3年ぶり、7枚目となるニューアルバム『こんなところに居たのかやっと見つけたよ』。その名の通り、曲も歌もサウンドも「こんなところに居たのかやっと見つけたよ」という感覚に溢れていて、聴いている僕らもクリープハイプに向けて「こんなところに居たのかやっと見つけたよ」と呟きたくなる、幸せで切ないアルバムだ。《君は一人だけど 俺も一人だよ》って歌詞ができたときに、自分はそうやってきたよなって改めて感じたし。
自分が書いた歌詞の中に、自分がやってきたことが見えたのは嬉しかった
曲が不揃いでムラのあるいびつさがクリープハイプのこれまでのアルバムの魅力であり愛おしさだったが、今作はそれぞれにバラエティ豊かな曲調なのにどの曲も素直に耳に入ってきてすうっと心に溶けていくような抜けの良さがある。楽曲やアレンジや演奏のレベルがぐっと上っているからだ。歌詞も、言葉のための言葉がいっさい削ぎ落とされていて、すべてが曲と溶け合っている。一聴するとシンプルでストレートで原点に戻った作品のようにも感じられるが、実はそうではなく、クリープハイプの音楽がより高い次元にレベルアップしているのだ。数々の実験とチャレンジを試みた前作『夜にしがみついて、朝で溶かして』を経たからこそなのだろう。これが今のクリープハイプ、そしてクリープハイプの最高傑作、と言えるアルバムだ。
「こんなところに居たのかやっと見つけたよ」という言葉はアルバムラスト曲の“天の声”の歌詞に出てくる。この“天の声”は、尾崎世界観がこれまでずっとやってきたこと、クリープハイプがこれまでずっとやってきたことを、感覚で捉えて1曲の中にすべて封じ込めたような曲だ。クリープハイプがいる場所、クリープハイプが「ずっといる、ここ」の情景を見事に捉えきった名曲だ。タイアップ曲やシングル曲など、アルバムには華やかな楽曲もちりばめられているが、すべての曲はこのラスト曲“天の声”と繋がっている。1枚のアルバムとしての手応えをしっかりと感じられるのが素晴らしい。
インタビュー=山崎洋一郎 撮影=笠井爾示(KATT)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年1月号より抜粋)
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