マイク・シノダが最新EP『Post Traumatic』に託した、「チェスター喪失の先」を生きる決意

マイク・シノダが最新EP『Post Traumatic』に託した、「チェスター喪失の先」を生きる決意

1月25日に配信リリースされたマイク・シノダの最新EP『Post Traumatic』。リンキン・パークの一員としてともに音楽を紡いできた盟友=チェスター・ベニントンを喪った衝撃に今なお揺れ続けるシノダの胸中が、今作に収められた切実な新曲群“Place To Start”“Over Again”“Watching As I Fall”からも色濃く滲んでくる。

「僕が作り上げるものは粉々に壊れてしまうかもしれない」と怖れるのはもう嫌だ、終わりなんて知りたくない、僕が欲しいのは「始まりの場所」だ――とモノローグのような調子で切々と歌われる“Place To Start”。昨年10月27日に米LA・ハリウッドボウルで開催されたチェスター追悼コンサートの舞台に立つまでの感情を包み隠さずラップ越しに述懐した“Over Again”。そして、重厚かつ不穏なリズムトラックとともに「《彼ら》は僕が墜ちていくのを見ている」と自分を取り巻く世間の視線に対する違和感を露わにした“Watching As I Fall”――。


リリース直後にシノダがTwitterでファンに向けて公開した自筆のメッセージにも「これはリンキン・パークでもフォート・マイナーでもなく、僕自身だ」と綴られていた通り、ここにあるのは極めて私的な、シノダの心の奥底にある想いの結晶そのものなのだろう。
リンキン・パークのライブアルバム『ワン・モア・ライト・ライヴ』の発売に際して昨年12月に行われたInstagram上のリスニングパーティーで「チェスターの声をあんなに長い時間聴いているのが辛かった」と途中退席したことを後日明かしていたシノダ。PTSD(Post Traumatic Stress Disorder)を示唆するシリアスな作品タイトルはそのまま、彼自身の状態を残酷なまでにダイレクトに自ら描ききったものと言える。

しかし。今作には、チェスター追悼コンサートでシノダがピアノ弾き語りで披露した“Looking For An Answer”は収められていない。チェスター急逝後のシノダ自身の、虚空を彷徨うような喪失感をそのまま焼き込んだあの楽曲の哀しい美しさとは、今のモードは明確に一線を画したものである――ということも、この『Post Traumatic』という作品はリアルに物語っている。


「リンキン・パークを続けるつもりだし、メンバーみんな同じ気持ちだ。でもそのために、たくさん立て直さなきゃいけないものもあるし、答えるべき問いもある。時間が必要だ」――困難な状況に屈することなく一歩一歩前に進もうとするシノダのアティテュードが、彼の日々のツイートから伝わってくる。今年8月にはマイク・シノダ名義で「SUMMER SONIC 2018」に出演することも決定。「その先」へ向けて歩み始めた彼の決意に、最大限の拍手を贈りたい。(高橋智樹)

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