音楽業界の女性重役ら、グラミー賞会長の「女性は頑張るべき」発言を受け辞任を要求

音楽業界の女性重役ら、グラミー賞会長の「女性は頑張るべき」発言を受け辞任を要求

グラミー賞を主催するレコーディング・アカデミー(NARAS)の会長ニール・ポートナウが、グラミー賞の授賞式後に「これからミュージシャン、エンジニア、プロデューサーになりたい女性、あるいは業界の幹部として働きたい女性は、もっと頑張りが必要です」と発言し物議を醸したことは記憶に新しい。

これはポートナウ会長が「Variety」の記者から、今年のグラミー賞における女性アーティストの最終候補と受賞者が極端に少なかったことについての意見を求められた際の発言だが、このコメントによりグラミー賞への批判の声が増大。

P!NKチャーリーXCXシェリル・クロウら復数のアーティストたちが、自身のSNSでこの発言への非難のコメントを発信した。

その後ポートナウ会長は、あくまでも業界としてそうした女性を歓迎したい、というのが発言の主旨であって、「頑張りが必要だ」という語句だけが独り歩きしてしまったと弁明した。弁明のため発表したコメントの中には、「業界内での女性の前進を妨げる無意識な偏見」などを乗り越えるための特別委員会を設置し対策を講じる、との言及もあった。

しかし批判は収まらず、業界の女性重役らの連名により、ポートナウ会長の辞任を要求する公開書簡が発表されるに至っている。

この書簡は音楽業界でもトップクラスの法律顧問、ローズマリー・キャロルが呼びかけたもので、ジョン・レジェンドのマネージャーのタイ・スティクロリウスやファレル・ウィリアムスのマネージャーのキャロン・ヴィージー、大手音楽版権管理会社のワーナー/チャペルミュージックの副会長ケイティ・ヴィンテンなど、音楽業界の中でも特に影響力のある女性業界人が名を揃えたものになっている。

「Variety」によると、この書簡には以下のような内容が記されている。

あなたが今週行った、音楽業界に携わっている女性は「頑張る必要がある」という発言は、とてつもないほどに間違っているうえに侮辱的でもあり、女性によって生み出されたか、もしくは女性とともに生み出された膨大な作品の大系をまったく忘却してしまったかのような発言となっています。

その後のあなたの弁明もわたしたち女性とその達成を尊重したくないというところをなお一層浮き上がらせるだけのものになりました。特に一番最近のあなたの発言は、女性が実現してきた達成を認めようとするものではなく、女性を「歓迎するために」男性から行動を起こそうと呼びかけるものです。

わたしたちはこの業界に入って行くために、あなたからの歓迎をわざわざ待つつもりはありません。自分たちの才能を認めさせるために、歌声をより大きくすることも、より高く跳び上がることも、より人当たりをよくしていくつもりもありません。

わたしたちは毎日頑張って(ステップ・アップして)きましたし、もうずいぶんと長い間、そうしてきたのです。あなたがそのことを自覚していないということは、あなたの方こそその座から降りる(ステップ・ダウン)べき時が来たということです。

今日、わたしたちは一歩ステップ・アップし、一歩踏み込んで、あなたの辞任を要求します。


書簡では他にも音楽業界における性差の偏向を指摘しており、2013年から2018年にかけて899人の個人がアーティストとしてグラミー賞各部門の最終候補に残されたが、そのうち90.7パーセントが男性で女性は9.3パーセントだったと明らかにしている。

そして最優秀レコード賞と最優秀アルバム賞についても、最終候補に女性の占める割合は10パーセントを切っていたという。さらに最優秀プロデューサー賞については、過去6年の間に女性はひとりも最終候補に残っていないという。

また2012年から2017年にかけてのトップ600曲のうち、作曲クレジットを受けている2767名のうち男性は87.7パーセントで女性は12.3パーセントだった。さらにこの6年間のうち、作曲家のトップ9人となっている男性作曲家9人はこの600曲の5分の1近くを手がけているという。

続いてプロデューサーでは、男性と女性の比率は49対1、プロデューサー651人のうち女性は2人で、いずれもマイノリティーの出身だったという。また音楽版権管理業界では、女性の代表取締役社長は過去1人、有色人種男性は過去1人だけ存在していて、いずれも現職だという(つまり、いずれもそれまで前例がなかった)。

さらにレコード会社社長に関しては、過去に女性は1人だけで、有色人種であるこの人物も現職だという(つまり、こちらもこれまで前例がなかった)。ちなみに書簡では、全人類の人口比率において女性が51パーセントを占めていることも合わせて指摘されている。

そしてこの後、この公式書簡には参加していなかったユニバーサルミュージックグループの副社長やアトランティック・レコードの共同会長、ソニー・ミュージックの法律顧問ら女性重役がさらなる公式書簡を発表。

こちらの書簡ではポートナウ会長の「女性は頑張るべき」発言と共に、ロードにパフォーマンスをオファーしなかった件に関するグラミー賞のプロデューサー、ケネス・エールリッヒのコメントについても批判。

「Variety」によると、この書簡ではNARASの重役であるポートナウ会長とエールリッヒの発言が、アカデミー全体が「今日の音楽、音楽ビジネス、そして何にも増して社会に対し、痛ましいほどに無知」であることを「証明」したと述べられている。

なお、これら2つの書簡に対するNARAS側からのコメントはまだ発表されていない。
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