横山健と難波章浩がスプリット盤『Ken Yokoyama VS NAMBA69』で教えてくれるバンドのカッコ良さと可能性

横山健と難波章浩がスプリット盤『Ken Yokoyama VS NAMBA69』で教えてくれるバンドのカッコ良さと可能性 - 『Ken Yokoyama VS NAMBA69』『Ken Yokoyama VS NAMBA69』
いくつもの「まさか!」を更新し続けてきたふたりなので、もう相当なことじゃないと驚かされないぞ!と思っていたのだが……またも、彼らはやってくれた。Ken YokoyamaNAMBA69が、スプリット盤『Ken Yokoyama VS NAMBA69』を完成させたのである。

説明不要だとは思うが、Ken Yokoyama=横山健と、NAMBA69を率いる難波章浩は、Hi-STANDARDのメンバーだ。インディーズバンドながら、ミリオンヒットやスタジアム・フェス主催など、未だに輝き続ける金字塔を立ち上げたHi-STANDARD。2000年にバンドが活動休止してから、難波、横山、そして恒岡章は、それぞれ音楽活動を続けてきた。そして、2011年に活動を再開。主催フェス「AIR JAM」におけるライブ始動から、事前告知なしのシングルリリース、そして昨年の18年ぶりのオリジナルアルバムリリースとツアー……というように、ざっくり追っただけでも、活動休止前も活動再開後も「まさか!」を更新してきた歴史が、彼らにはある。

また、先に触れたように、活動休止中、そして活動再開後から今に至るまで、彼らはHi-STANDARDとは違った形でも音楽を続けている。横山はKen Yokoyama名義で2004年に活動を始め、二度の武道館公演も行った。そして難波は様々な形を経た後、2013年にNAMBA69を結成。ここからは個人的な見解になるが、Hi-STANDARDは、彼らを愛する「みんな」のものであり、そういった存在だからこそ「まさか!」が起こり得る(し、彼ら自身も起こそうとする)のだと思っていた。そして、敢えて比較するなら、Ken YokoyamaやNAMBA69は、彼らのライフワークというかホームのようなもので、楽曲やライブでシンプルに勝負していくものだと思っていた。……いや、Hi-STANDARDだって楽曲やライブでも勝負しているし、Ken YokoyamaやNAMBA69を「みんな」のものと思っている人もいるだろうから、一概に断言はできないのだけれど。でも、こういった形で「まさか!」が届くとは夢にも思っていなかった人は、多いのではないだろうか。

今作に収録されている、NAMBA69の“PROMISES”では、こう歌われている《僕たちはここにいる!(僕たち本当に喧嘩したかったのか?)》――彼らの歩みに対する回答ともいえるこの一節は、Hi-STANDARDの作品でも、NAMBA69の単独作でも、収められなかったものだろう。このスプリットだからこそ、叶ったことはたくさんあるのだ。


今作において、それぞれが2曲のオリジナルソングと、1曲のカバーソングを収録している。Ken Yokoyamaは、“Support Your Local”、“Come On,Let’s Do The Pogo”という、今、彼らが届けたいであろうメッセージをパンクロックに託した、全てにおいてストレートな2曲を収録。カバーは、ジャンルや時代を超えて伝わってほしいポップなロックンロール、HANOI ROCKSの“Malibu Beach Nightmare”だ。そしてNAMBA69は、命を歌う“LIVE LIFE”、そして先述の“PROMISES”という、今作ならではのテーマを、塊感のあるモダンなロックに昇華した2曲を収録。カバーは、ブラーの“SONG 2”という……意外な選曲とぶっ飛んだアレンジの二段階で驚かせてくれる。


今作における両者の特色を並べてみて、改めて思う。当たり前だけど、全然違うバンドなのだ。だからこそ、「横山健と難波章浩、それぞれが率いるバンドが……」という意味合いのスペシャル感だけではなく、聴き応えそのものがある作品になっているのだろうし、どちらの個性も際立っているからこそ、「VS」として闘うことができるのだと思う。つけ加えるならば、「この二人が並んでいるHi-STANDARDって、面白いバンドなんだな」と、改めて思わずにはいられない。

もうひとつ特筆すべきは、今作がピザ・オブ・デス・レコーズからリリースされるというところ。Hi-STANDARDが作り、活動休止後は、横山健が守り続けてきたレーベルである。NAMBA69は、現在POP SPEED RECORDSを立ち上げてリリースしているので、ピザから作品がリリースされるということは、とても新鮮だ。インディーズのレーベルは、ただの「作品をリリースする場所」ではなく、それそのものに意思が宿ると私は思っている。ピザからリリースされることで、一緒に作った場所を、一人は守り、一人は離れ、幾年月を経て、その場所でお互いが後に出会った仲間と共に結び付くという――彼らの過去・現在・未来がはっきりと見えるのだ。
ロックシーンに語り継がれるべき、豊かな「物語」を含んだ一枚。6月22日(金)の仙台Rensaを皮切りに行われるリリースツアーで、さらなる物語が書き加えられていくことだろう。まだまだ、胸の高鳴りはおさまりそうにない。(高橋美穂)

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    Ken Yokoyama

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