NICO Touches the Wallsが活動終了前に残した真摯なる疑問符、『QUIZMASTER』というアルバムを改めて考える

今年6月にリリースされたアルバム『QUIZMASTER』についてNICO Touches the Wallsのメンバー全員にインタビューした時点では当然ながら、同作品が「活動終了」前の最後のアルバムになるとは微塵も思っていなかったし、正直今なお頭と心の整理がつかないままでいる。しかし『QUIZMASTER』は、結成から15年という時間の中での光村龍哉(Vo・G)はじめメンバーのロック観/バンド観/人生観の明確な変化と、それに伴って研ぎ澄まされた「未来」への意識が焼き込まれたアルバムであったことは確かだ。

前作アルバム『勇気も愛もないなんて』以降のシングル&EPの楽曲を含まず、すべてタイトルの末尾に「?」のマークを与えられた全10曲の新曲で構成された『QUIZMASTER』。だが、このアルバムにおける「クイズマスター」はNICOではない。むしろ、今作から浮かび上がってくるのは、「人生とは?」、「夢とは?」、「音楽とは?」という永遠の問いを前に、答えを求めながら葛藤し自問自答しているNICO自身の姿だ。謎をかけている「クイズマスター」は人生そのものであり、ロック/音楽そのものである、ということだ。

《どうして夢を見るの? 何世紀経ったって/未来はずっと謎の彼方/どうして夢を見るの? 何世紀経ったって/未だわかっちゃいない事だらけなのさ》(“18?”)

「たぶん前のアルバムまでは、『自分たちが生きてきた中で感じてきたこと』をある種プレイバック的に曲へ落とし込む、っていう歌詞が多かったけど、もうそういう感覚では生きていなくて。もっと未来を見ているっていうか、『俺たちここからどうしていったらいいんだろう?』っていうことのほうが、自分の中にすごく充満していて」


「音楽の中でも、夢っていろんな人が……年間何千回出てくるんでしょうね? すごい高確率で出てくる言葉だと思うんだけど。でも、その夢ってどこから来たの?とか、なんでその夢を見てるの?とか――僕の中でもその答えは出てないけど、そういう当たり前のものが、全然当たり前として響かなくなってるっていうことを、僕はどんどん音楽を通してコミュニケーションをとっていきたくて」(『ROCKIN’ON JAPAN』2019年7月号)


前述のインタビューで光村は、『QUIZMASTER』に至るまでの3年間の思索と「未来」への想いについてそんなふうに語っていたし、ビヨンセなど新作発表と同時にリリースといった海外シーンの動向などを見据えながら、「ロックバンドはどういうやり方で作品をコンパイルしていくべきか」を熟考している、とも明かしていた。ギターロックの清冽な野性から、歌とビートの強靭なる共鳴へ、とサウンド面でも大きく舵を切った『QUIZMASTER』。今作を、NICOのメンバー自身が「クイズマスター」として投げかけた唯一の対象は、「NICO Touches the Wallsというバンド自身の未来」だった、ということかもしれない。

《きっと一生分の魔法は 使い切ってしまったけど/ホントはね/3分後 世界を変えた名曲たちが/そんなもんかと俺を鼻で笑う/ホントだね》(“3分ルール?”)

「活動終了」後の今聴き返すと、どうしても悲観的な色合いが自ずと重なって聴こえる“3分ルール?”だが、光村自身がこの曲に関して語っていたのは「やっぱり、音楽の中でしか生きられない、っていうことだと思うんですよ、ここまで来ると。僕の中で、人生の一部が音楽だと思っていたけれど、(中略)ボロボロな時も、調子がいい時も含めて、それをやっぱりここに映していかなきゃいけないんだな、って」(『ROCKIN’ON JAPAN』2019年7月号)と改めて再確認した己の核心だった。

「ミュージシャンとして、そしてそれぞれひとりの人間として、NICO Touches the Wallsという空間を飛び出し、新たな景色を見に行きたい気持ちが強くなりました」……11月15日に突然発表された活動終了のアナウンスの中でしかし、彼らはそんな言葉で「未来」への意志を伝えていた。幾多の「?」と向き合った末に、新たな道を進むことを選んだ光村龍哉、古村大介(G)、坂倉心悟(B)、対馬祥太郎(Dr)の4人。その「?」を未知の「!」に塗り替えてくれる日は、そう遠いことではない――と確信している。(高橋智樹)

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