京都・東京にて来日公演を行ったアイスエイジだが、4月6日(金)に東京 duo MUSIC EXCHANGEで行った東京公演のライブレポートが公開された。
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その日、東京の天気は不安定だった。横風が吹き荒れ、夕方から雨が強く降ったりやんだりを繰り返していた。その不穏な天気は、アイスエイジのライブにはうってつけだったかもしれない。
湿った空気に包まれた渋谷duo MUSIC EXCHANGE。20時45分頃、トータル・コントロールのダニエル・スチュワートがふらふらとステージに表れると、アブストラクトなポエトリー・リーディングを始めた。大半は即興なのだろうか、「アイスエイジの新しいレコード『Beyondless』」という言葉も時折飛び出す。
ダニエルのパフォーマンスが40分強続き、オーディエンスの渇望感も高まりきったとき、アイスエイジのメンバーがばらばらと、何の前触れもなくステージに表れた。驚くべきことに、バイオリン奏者とサックス奏者を加えた6人編成である。バンドはドローンのような演奏を始めた。
程なくボーカルのエリアス・ベンダー・ロネンフェルトが圧倒的なカリスマのオーラをまとって登場。もちろん、感嘆の声があがる。まずは新作『Beyondless』のオープニング、“Hurrah”だ。開始直後、突然エリアスは花があしらわれたマイクスタンドごとステージ上に倒れ伏した。
オーディエンスが騒然となる中、エリアスはやにわに立ち上がり歌い始める。ローリング・ストーンズ・タイプのパワフルなロックンロール・ナンバーに観客も飲み込まれる。間髪入れず “Pain Killer”へ。レコードではスカイ・フェレイラとのデュエットとなっている曲だ。歓声があがる。サックスとバイオリンが印象的なメロディーをユニゾンする中、エリアスは缶ビールを飲んだり、観客席に身を乗り出して歌ったり、あるいは花をクラウドに投げたりと、一時たりとも目が離せない。誰もが彼のパフォーマンスに釘付けになっていた。
『Beyondless』の冒頭4曲を演奏し終えると、ファンは聴き馴染んでいるだろうあの曲が始まった。2ndアルバム『ユア・ナッシング』の1曲目、激しいハードコア・ソング“Ecstasy”だ。それまでは大人しくパフォーマンスを観ていたキッズたちが、一挙に前方に押し寄せる。強烈なビートに合わせ、身体を強くぶつけ合わせる。モッシュが始まった。曲調が最も激しくなる中間部ではクラウド・サーフも見られた。アイスエイジ主催の「オープニング・ナイツ」は序盤から最高のムードに満たされていた。
3rdアルバムの『プラウイング・イントゥ・ザ・フィールド・オブ・ラヴ』から“The Lord's Favorite”、続いて『Beyondless』から“Thieves like us”と、アメリカーナを独自解釈したパンク・ソングが続く。前者はファンにとってすでにアンセムだ。シンガロングの声も聴かれ、性急なツービートに合わせて再び激しいモッシュが起きた。ヘヴィな“Morals”を経て、サイケデリックに上昇していくマーチング・ドラムが特徴的な“Take it all”。エリアスは狂おしく歌い上げ、サックスとバイオリンがエリアスの歌に艶めかしく絡みつく。新曲群はバンドの表現もエリアスの歌も新しいモードに突入していることがはっきりと提示された。
ダークなハードコア・パンク“White Rune”は、1stアルバム『ニュー・ブリゲイド』から。最新モードの楽曲が続く中、バンドの原点のような楽曲が演奏されたことでオーディエンスはまた興奮のるつぼと化し、再び激しいモッシュ。どれほど音楽的な進化を遂げようとも、アイスエイジは新曲も過去の楽曲も同じステージで、同じテンションで演奏する。変化と一貫性を同時に持つあり様こそ、アイスエイジが稀有なバンドである証明だろう。
その次の“Broken Bones”も1stからだが、アレンジはダークなポストパンク調のオリジナルからまったく異なっていた。セクシーにうねるサイケデリック・ジャムと化した“Broken Bones”では、バイオリンとサックスのデカダンな響きが刹那的で破滅的なムードを醸し出す。続く3rdアルバムの“Plowing into the Field of Love”も同様。演奏が終わると何人かが「セクシーだよ、エリアス!」と歓声をあげたが、エリアスはただ「シー……」とつぶやくだけ。
ラストは『Beyondless』から、リード・シングルの“Catch it”。ダウンテンポな導入部から一転、激しくアッパーになる中間部でエリアスはステージからオーディエンスの頭上にダイブ。そのカリスマに少しでも手を触れようと、キッズたちはすかさずエリアスに手を伸ばす。客席前方は混沌とし、バンドの演奏とクラウドのテンションは最高潮に達した。混乱と興奮のなか、アイスエイジのショーは1時間程度で終わった。終演後、「ヤバい……」「エリアス……」という声がそこここで聞かれた。この日のアイスエイジを目撃したオーディエンスは確信したはずだ。『Beyondless』はバンド史上最高傑作なのだと。(text by Ryutaro Amano)
ニュー・アルバム『Beyondless』のリリース情報は以下。
●リリース情報
アイスエイジ
『Beyondless』
2018年5月4日(金)
label: MATADOR / BEAT RECORDS
国内盤CD OLE13762 ¥2,200+税
ボーナストラック/歌詞対訳・解説冊子封入
トラックリスト
1. Hurrah
2. Pain Killer
3. Under the sun
4. The day the music dies
5. Plead the fifth
6. Catch it
7. Thieves like us
8. Take it all
9. Showtime
10. Beyondless
11. Broken Hours *Bonus Track for Japan