坂元裕二脚本のドラマ『anone』を第5話まで観て、やはりこれはとてつもない作品

視聴率的には苦戦気味だが、このドラマはやはり傑作。
必ず後世に残るドラマだということを、作り手も役者も感覚的にわかっていて、とにかく物語が最終的に導いてくれる場所に間違いのない形で辿りつくことだけを考えて撮影に臨み続けていることが画面からひしひしと伝わってくる。
恐らく第5話が終了した今がドラマ全体の折り返し地点。
第1話終了の時点で僕は以下のようにコラムに書いた。
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『anone』の第1話からのぶっちぎり方に圧倒されてます。
坂元裕二脚本、水田伸生演出という『Mother』『Woman』の布陣なので、その流れを汲んでるところもあるのだが、いろいろな人が指摘している通り、視聴者の集中力を信じてありとあらゆるディテールに深読みしがいのある「意味」を緻密に散りばめているところは、1年前に大きな話題を呼んだ坂元脚本のドラマ『カルテット』に通ずる。
しかも『カルテット』は、そのみんなが深読みした「意味」が絶妙に正解か不正解かわからないグレーなところにすり抜けていくところがクールでポップだったのだが、『anone』はもっとディープでヘビーだ。
とりあえず今、登場している主要登場人物はみな精神的に孤独。
そんな孤独な個人たちの群像劇の中で、今の時代において、いろいろなものの価値が変容していることを炙り出していく。
たとえば「思い出」「居場所」「お金」「名前」、そして「命」までも。
この世界の中で、自分が生きていく価値とは?
そんな問いを抱えて迷子になっている人にとって、このドラマは必ず効く薬になると思う。
テレビドラマに視聴者が求めることと、その効能がどう重なるかが、今後の数字を左右すると思うが、そういう意味でも圧倒的に「攻め」の姿勢を貫くこのドラマを僕は支持したい。
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ハリカ(広瀬すず)、亜乃音(田中裕子)、青羽(小林聡美)、持本(阿部サダヲ)という魂の居場所を失くした孤独な主要登場人物の4人の中で、「本物」と「偽物」がリバーシブルウェアのように裏返り、偽物が表になったからこその温かな繋がりと帰る場所を手に入れるまでがこのドラマの前半戦だった。
『カルテット』は第1話から一気に、この美しき虚構の繋がりにポップにすっとばしたが、『anone』はたっぷり5話使った。
ここに辿り着くまでの重苦しさが視聴率に少なからず響いたと思うのだが、ここまで目を離すことができなかった人はもう最後までこのドラマから離れられないだろうし、最終的にこのドラマの素晴らしさを拡散させるスポークスマンになると僕は思っている。

何しろ、これから始まる後半戦が本番だ。
ハリカとカノンさん[彦星くん](清水尋也)の間に「いつか」への希望が生まれたこと(第5話だけで2回泣かされました..)がどうなっていくのか。
そして、いよいよ動き出した中世古(瑛太、怪演が光り過ぎ!)。
もう支持するしないの話じゃないです。
見届けるみなさん、共に見届けましょう。(古河晋)
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