なぜなら彼らほど嘘みたいに正直なバンドはいなかったからだ。
嘘は全部バレるこの時代にド正面から真面目に真正直に歌を作って歌いバンドとしてステージに立ち続けると、ビックリするくらいカッコつかない。
でもカッコついてるシンガーソングライターなんて、カッコついてるバンドなんて本当はちっともカッコ良くない。
本当にカッコいいのは、ちっともカッコついてないクリープハイプだ。
手軽に個人が自分を発信できると同時に、たくさんの目から無慈悲なジャッジをされ続けるこの時代に、あえて曲を書いたり、バンドとしてステージに立つということに踏み出す人たちはそれをよくわかっている。
クリープハイプのように嘘みたいに正直にやっていくしかないのだ。
だからクリープハイプはこれからを歌い鳴らすシンガーソングライターやバンドの先駆者となった。
今日、発売のニューアルバム『泣きたくなるほど嬉しい日々に』は、そんなクリープハイプの音楽家としてのあり方が、ひとつのスタンダードとなり始めたのを感じる作品。
ありきたりな表現だけど時代がクリープハイプに追いついて、彼らの嘘みたいな正直さこそが一番エモいストレートパンチとして世の中に刺さるようになったのを感じる。
他人と自分に同時に牙を剥くような自虐的な攻撃性も健在。
しかし《泣きたくなるほど嬉しい日々に/答えはないけど手をあげてよ/恥ずかしい今も抱き寄せて/間違っても笑ってよ》(〝泣き笑い〟)といった、いじらしいくらい素直な言葉とメロディがそれらも包み込んで「クリープハイプのすべて」を余すことなく描ききっている。(古河晋)