米津玄師が子どもたちと共に日本の情景に向き合った音楽とは? プロデュース曲“パプリカ”に込められた願い

米津玄師が子どもたちと共に日本の情景に向き合った音楽とは? プロデュース曲“パプリカ”に込められた願い - Pic by Jiro KonamiPic by Jiro Konami
米津玄師が「<NHK>2020応援ソング」プロジェクトに向け新曲“パプリカ”を書き下ろした。米津が担当しているのは、作詞・作曲とプロデュース。同曲を歌っているのは、オーディションで選出された小学生5名による新ユニット・Foorin。ダンスの振付を担当したのは、今年1月の武道館公演で共演したダンサー・辻本知彦と菅原小春(両氏が共同で振付を行うのはこれが初)。CDジャケットで使用するイラストを手掛けたのは、これまでもMVなどで米津とタッグを組んできた映像作家・加藤隆だ。

プロジェクトの公式ホームページに掲載されている米津のコメントには「子どもたちが素直に楽しめるものを作るためには、子どもの目線で生活を省みつつ、まず子どもを舐めないところから始めるべきだと思いました」とある。実際、その言葉通りの意識を“パプリカ”からは読み取ることができた。例えば、サビの冒頭にある《パプリカ》の「リ」の部分。音を伸ばしながら音程を上下させる手法は確かに米津の楽曲ではよく見られるものだが、まだ小学生だというFoorinのメンバーが歌うにはちょっと難しいだろう(YouTubeで公開されているメイキング映像では、そこの歌唱を米津から教わる姿が収められている)。また、歌詞は全体的にシンプルではあるが、《雨に燻り》というフレーズで使われている「燻」は常用漢字外で、もちろん小学校で習うようなものではない。

この曲の大きな特徴は、サビに四七抜き音階が使用されていることだ(厳密に言うと、「四」の音も「七」の音も一瞬登場するが)。四七抜き音階とは、古くは唱歌や童謡などで用いられていた音階で、演歌では現在も主流になっているほか、J-POPにもこれを使用した名曲は多く存在する。四七抜き音階を使用すると、そのメロディが日本的な響きを持つようになり、日本人にとって歌いやすいものになるとも言われている。これまでリリースされた米津の楽曲を聴くかぎり、四七抜き音階のものはそれほどない。おそらく、今回のプロジェクトのテーマや“パプリカ”の位置づけを鑑みたうえで意図的にこうしたのだろう。また、Bメロでは和楽器のような音が重ねられ、日本的な響きがさらに打ち出されている。

歌詞には《花》、《夢》、《晴れ》などポジティブなイメージを想起させるワードが多く、少年少女の明るい声で歌われるそれらを聴いていると、こちらまで元気を貰えるような感じがある。しかし個人的にはそれだけではないようにも思う。ノスタルジックな旋律に乗せて歌われる自然豊かな情景は、多くの人の胸の内にあるであろう、夏休みの原風景を思い起こさせるもの。私にとってのそれはお盆の帰郷、祖母のお墓参りに向かう時のカンカン照りの上り坂なのだが、例えばこの曲に登場する《あなた》がすでにこの世にはいない人だと仮定してみると腑に落ちる部分が多い。そう考えれば、パプリカの花言葉=「君を忘れない」も、リリース日が終戦記念日であることもしっくりくるのだが、はたして。


今書いたのはいち個人のいち解釈にすぎないが、このように、“パプリカ”はこれまでの米津の楽曲同様複数の解釈ができる曲で、「子どもを舐めない」とはおそらくそういうことなのだろう。だからこそぜひあなたにも聴いてみてほしいし、自分だけの解釈をとことん深めてほしい。また、この曲、最後のサビで米津のコーラスが重ねられているのだが、米津曰く、他の箇所でも自身の声を加工して重ねてあるという。それを探しながら聴いてみるのも面白いかもしれない。(蜂須賀ちなみ)
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