対談が終わりに近づくと、吉岡からずっと聴きたかったこととして、「岸田さんが大事にしている言葉とは?」という質問が出される。これに対し岸田は「あえて京都ご出身の方なんで、京都っぽい言い回しで言いますけど、『せえてせかへん』っていう、言葉というより感覚ですかね。急ぐけど急がへんっていうことではあるんですけど、もうちょっとふわっとしたメッセージですもんね」とコメント。
「せえてせかへん」――京都出身ではない筆者にはその細かなニュアンスまではわからないけれども、まるで暮らしや人の営みを誠実に描き出してきた、体温のようなくるりの音楽そのものを表した言葉のように思えて、はっとさせられた気持ちになる。彼らの音楽を聴いていると「生きていればそれで良し」と言われているような気に勝手になるのだけど、それはもしかしたらこういう理念というか生き方が根っこにあるからなのかもしれない。
この返答を聴いた吉岡も、まるで秘密の言葉を伝授してもらったかのように「わぁ……」と感嘆の声を漏らし、「それ今の自分にすごい突き刺さります。私たぶん今すごい生き急いでる感じなんですよね、生活の仕方も仕事の仕方も人とのコミュニケーションも全部。これじゃダメだって思いますし、ついていけなくなる日が絶対くるって焦って苦しくなる日があるから」と自身の内情を赤裸々に告白した。
また岸田が「いい意味で早く人が諦めてくれるのがいいなって思うんですよね。『あいつもうああやからいいや』、みたいに許されたいな(笑)」と続けると、吉岡は「もう許されてるじゃないですか~。きっと今たくさんのくるりファンの方が聴かれてると思うんですけど、きっとみなさんいつくるりさんと触れても、いつでもそこに確かなくるり、確かな岸田さんを感じるからずっと大好きなんだと思うんですよね。すごい旅をされるからいろんなエッセンスが混ざってどんどん新しい曲になっていくけど、変わらない何かを感じるんですよね」と、これまたストレートにくるりへの慕情を語った。
対談は、吉岡が悩みに悩んで選んだというくるりの楽曲“太陽のブルース”(アルバム『魂のゆくえ』収録)で幕を閉じた。アコースティックギターの音色と岸田の歌声による温もりが、ふたりのトークの穏やかな余韻をより一層深めていくように鳴り響いていて、なんだかじーんとくるものがあった。
吉岡里帆の一途で深遠なくるり愛と、岸田繁の「生活」というものへの真摯かつ寛大なまなざし。話していた張本人たちだけではなく、その電波を受け取ったリスナーの心もほっこりさせた、本当に素敵な京都人対談だった。この対談の模様は本日2月20日19:00より、LINE LIVEビクターエンタテインメントチャンネル『くるり×J-WAVE UR LIFESTYLE COLLEGE』でも放送される。(笠原瑛里)
岸田繁と吉岡里帆がラジオで語り合った、くるりと京都と音楽愛
2018.02.20 13:00