HEY-SMITHの新アルバム『Life In The Sun』が伝える「好きなもののために立ちあがれ!」

HEY-SMITHの新アルバム『Life In The Sun』が伝える「好きなもののために立ちあがれ!」 - 『Life In The Sun』通常版『Life In The Sun』通常版
肌寒い秋が到来し、夏フェスの喧騒もどこか遠い思い出に……なんて耽るのはまだ許さん!とばかりに、灼熱の太陽と青空を引き連れたHEY-SMITHから届いたニューアルバム『Life In The Sun』。
全13曲、約32分。疾走感だとか、メロディの良さだとか、ホーン隊のアンサンブルだとか、もはや説明不要の鉄壁サウンドは、膨れ上がった期待を大きく上回って逞しく、さらにレゲエやハードロック的アプローチなど音楽的進化も十分に楽しめる――のだが、このアルバムを伝えるのにそんな堅苦しい言葉は相応しくない。
音が、言葉が、HEY-SMITH史上最高に高らかに、突き抜けた明るさで届く。この爽快感。
前作『STOP THE WAR』で、ハードさを増したパンクを掻き鳴らしたHEY-SMITHのエンジンとなったのが新体制となっての気合、社会情勢への怒りだったとしたら、今作『Life In The Sun』のエンジンとなっているのは、ものすごくシンプルな「好き」というエモーションだ。

『STOP THE WAR』で47都道府県ツアーを回り、ひと回りもふた回りも頼もしい存在感を増したあと、新章スタートとばかりに放ったシングル『Let It Punk』から、そのムードは見えていた。
「パンクに行こうぜ!」とどストレートに掲げられた宣誓。ただのポジティブでも原点回帰でもない、闘いも闇もその一部として飲み込んだからこそ、ここまでシンプルに歌うことができた言葉だ。その宣誓のもと始まった「Let It Punk TOUR」、会場限定シングル『Not A TV Show』をひっさげての「新曲お披露目ツアー2 ~初めて行くライブハウス編~」、その合間に休む暇なく数々の対バンライブやフェス――特に初日トリを堂々務めた「SATANIC CARNIVAL'18」や、台風を乗り越えての開催となった主催フェス「OSAKA HAZIKETEMAZARE FESTIVAL 2018」などの大舞台を経て、シンプルな思いがさらに磨きあげられていったのだろう。そこにあったのは夢や理想ではなく、ブレない確信だったはずだ。

『ROCKIN’ON JAPAN』12月号のインタビューで猪狩秀平(G・Vo)が「海がこの世のもので一番好きなので、ぴょーんって行ってみたら、1週間くらいで3、4曲できたんで」と語っているとおり、好きな場所で生み出された空気とともに、彼らの大好きなものが溢れているのだ。
ライブハウスが好き、ボブ・マーリーが好き、カリフォルニアが好き、夏が好き、友達が好き。そして、HEY-SMITHで音を鳴らすこの場所が好き。
風通しのいい場所で大声で叫ぶ「誰がなんと言おうと俺は好き!」という圧倒的な肯定が、あらゆるネガティブを丸めてぽーい!と投げ捨ててくれる。高まる気持ちが素直に刻まれた歌詞はもちろん、映画『天使にラブ・ソングを』でお馴染み“I Will Follow Him”という究極の「愛」の歌に乗せて放たれる気持ち良さもたまらない。この肯定というエンジンが、これからのHEY-SMITHをさらに自由に、力強く衝き動かすに違いない。

そして同時に、彼らは「おまえの好きなものはなに?」とまっすぐ問いかける。
気づけば嫌いなもののために悩み、愚痴り、足を引っ張られがちの現代だ。SNSでは匿名の集団が常に誰かの欠点を探して晒しあげ、ライブハウスの中ですら光る監視の目。
でも、嫌いなもののために暴れたって、何も生まれない。それならば、好きなもののために立ちあがれ!と、このアルバムは教えてくれる。好きなものを好き!と大声で叫べば、こんなにも楽しくなれる。めちゃくちゃ簡単なことじゃないか。背中を押すでも、手を引いて連れていってくれるわけでもないけれど、この音楽を聴いて、君自身が何を思うか。HEY-SMITHは、顔をあげたその先で笑って待っている。まさしくアルバムジャケットの写真のように。(後藤寛子)
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