クリープハイプ、1日限定DL“おばけでいいからはやくきて”で尾崎世界観は何に挑んだのか

クリープハイプ、1日限定DL“おばけでいいからはやくきて”で尾崎世界観は何に挑んだのか - 『おばけでいいからはやくきて』『おばけでいいからはやくきて』
公式サイト上のカウントダウンを経て、3月7日(みんなの日、の意)に1日限定で無料ダウンロードが行われたクリープハイプの“おばけでいいからはやくきて”、聴きましたか。特設サイトから音源をダウンロードすると、正式なタイトルは“おばけでいいからはやくきて (みんなの日 ver.)”となっており、尾崎世界観のコメントによればNHK『みんなのうた』で公開中のバージョンとも、いずれ発表されるはずのフルサイズのバージョンとも異なるようだ。とはいえ、Uta-Netサイト上で事前に公開されていた歌詞は“おばけでいいからはやくきて (みんなの日 ver.)”でひととおり歌われている。

スカのビートと軽快かつストレンジに踊るギターフレーズに乗せて、おばけよりも怖い「迷子」の体験を鮮やかに描ききった歌詞のストーリー。「みんなのうた」としてこの怖さを広く共有させてしまうことも、自責と後悔を自虐的に嗤うクリープハイプの精神性がしっかりと息づいている点も、見事としか言いようのない音源である。徹底してポップな悲哀が無料ダウンロードという形でばらまかれ、世間の至るところで、もしかするとあの人やこの人の胸の内で炸裂しまくっているわけだ。痛快である。「タダより怖いものは無い」とは尾崎世界観のコメントだが、まさにそれ。

さらに、尾崎は無料ダウンロードに踏み切った決意について、「とにかく、新しいことをやる瞬間は不安になる。でも、その不安が無ければ、先も無い。まさに今、迷子の心境です」と告白しながらも、そこに懸ける期待の大きさをコメントしている。クリープハイプというひとクセもふたクセもあるロックバンドが「みんなのうた」を手掛けたこと、楽曲として見事に形にしたことが、バンドを新しい景色の中に導いている。今回の無料ダウンロードで最も重要な点はそこだ。“おばけでいいからはやくきて”に初めて触れたときの、不安と悲しみに心を染めながらもどこかワクワクした感覚。それが、今のクリープハイプの活動にそのまま反映されているのだ。

「迷子」は子供だけの感覚ではない。心細くて、なにをどうすれば良いのか分からない不安は、いい歳のおっさんになった自分にだってある。というか、だいたいいつも迷子だ。知ったかぶって大声を張り上げているような人も、実は半ベソで意地を張っている迷子にしか見えなかったりする。そんなときに、心細さや不安と真っ直ぐに向き合わせてくれる歌はとても大切だ。“おばけでいいからはやくきて”は、この怖さを潜り抜けていこう、と思える歌だ。そんなふうに、彼らも4年ぶりの日本武道館公演「クリープハイプのすべて」(5月11日)へと向かうのだろう。どんな景色が待っているのか、楽しみだ。(小池宏和)

『NHK みんなのうた』公式サイトで公開されている“おばけでいいからはやくきて”動画はこちら
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