星野源が『ANN』で語った、新作『POP VIRUS』に込められたJ-POP愛

「日本の音楽シーンを人の体とした場合、J-POPという免疫みたいなものを破壊して、自分がその中に入った、常在菌になったという感覚があったんですね。で、それがまたJ-POPという免疫になっていくっていう」

10月23日午前4時、通算5作目となるニューアルバム『POP VIRUS』(読み:ポップ・ウイルス。12月19日リリース)と、2019年2月から始まる5大ドーム8公演「星野源 DOME TOUR 2019 『POP VIRUS』」開催を発表した星野源。同23日深夜(24日午前)にオンエアされた『星野源のオールナイトニッポン』では、急ぎ足で「豚野郎!」のコーナーや「夜の国性調査」のコーナーも盛り込まれたものの、2時間のうちの大半がアルバムとツアーについて語りまくる内容になった。

鋭い質問や指摘を投げかけるリスナーのメールに答える形で、星野源はアルバム/ツアーについて語っていったが、まず史上5人目となる男性ソロアーティストの5大ドームツアーについては、ライブ参加を希望する人になるべく応えようとしたこと、また自身の体力・精神的負担を考慮して公演回数を抑え、大会場でライブをしたいという思いから、開催を決定したという。「ちょっとした小旅行だと思って、ぜひ皆さん、最寄りのドームに遊びにきていただければと思います」と彼は告げていた。

そして放送中、もっとも多くの時間を割いて語られていたのが、『POP VIRUS』というアルバムタイトルの由来についてだ。これが本当に興味深かったので、3つの理由に整理して書き記しておきたい。

①『YELLOW DANCER』、『恋』以降のパンデミック級ヒット
②星野源がポップ・アーティストとして経験した陰と陽
③ポップ中毒の後継者として

以下、それぞれの項目について詳しく説明していこう。まず①は、本稿の文頭に抜き出した発言に繋がる話だ。特に“恋”については、「公園の前を通ると、踊りを練習している人がいる。すごい体験だったんですよ」と語る。星野源自身が巻き起こした現象こそがポップ・ウイルスの爆発的感染だったわけで、彼はそれを客観視し実感したときに、『POP VIRUS』というタイトルを連想したわけだ。

②については、こんなふうに語られていた。「去年、いろんなことがあって、まあ一言で言うと、苦しかった一年だったわけです。楽しく活動している裏側で、どんどん自分の陰の部分が膨らんで、病んでいったんですね」、「ポップの人として存在しようとするときに、逆にウイルスに感染している感覚があったというか。明るいものとダークなもの。どっちも入っているアルバムになると思います」。11月6日に発売される『ダ・ヴィンチ』12月号(星野源の表紙&特集。https://rockinon.com/news/detail/180372)では、そのことを詳細に綴ったエッセイも掲載されるという。

そして③だ。僕が新作のタイトルを目の当たりにして、真っ先に連想したのもこのことだった。「ポップ・ウイルス」は、星野源自身が考え出した言葉ではない、と前置きして彼は語り出す。2012年に他界してしまったポップカルチャーのライター/エディター=川勝正幸の名を持ち出し、19歳のときに手に取ったという名著『ポップ中毒者の手記(約10年分)』の前文に「ポップ・ウイルス」という言葉を見つけていたことを回想。「今度は僕が宿主になって、ポップ・ウイルスをいろんな人と共有するというか。おもしろいもの、おもしろい音楽を感染させることができるのではないかと。川勝さんが生んだポップ・ウイルスという言葉に、僕が自分の遺伝子情報を入れて、また感染させることができたらいいんじゃないかって」。

とりわけ③の思いの裏側には、星野源が提唱してきた「イエローミュージック」、そして「Continues」の精神がドクドクと脈打っている。自分の人生に喜びや救済をもたらしてくれた音楽やカルチャーを継承し、自分なりの方法で広めてゆくこと。そんな、強い能動性に裏付けられた活動精神である。実に感動的な話題だった。

放送の後半には、『POP VIRUS』のジャケット・アートワークについても説明されていた。デザインを手がけたのは、『YELLOW DANCER』以来、星野源作品の数々でアートワークを担当している吉田ユニ。ポップの優しくて温かな部分と、人間のダークでグロテスクな部分を表現したいという意図を見事汲み取ってくれた吉田に、星野源は昂りながら「天才!」と賛辞を贈る。「完全に実写です。これを撮影している裏に、僕います(笑)。本物の土だし、本物の茎だし、本物の花だし、本物の根っこです。ユニちゃんはCGを一切使ってないっていう」。

すべては、星野源の繊細で愛情溢れるアイデアに裏付けられた表現だ。ポップ中毒者が一人、また一人と増えては携わってゆく。収録曲についての詳細はまだ明かされていないけれど、新作のアルバムタイトルとアートワーク、ツアーの話題だけで、最新フェーズへと向かう強烈な意気込みを感じさせ、こちらの気持ちを高揚させてくれる。素晴らしい放送回であった。(小池宏和)
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