「『生きている意味』って何だろう?って考えてたけど……『生きている意味』っていう空白があって、そこに自分で好きな色を塗ったり、好きな言葉を書いたりして、詰めていく作業なんだなって思いましたね。そこに自分で書かないと、たぶん空白のままなんだって思いました」
(『ROCKIN’ON JAPAN』2017年10月号)
欠落や喪失感など、ともすれば悲観的に捉えて袋小路に陥ってしまいかねない心的要因をも「自ら満たすべき空白」として鮮烈にネガポジ変換してみせたさユり。それは取りも直さず、自分自身の「空白」そのものと真摯に対峙し対象化した上で、その形や手触りをリアルな楽曲に昇華していったさユりのソングライティングと、そこに眩しいくらいの生命力を与えていく唯一無二のボーカリゼーションがあればこそ実現し得たものだ。そして今、彼女の歌はさらに美しく荘厳に「生」を肯定しようとしている――ということが、現在発売中の『ROCKIN’ON JAPAN』最新号のインタビューからも伝わることと思う。
「あなたは宇宙初の、初めての物体なんですよ、っていう。他の人と似てる人間だけど、あなたは宇宙にひとつしかいない生き物なので。そこはもう、あなただけの正しさがあるっていうことを、どれだけ伝える歌が歌えるかっていうのが、今の自分のテーマかなって思いますね」
(『ROCKIN’ON JAPAN』2018年4月号)
自らが変わること/何かを置き捨てて忘れていくことへの不安を黙示録的に綴ったカップリング曲“レテ”(期間生産限定盤に収録)との対比から、まさに今こそ劇的進化の真っ只中にあるさユり自身のモードがくっきりと浮かび上がってくるし、今この時代を「その先」の景色へと導いていこうとする才気と決意を、この“月と花束”という楽曲は歴然と物語っている。(高橋智樹)