2月9日に4年半ぶりの新作『オールウェイズ・アセンディング』をリリースするフランツ・フェルディナンドだが、アレックス・カプラノスは今作が政治性をテーマにしていることを語っている。
「Consequence of Sound」によると、ケンタッキー州ルイビルのラジオ局「91.9WFPK」の取材に応えたアレックスは自分の理想とする社会のあり方について次のように語っていたという。
ぼくにとって文明の度合いの尺度というのは、社会の弱者や病人の面倒がどれだけ看られていて、全員への教育が施されているかどうかで測られるものだと思うんだ。あまりにも当然なものとしか思えないんだけどね。同じ人間への思いやりがあれば、自分の周りにいる病人について心配するものだと思うんだよ。
それはぼくたち全員にとっての責任であって、どんな金銭的状況にあっても、誰もがそういう心配をかけられるべきものだとぼくは思う。財布に現金がたんまり入ってないんだったら、のたれ死ねばいいっていうのは違うよ。ぼくたちに人々を救うだけの技術が備わっているんだったら、どんどん人命を救助すべきだと思うよ。ぼくにとってそれは根本にある本質的な真実なんだ。
また、アレックスは今回のアルバムに収録された“Huck and Jim”について、マーク・トウェインの『ハックルベリー・フィンの冒険』の登場人物で、アル中で暴力をふるう父親を捨てて家出した少年ハックルベリー・フィンと旅の途上で出会った脱走黒人奴隷のジムという二大キャラクターを引き合いに出した理由については次のように説明している。
典型的なアメリカの人物像を使いたかったんだ。アメリカ文学の中から、ぼくにとってのアメリカを体現するキャラクターを選びたかったんだよ。
その時、ハック・フィンが頭の中で閃いて、そういえばあの本には主要登場人物がふたりいたんだったって思い出したんだよ。そのふたりのことが頭の中で蘇った時、ふたりとも子供の頃に読んだ通りのままで、少年として理解した時のナイーブなままだったんだけど……それからこの話を大人として考え直してみると、ぼくたちが今現在直面している状況をあまりにも鋭く突いていて、また正確に反映したものになってるんだよ。
実際、思い出してみたらぞっとするくらいだったよ。大人としての理解の上で文脈を整理してみると、ふたりにはものすごい深みがあるんだよ。ものすごい深い闇もふたりは抱えてたんだね。しかも、ふたりは今ぼくたちが現に生きているこの世界について、あまりにも多くのことを物語っているんだ。当時(『ハックルベリー・フィンの冒険』1880年代に出版されたが物語は奴隷が解放される南北戦争前の1840年代とされている)はとてつもなく問題の多い時代で、現代の問題のある時代についてのヒントをぼくたちにもたらしてくれているんだよ。
さらに現在の世界の社会情勢について「絶望的なまでに後退的なものになっている」としていて、「ぼくのこれまでの人生で初めて、世の中の考え方が逆行し始めたように思うし、了見の狭い考え方がはびこり始めているように思うんだ」とも語っている。
また、現在の世界情勢は、第一次世界大戦前に各国が小競り合いを募らせていった当時と似ているとも語ってる。
「戦争で各国がお互いを脅かし合いながら軍備拡張を続けて行った」様子もまた異様なほど似ていると指摘し「歴史から学ぶことはできないのだろうか? またクソみたいな行いが繰り返されるのを止められないのだろうか?」と問いかけている。
フランツ・フェルディナンドは1月25日に一夜限りの来日公演を行ったばかり。「MUSIC STATION」への出演も大きな話題となった。
「新境地の新作をライブで一刻も早く自分たちの血肉としたい、そういう貪欲な表現モード」なバンドのライブレポはこちら。