約17年ぶりのツアー「TOUR『NUMBER GIRL』」もスタート、8月の日比谷野音公演では観る者すべての記憶もノスタルジーも上書きするような激演を見せつけたNUMBER GIRL。
その楽曲の世界観を大きく決定づけているのは、向井秀徳(G・Vo)による唯一無二の詞世界である――ということは、今さら言うまでもない。そして、『SCHOOL GIRL BYE BYE』や“透明少女”といったタイトルのみならず歌詞の随所においても、その世界観を象徴する存在として「少女」が描かれている、ということも。
君は家猫娘だった
この部屋でいつも寝ころんで
俺のこの部屋に入り込む夕陽に映る
君の顔見とれてた俺はまさに赤色のエレジーだった!!
(“IGGY POP FAN CLUB”)
赫い髪の少女は早足の男に手をひかれ
うそっぽく笑った
路上に風が震え
彼女は「すずしい」と笑いながら夏だった
(“透明少女”)
村の神社の境内で ヤったあの娘は街に出て
夏大学に入学決定 桃色、青に変わって 裸足の季節がはじまった
(“性的少女”)
“YOUNG GIRL SEVENTEEN SEXUALLY KNOWING”や“SENTIMENTAL GIRL’S VIOLENT JOKE”など、向井の描く「少女」は単にファンタジックな清純さだけではなく、どこか性的にもミステリアスな雰囲気を伴った形で登場する。
キラキラとギラギラの狭間を高速ですり抜ける「少女」像の悪戯っぽいスリルはそのまま、当時の向井が憧れと畏れと違和感を抱き続けていた「都市」という空間そのものの華やかさと猥雑さのメタファーである――という見方も可能ではある。が、それだけではNUMBER GIRLの「少女」像に付きまとう、狂おしいほどに切迫したセンチメントの説明はつかない。
真夜中 に狂い 飛ぶ あの娘の勝利
勝利!!
(“TRAMPOLINE GIRL”)
あの娘の本当 オレは知らない
あの娘のうそを オレは知らない
(“I don’t know”)
数多のラブソングやメッセージソングには一瞥もくれず、鮮烈で凄絶なロックを轟かせ、時代に爪痕を残したNUMBER GIRL。その「少女」の姿が体現していたのは向井自身の、そしてNUMBER GIRLの音楽に心揺さぶられてきた僕ら自身の、制御不能の衝動という名の純粋なる魔性そのものではないか?――という気が今はしている。
「TOUR『NUMBER GIRL』」はまさに現在開催中、年末からの「NUMBER GIRL TOUR 2019-2020『逆噴射バンド』」の詳細も発表された。その「正体」は決して明かされることはないであろうNUMBER GIRLの「少女」の謎ときらめきに、ひとりでも多くの人に今こそ触れてほしいと思う。(高橋智樹)
NUMBER GIRLの「GIRL」とは何のメタファーなのか?
2019.09.06 18:00