アメリカの音楽フェスでは、2013年のロラパルーザにてケンドリック・ラマーが自身のステージに導入した手話通訳が話題になって以来、アーティストたちのステージに手話を導入するケースが増えている。そうしたフェスティバルの手話スタッフをまとめている人物が、「Billboard」のインタビューに答えフェスに向けての準備について語っている。
インタビューに答えたのは、ロラパルーザの運営を手がけるC3 Presentsにて手話通訳プログラムのマネージャーを務めるBrooke Chambersだ。
Chambersはまずスタッフの準備について、手話通訳としての職歴とビデオによる実技審査によって人材集めをしていると説明。特にビデオについては実際に聴覚障害のある人、現役の手話通訳者、手話通訳講師らによって審査してもらい、Chambersはどの人材をどう集めるかを最終的に決定しているという。
その結果、フェスティバルで数回のライブを経験する見習い的な人材から、1日4回のステージをこなすベテランまで幅広くスタッフを揃えるという。
さらに運営側からの要請に応じて、どのステージに通訳を立てるかを決定し、割り振りはスタッフから希望するアーティストのランキングを募ってを決めていくという。
やはり最も難易度が高いのは、言葉数が多くリズム感も問われるヒップホップとのこと。ヒップホップに通じていなければ到底務まらないので、ヒップホップ向け人材を常に増やしたいと願っているのだという。
割り振りが決まると、それぞれにアーティストのセットリストをシミュレーションしていき、念入りにライブに備えるのがChambersのチームの方針となっているとのこと。より自由に即興的な通訳を行う業者もいるが、Chambersのチームでは準備を怠らないようにしていて、自分の思い込みによる解釈にならないよう、アーティストのインタビューなどを通して楽曲の意味もしっかり頭に入れていくのだとか。
たとえばロラパルーザでも、すべてのライブを網羅するわけではなく、1日につき平均して8組から10組のアーティストの通訳が限界だとChambersは語っている。
この仕事は本当に疲弊してしまうので、ステージを何度かこなすと、その後の通訳の内容が劣化してくるのはありうることなんです。
わたしからは、1スタッフにつき4ステージ以上は振らないようにしています。ロラパルーザは4日開催なので、平均して計30ステージくらいやることになりますね。
聴覚障害のあるお客様に最高峰の通訳サービスを提供するのが、わたしたちの目指すところです。ひとりでも聴覚障害のあるお客様を微笑ますことができれば、わたしは仕事を達成したと感じます。
なお、昨年の夏にはチャンス・ザ・ラッパーが自身のツアーに手話通訳者を同行させたことも話題になっていた。
詳しくは以下の記事より。