チャットモンチーの絆は完結しても変わらない――高橋久美子が作詞した“砂鉄”を聴いて

チャットモンチーの絆は完結しても変わらない――高橋久美子が作詞した“砂鉄”を聴いて
先日、チャットモンチーのラストアルバム『誕生』に収録される“砂鉄”が元チャットモンチーのメンバーである高橋久美子による作詞であることが発表され、J-WAVEのラジオ番組『SPARK』で初オンエアされた。ラジオでは橋本絵莉子から高橋に作詞の依頼をした経緯が語られ、福岡晃子は「一気に3人時代を思い出すような風を吹かせてくれました」と歌詞ができあがってきた時の感動を語った。元メンバーがバンドのラストアルバムに参加するなんて話はなかなか聞かないが、実にチャットモンチーらしい嬉しいサプライズだ。このアルバムは全面的に打ち込みによるチャットモンチー・メカ体制でレコーディングされたそうだが、“砂鉄”はバンドとしての呼吸がしっかりと感じられる、みずみずしくフレッシュな印象を受けた。

《同じクラスだったら 友達にはなってないだろうな》というフレーズから始まるこの曲の歌詞は、優しさと愛に満ちている。高橋から、橋本と福岡に、そしてチャットモンチーのファンに向けての。そして、彼女たち3人が懸命に音楽と向き合ってきた青春の物語であり、チャットモンチーが完結しても変わらない絆を思わせる内容だ。何故か惹かれ合い出会ったその運命を「砂鉄」という親しみやすくてどこか懐かしいモチーフに託した高橋の作詞家としての手腕はさすがである。更に曲中には《だめでもだめだめでも 許すよ》というフレーズがあり、かつて橋本が作詞した“やさしさ”の《明日ダメでも 明後日ダメダメでも 私を許して》に応えているように聴こえた。

《好きでも嫌いでも 好きさ/会っても会わなくても 忘れない》というサビのメロディが胸いっぱいに広がっていく“砂鉄”。3人で駆け抜けたあの頃だったら、もっとBPMが速い曲になったかな、なんて思う。だけど今は、ゆったりと噛みしめるようなこのテンポが何ともたまらない感慨深さを心に刻みつけていく。柔らかなビートに、橋本のギターリフ、福岡のコーラス、全てが丁寧に美しく重なって、稀有な輝きを放っていた。

いち早く聴かせてもらった“砂鉄”を含む、チャットモンチー最後のアルバム『誕生』は6月27日リリース。この待ち遠しさも最後かと思うと何とも切ないけれど、やっぱり発売が楽しみだ。(上野三樹)

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