millennium paradeとKing Gnu、そしてPERIMETRON――表現を互いに増幅し合う三角形を科学する

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5月13日(水)にCDパッケージがリリースされるmillennium paradeのシングル『Fly with me』。先立ってそのティーザームービーが公開されたが、相変わらずヤバいのだ。


8bitのグラフィックで描かれる、どこかで見たようなアクションゲームの画面とそれをゲーセンでプレイする3D CGの少年の姿は、millennium paradeの基調にあるサイバーパンクなムードを的確に捉えている。この曲はNETFLIXで4月23日(木)から全世界独占配信となるアニメ『攻殻機動隊 SAC_2045』の主題歌となっているが、その3D CGの世界観とバーチャル/リアルの境界というテーマ(それはmillennium paradeにおける映像表現の基調でもある)を、キッチュなドット絵によって見事に切り返している。

映像を手掛けたのは、もちろんKing Gnuの常田大希が主宰するクリエイティブチーム・PERIMETRONである。PERIMETRONは常田に加え、プロデューサーの佐々木集、映像作家のOSRIN、3Dビジュアルエディターの神戸雄平ら同世代のメンバーが集うクリエイター集団で、これまでファッションブランドのプロモーション映像やグラフィックデザインなどの仕事からKing GnuはじめTempalayやPAELLAS、WONKといったバンドのMVやアートワークまで、幅広く作品をリリースしてきた。

会社のようでもあるし、気心知れた仲間内のサークルのようでもあるし、何よりその表現自体が変幻自在で、アメーバのようなクリエイティブチームである。実際、これまで彼らが手掛けてきた視覚表現は実に多彩だ。手法だけでも3D CGからイラストレーション、実写まで多岐にわたるし、そのタッチもストーリーテリングを重視したものからドキュメンタリー要素の強いものまで様々。それでいて、どの作品にもPERIMETRONとしての思想と創造性がくっきりと刻み込まれている。その両面性こそが、このクリエイティブレーベルの面白さだ。

King GnuのMVひとつ取ってみても、たとえば“どろん”と“Teenager Forever”、それから“傘”(これはMVではなくオフィシャルの試聴用映像だが)を並べたとき、そこには同じ集団によって制作されたとは思えない落差がある。それはPERIMETRONがクライアント(企業やバンド)の単なるカウンターパートとしてではなく、その表現活動の内部に(それこそアメーバのように)浸潤して世界観を築いていくというスタンスを持っているからではないか。King Gnuやmillennium paradeにおいては首謀者たる常田がチームの一員なのでより顕著だが、他のワークスを眺めても、それが彼らの基本的な姿勢なのだと思う。


King Gnu“白日”の極限まで漂白された世界とあの曲名のタイポグラフィは楽曲の美しさと残酷さをこれでもかと浮き彫りにしているし、“Teenager Forever”のあの「100万円もらったら何する?」ビデオは同曲にたぎるロマンとKing Gnuというバンドの本質をユーモアたっぷりに描き出す。いずれも、映像によって楽曲に込められた物語や空気感が明快に具体化されている――どころか、あえて音楽では描かれなかった背景のエモーションまでもさらけ出しているような印象を受ける。

常田のよりコアに近い(と思う)プロジェクトであるmillennium paradeではなおさらだ。“Plankton”の世紀末的で一種宗教的ですらあるモチーフ、“lost and found”のストーリー展開は極めて抽象的な音楽表現に輪郭を与え、受け手に向けて感情移入の入り口を開いているという感じすらする。というより、millennium paradeについて言えば、そもそもがPERIMETRONとの協働ということを前提にして音楽が生まれているということかもしれない。


アートワークやMVはもとよりライブでの演出までも含めて、PERIMETRONのクリエイティブが重なることで初めてmillennium paradeは完成する。音楽を生み出すアーティストとそこに映像を「付加」する映像制作チームという関係性ではなく、より深いところで共鳴し、ひとつの世界を両面から築いていくチームとして、両者のタッグは機能しているのだ。楽曲に隠されたものを映像が暴き出し、その映像が音楽をより豊かなものにする。その相互作用によって進化するmillennium paradeとPERIMETRONの表現は、アートとしてもエンターテインメントとしてもますます面白いものになってきている。(小川智宏)
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