PUNPEE“タイムマシーンにのって”の傑作MVの仕掛けにいくつ気付いた?


10月30日にフルバージョンが公開されたPUNPEE“タイムマシーンにのって”のミュージックビデオが素晴らしすぎる。もともとは2017年のファーストアルバム『MODERN TIMES』に収録されていた楽曲だが、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のデロリアンをオマージュしたジャケットアートワークが、そのまま大作ドラマと化してしまった。『MODERN TIMES』のシーズンを締めくくる、感動のフィナーレと言えるだろう。

『バック・トゥ〜』シリーズで未来のスポーツ年鑑を過去の自分に手渡すビフ・タネンや、《願わくばディスコで親父と母さんが会った日に行きたいね/後ろのジョックスに酒 かけて息子じきじきにチャンス作ってやるぜ》のシーンは主人公マーティ・マクフライの大立ち回りを思い出させる。他にも、『トレインスポッティング』や『E.T.』など名作映画のパロディがふんだんに盛り込まれていて楽しい。また、年老いたPUNPEEがめくるアルバムの写真では、彼がこれまでに出演(客演)してきた数々のビデオがアニメーション再現されている。

わざわざ実写映像をトレースした緻密なアニメ制作といい、ここにはサンプリングアートとしての高度な技術とアイデア、労力が惜しみなく注ぎ込まれている。エンドロールのメイキングまでが、完璧なひとつの作品と言えるだろう。数々の物語がファンタジーのように交錯し、そしてひとつの新しい物語が紡がれるということ。模倣だの剽窃だのといったチンケな批判を寄せ付けない、クリエイターたちの愉快で愛情のこもった表現が、ここには息づいているのだ。(小池宏和)
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

フォローする