「たぶん前のアルバムまでは、『自分たちが生きてきた中で感じてきたこと』をある種プレイバック的に曲へ落とし込む、っていう歌詞が多かったけど、もうそういう感覚では生きていなくて。もっと未来を見ているっていうか、『俺たちここからどうしていったらいいんだろう?』っていうことのほうが、自分の中にすごく充満していて」
「音楽の中でも、夢っていろんな人が……年間何千回出てくるんでしょうね? すごい高確率で出てくる言葉だと思うんだけど。でも、その夢ってどこから来たの?とか、なんでその夢を見てるの?とか――僕の中でもその答えは出てないけど、そういう当たり前のものが、全然当たり前として響かなくなってるっていうことを、僕はどんどん音楽を通してコミュニケーションをとっていきたくて」(『ROCKIN’ON JAPAN』2019年7月号)
前述のインタビューで光村は、『QUIZMASTER』に至るまでの3年間の思索と「未来」への想いについてそんなふうに語っていたし、ビヨンセなど新作発表と同時にリリースといった海外シーンの動向などを見据えながら、「ロックバンドはどういうやり方で作品をコンパイルしていくべきか」を熟考している、とも明かしていた。ギターロックの清冽な野性から、歌とビートの強靭なる共鳴へ、とサウンド面でも大きく舵を切った『QUIZMASTER』。今作を、NICOのメンバー自身が「クイズマスター」として投げかけた唯一の対象は、「NICO Touches the Wallsというバンド自身の未来」だった、ということかもしれない。《きっと一生分の魔法は 使い切ってしまったけど/ホントはね/3分後 世界を変えた名曲たちが/そんなもんかと俺を鼻で笑う/ホントだね》(“3分ルール?”)「活動終了」後の今聴き返すと、どうしても悲観的な色合いが自ずと重なって聴こえる“3分ルール?”だが、光村自身がこの曲に関して語っていたのは「やっぱり、音楽の中でしか生きられない、っていうことだと思うんですよ、ここまで来ると。僕の中で、人生の一部が音楽だと思っていたけれど、(中略)ボロボロな時も、調子がいい時も含めて、それをやっぱりここに映していかなきゃいけないんだな、って」(『ROCKIN’ON JAPAN』2019年7月号)と改めて再確認した己の核心だった。「ミュージシャンとして、そしてそれぞれひとりの人間として、NICO Touches the Wallsという空間を飛び出し、新たな景色を見に行きたい気持ちが強くなりました」……11月15日に突然発表された活動終了のアナウンスの中でしかし、彼らはそんな言葉で「未来」への意志を伝えていた。幾多の「?」と向き合った末に、新たな道を進むことを選んだ光村龍哉、古村大介(G)、坂倉心悟(B)、対馬祥太郎(Dr)の4人。その「?」を未知の「!」に塗り替えてくれる日は、そう遠いことではない――と確信している。(高橋智樹)