。また、同ビデオの制作にはこの映画のプロデューサーを務めたマット・アマトも参加している。
公式なミュージック・ビデオとしては恐らく初監督作品である本作だが、ダンサーの全体像と顔のアップのコントラストなど、他の作品との共通点が垣間見える作品となっている。
N'fa Jones “Cause An Effect”
N'fa JonesのYouTubeに記載されている情報によれば、このミュージック・ビデオはヒース・レジャーの自宅のガレージで撮影されたのだという。ベン・ハーパーのビデオと同じくマット・アマトと共に制作された同ビデオは、印象的なメイクやグラフィック・アートが記憶に残る作品となっている。
N'faは同ビデオの撮影時のヒースについて、「パフォーマーとしての僕やこのミュージック・ビデオに何を求めているのか、ヒースのイメージはとても明快だった」、「それまでの人生の中でも最もクールな日々で、最高の経験になった」とコメントしている。
N'fa Jones “Seduction Is Evil”
同じくN'fa Jonesの楽曲のミュージック・ビデオである本作だが、上記の“Cause An Effect”とは趣が異なる。
所々に挿入されるグラフィック・アートには“Cause An Effect”のビデオに通じるものがあると言えるが、全体的にモノクロでまとめられたクラシカルな作風となっている。
モデスト・マウス “King Rat”
これまでに発表されているミュージック・ビデオの中で唯一のアニメーションである本作は、ヒースの死後、彼の意志を引き継ぐ形で発表された。
メジャーなものとしてはヒースが遺した最期のミュージック・ビデオと言われている本作だが、彼自身はこの完成を待たずに急逝している。
「MTV」によると、ヒースが活動していたThe Massesの他のメンバーが制作途中の材料を集めてミュージック・ビデオとして形にし、モデスト・マウスと共にヒースへの追悼として発表したのだという。
ニック・ドレイク “Black Eyed Dog”
https://vimeo.com/35091445
ニック・ドレイクのファンであることを度々口にしていたヒースだが、「MTV」によると、死の前年の2007年のヴェネツィア国際映画祭では「僕はドレイクの人生に魅せられているんだ。いつの日か、彼の物語を形にすることができたらと考えている」と明かしていたという。
ニック・ドレイクは1974年に抗うつ剤の過剰摂取により若干26歳で亡くなっているが、享年や死因が近かったこと、そしてこの楽曲で歌われているうつ病というテーマやバスタブに身を沈めるビデオのラスト・シーンから、ヒースの死とドレイクの死が関連づけられて語られることは少なくない。
ドレイクの遺作となった“Black Eyed Dog”だが、「Pitchfork」などでは、うつ病を患いうつを「黒い犬」と呼んでいたというチャーチル元英首相に言及しているのではと指摘されている。さらにはヒースがこの楽曲の内容に影響を受け死を選んだのではという憶測なども広がり、暗い噂の絶えない作品となっている。
ヒースによる“Black Eyed Dog”のミュージック・ビデオは現在まで公式に発表されることはなかったが、ヒースが監督を務めつつ自身も出演しているという珍しい一作だ。