チック・コリア、逝去。『リターン・トゥ・フォーエヴァー』でポップ・シーンまでも震撼させた、絶対的ミュージック・インフルエンサーを偲んで

チック・コリア、逝去。『リターン・トゥ・フォーエヴァー』でポップ・シーンまでも震撼させた、絶対的ミュージック・インフルエンサーを偲んで - 『rockin'on』2021年4月号より『rockin'on』2021年4月号より

フェンダー・ローズの柔らかく揺らぐ音色、清涼感のあるブラジル人ボーカリストのフローラ・プリムの器楽的な歌声、同じくブラジル出身のアイアート・モレイラによる軽やかなリズム。1972年にチック・コリアが生み出した『リターン・トゥ・フォーエヴァー』は音楽シーンに大きな衝撃を与えた。同時代のジャズにはマイルス・デイヴィスやキース・ジャレット、ウェザー・リポートらによるジャズの概念を揺るがすような傑作が少なくなかった。ただ、『リターン・トゥ・フォーエヴァー』のようにその新たな表現が音楽面での革新性だけでなく、ポップ・ミュージックと同じ地平で大きな評価と人気を集めた例は他に類を見ない。

そうやって『リターン・トゥ・フォーエヴァー』の変遷だけを見てもチック・コリアの功績はすさまじいものがある。ブラジルを始めとした中南米の音楽シーンへの影響もあれば、この後、プログレッシブなエレクトリック・ジャズ・ロックへと変化していったことで、ヨーロッパのジャズ・ロックやプログレのバンドへの影響もあった。チック・コリアはジャズ・ピアニストなどという狭い枠組みで語れる存在ではないことはいうまでもない。

現在の音楽シーンとの繋がりで言えば、チック・コリアが亡くなってからオルガン奏者のコリー・ヘンリーが追悼の意を込めて「Spain changed gospel music」とツイッターに投稿していたことが印象的だった。あまり知られていないが実はチック・コリアの活動はゴスペル系のミュージシャンに多大な影響を与えている。ピアニストのロバート・グラスパーはそのピアノから、ドラマーのエリック・ハーランドはザ・チック・コリア・エレクトリック・バンドのドラムのサウンドからの影響を語っている。フェンダー・ローズという楽器が持つテクスチャーを最大限に活かす奏法を提示したチック・コリアがハモンド・オルガン(が使われるソウルやファンク、ゴスペル)とは異なる文脈での鍵盤演奏の可能性を切り開いたことも重要だろう。

チック・コリアはその自由な発想であらゆるジャンル、地域、人種をインスパイアした稀有な音楽家だったのだ。(柳樂光隆)



チック・コリアの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』4月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。


チック・コリア、逝去。『リターン・トゥ・フォーエヴァー』でポップ・シーンまでも震撼させた、絶対的ミュージック・インフルエンサーを偲んで - 『rockin'on』2021年4月号『rockin'on』2021年4月号
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